第百四十二話
小町が鎌を構え、四季さんは目を細めてそれぞれ妖夢を見据える中──彼女はゆっくり刀を地面に置いた
「私に戦闘の意志は有りません。ですので、どうか話を聞いて頂けませんか? 貴女方にも有意義な内容だと思いますが……」
「ふむ、有意義ですか。確かに我々には情報がまだまだ不足しているのも事実、渡りに船です。が……あまりにも都合が良すぎる、まさか何処かで我々を監視していたのでは?」
両者の間に緊張が走る。やがて、妖夢が息を吐いた
「やはりそう取られても仕方ありませんね。私自身、思ってしまいますから……ですがはっきり申しておきますがこれは私と幽々子様が独断で動いている結果です。閻魔である貴女なら……嘘か真かお分かりですよね?」
「…………なるほど、嘘は言ってないようですね。しかし、その行動はあの八雲すら出し抜こうとしている……一筋縄ではいきませんよ」
「大丈夫です。幽々子様が色々と手を打ってくださっておりますから……危険なことには限り有りませんが」
「そういう事ですか……貴女も中々大変な位置に居ますね。さぞ内心は落ち着かないことでしょう、どうか気を病まぬよう」
「ありがとうございます、確かに大変ですがこれも私の役目ですから。では、お二人は着いて来てください。道中進みながらお話しますので」
先に歩き出す妖夢。四季さんは問題ないとばかりに頷くから、恐らく大丈夫なのだろう。兎も角俺は、四季さんに礼を述べてから小町と共に着いて行くことに
こうして、妖夢に着いて行き霧が晴れる頃には日は傾いていた。一先ず見晴らしの良い場所まで移動し、これからについて聞いてみた
「そうですね……先ずは白玉楼まで戻らなければなりません。紫様や藍さんは、あちこちに目を光らせています。戻るまで一時も気を抜けません……お二人も用心してください」
──紫のスキマ。移動手段としても便利だが、目線の高さに目の大きさだけ開けばそこから相手に気づかれず覗き見ることだって出来る。今こうしている間も……
「さ! 道はまだまだ先です。少しでも早く辿り着けるよう、先を急ぎましょう」
「そうさね。アイツの事だから、四方八方に式神をばら撒いてるに違いない。一箇所に留まり続けるのは得策じゃないねぇ」
「……敵に回すとホント厄介だな。改めて思うが、どうしてこうなったんだよ……」
白玉楼は、まだまだ遠そうだ……




