第百四十七話
「全員頭上に気を配れ! それからあまり大技は使うなよ、崩れる可能性だって有るんだ!」
萃香が少々やり辛そうだが仕方ない、生き埋めはごめんだ。一人一体として目の前に躍り出て来た鴉天狗を見つめ抜刀。向こうも持っていた錫杖で応戦して来た
広いとはいえ祠の中、互いの動きを阻害せぬよう立ち回りに気をつけながらもひたすら攻め続ける。出口は連中が居るためそう簡単にはいかないが、こっちには萃香が居る
錫杖の一撃を斬り返しで受けお返しに突きを美鈴に教わった通りの動きを乗せて放つ。まるで美鈴の鋭い一突きが宿ったかの様な速さで相手の肩を射抜き、怯んだ所を殴り倒す。倒れた上を飛び越え、その際にありったけの弾幕を叩き込み気絶させる
油断無く他を見れば、小町はおそらく能力だろう──距離を弄っているのか小町の攻撃はすんなりと当たり逆に相手の攻撃はどうやっても当たらない。最後は一気に距離を詰めた小町の鎌の一撃で意識を刈り取られ、敢え無く沈んだ
咲夜は持ち前のナイフ捌きと体術を以って天狗を翻弄。的確に身体の節々にナイフを突き刺し動きを鈍らせ、そこへ強烈な回し蹴りを放ち昏倒させる。トドメとばかりに首へかかと落としを喰らわせ、服装を直す様はまさに瀟洒といった所か
萃香は──何故か相手が土下座していた。まさか相手が鬼、しかも四天王の一人とは夢にも思わなかったのだろう。顔は真っ青冷や汗ダラダラで、見ている此方が可哀想に思えてくる。ちなみに、ソイツは笑みを浮かべた萃香の一発で夢の世界へと旅立った
「全員無事だな? 萃香、また先導を頼む」
「了解したよ。逸れずついて来なよ!」
祠の明るさに慣れていたせいか、外が眩しく感じる。だが、面倒事はすぐそこまで迫って来ていた
「居たぞ! 下手人をひっ捕らえろ!」
「げ! 天狗があんなに……!」
「人気者ですわね悠哉様。羨ましく思いますわ」
「なら代わってやるよ咲夜! ──っぶねぇ!? 見境無く撃ちやがって! 萃香の威光でなんとかなんないのか!?」
「出来なくないけど、過去のモノだからね。効く効かない有るし、最近の若い連中だと厳しそうだね。先方は殆ど若い連中っぽいし」
「方向転換、洞窟まで突き進めぇ! 相手にしてられるかぁ!」
数百人は居るであろう天狗の集団から逃げながら、抱えた萃香の指示通り進路を取る。ひたすら追い縋って来る天狗に辟易していると──
「おいおい……嘘だろ!?」
前に立ち塞がったのは──博麗霊夢だった……




