第百四十話
ようやく光が収まり、辺りを見渡す。そこはもう紅魔館ではなく、俺の知らない土地だった。地面は一面小さな石ころで覆われ、花が咲いている。アレは……彼岸花か?
薄っすらと霧がかかりよく見えないが、水音も聞こえる。何処か、川のほとりにでも来たのだろうか? なら、霧の湖かはたまた全く別の土地か……
「レミリア……咲夜……」
見送る際に見せた、彼女達の笑顔。それらを思い返し──涙が溢れた
「小悪魔……パチュリー……フラン……美鈴……」
止まらない涙をひたすら拭い続け、やっと止まった所で顔を上げ辺りをもう一度見渡す。少しだが霧が晴れている……
「お? 珍しいねぇ、死者じゃあなく生者がこんなとこに居るなんてねぇ」
聞こえた声に、咄嗟に抜刀し見据える。赤い髪をツインテールにし、外の世界の教科書で見た昔の銭を腰に巻き胸元をはだけさせた、なんともだらしない印象を受ける女性が立っていた。だが、こんなところに居ることもだが……彼女が持っているモノを見て身体を固くする
「ん? あぁコレが気になるのかい? 別に取って食ったりしないからさ、気楽にしておくれよ」
そう──彼女が持っているモノ。まるで絵画に描かれる死神が持っていそうな、大振りの鎌。揺らぐ水面の様な模様を浮かばせたソレの鋭い切っ先に、思わず生唾を飲み込む
「……まぁこんなとこでこんなの持ってちゃ警戒されてもおかしくないさね。あたいは小野塚小町って言うんだ、よろしくねお兄さん」
「……数藤悠哉だ。よろしく小野塚さん」
──大胆でサッパリとしたヒト。それが俺が彼女に抱いた初対面での印象だった……
「ところでお兄さんさ、こんなところに居ると……死神に食われちまうよぉ? 特に……あたいとかにさぁ!」
「……っ!?」
「あっははは! 冗談だよ冗談! いやーいい反応だねぇ、気に入ったよ!」
……訂正。少々悪いヒトかもしれん……




