第百三十五話
さて、冥界へと進み始めてどれくらい経っただろうか……そろそろお腹が減ったので一旦小休止を取ることにした
「雲の上で飯を食うってのも中々無い事だよな。お、アレは人里かな? となると……妖怪の山はあそこで、博麗神社は……うわ遠いなぁ。アレじゃあ確かに人こねぇわな」
端から見れば完全に変人扱いを受けそうだが此処は幻想郷。そんなの気にするヤツなど居る筈も無いので、のんびりと景色を楽しむ
……何か、来たな。急いで飲み込み片付けを終え、念のために刀をいつでも抜けるようにして構える。それから程なくして、現れたのは──霧雨魔理沙だった
「なんだ、お前さんか。誰かと思ったぜ……」
「そりゃこっちのセリフだぜ! こんな所で呑気に飯食ってるヤツの顔を拝みに来たんだけど、まさか悠哉だったなんてな。まぁ兎も角、元気そうでなによりだぜ」
「おう、おかげさんでな。今は紅魔館の雇われ司書よ。どうだ? すごいだろ?」
「すごいもなにも、雇われだろ? あんまりだなー……でも待てよ? あのパチュリーが雇ったんだから、そういう意味ではすごいかも?」
そんな会話をしながら飛び続ける。魔理沙曰く、今日は白玉楼で小規模ながら宴会が行われるらしくソレに参加する途中だったんだとか
「宴会ねぇ。相変わらずバカ騒ぎが好きな連中だな、飽きないのか?」
「全然。寧ろもっとやれって感じだぜ? まぁさ、先行って待ってるから絶対来いよ〜!」
スピードを上げた──分かった頃には、魔理沙は遥か先で黒い点となっていた。おぉ、速い速い。アレは流石にマネ出来んなぁ……
「……で、なんでお前さんもいんの? まさか白玉楼の宴会に行くのか? ……射命丸よ」
「あら、会いたくもなかったけど。まぁ会っちゃったのは仕方ないわね、そうだけどまさかアンタは来ないでしょう?」
「……悪いが、ちょっと諸用でね。行きづらいってのは確かに有るが、行かなきゃならなくてな」
「……ふん、別に無理してくる必要なんて無いんじゃないの。さっさと帰りなさい、折角の宴会が台無しよ。あーやだやだ、雰囲気も気分も全部ぶち壊しね」
文句を言うだけ言うと、これまたさっさと行ってしまった。……やばい、本気で引き返したくなってきたぞ。まぁ行くんだけどね
若干憂鬱になりながらも、目的を果たすためひたすら進み続ける。桜花結界が見えた、ならば目的地はもうすぐそこだろう
俺は、迷いをふっ切る意味も込めてスピードを上げ桜花結界を通り過ぎた……




