第百三十四話
「ちょっと悠哉、頼みが有るのだけれど今大丈夫かしら?」
きっかけは、パチュリーのこの一言。与えられた仕事もひと段落し、ゆっくり休憩を取っていた俺へのこの一言が事の始まりだった
「あぁ、大丈夫だぞ。で、どした? ──やり残しやミスが有ったか?」
「いえそうじゃないわ、完璧とは言えないけれど中々に良かったから。ほら覚えてる? 少し前に、庭師が来たでしょう。約束のモノが出来上がったから、貴方に届けてほしいのよ。丁度、だぁれも暇なのが居なくてね……」
「意味深だな。ついさっき小悪魔が──」
指さそうとした先では、同じように休憩を取っていた筈の小悪魔が何故かせっせとさも忙しそうに働いていた。やれ忙しい、それ忙しいと口走りながら
「え、えーっとだな。そうだ咲夜! 咲夜なら──」
「悪いけれど、咲夜は人里にお使いに行ってるわ。さらに言うと美鈴は門から離れられないわ」
「……随分とタイミングの良い事だな、レミリア」
パタパタと羽を羽ばたかせながらちゃっかり人のお菓子を食ってるレミリア。の横で同じくフランもバリバリ何か食ってるし……
「そうそう、まさかとは思うけど……主人である私は行かないから。フランも行かせられないし、パチェは論外だし」
「その言い方は傷つくわ……まぁそういうことだから、今動けるのは貴方だけなのよね〜。はぁ、行ってくれないかしらね〜?」
「……くそっ、んな露骨にしなくてもイイだろうに。分かった分かった、責任持って届けに行くよ」
「あらありがとう、悪いわね〜」
「……絶対なんとも思っちゃいねぇだろ」
──レミリア達には色々と恩が有る。今こうして働かせてもらって住まわせてもらっている身としては、何か恩返しがしたい所では有る。最も、本人に言ったら笑われたが……
ともあれ、支度をしパチュリーから術式の組み込まれた札を大事にしまい込む。コレを無くしてしまっては、向こうへ行く意味も無くしてしまう
「すみませんね悠哉さん、こればっかりはどうにも……」
「いや、美鈴が悪いわけじゃないさね。もし悪者を作るとするなら……あそこで見てる連中だろうさ」
見てる連中──主にレミリアとパチュリーだが──を指差すと、美鈴は困った様にあははと笑った。頑張ってください、と応援の一言を背中に俺は幻想郷の空へ舞い上がった
目指すは──白玉楼。あの一件以来近づく事すらなかった冥界へ、進路を取って進み始めた……




