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東方幻想記  作者: 弾奏結界
第十章──出直し、模索する道──
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第百二十九話

二日、三日、四日──ひたすら図書館の司書を務めながら空いた時間に美鈴との組手に明け暮れ、終わると泥の様に眠りに落ちる。そんな事を繰り返して、いつしか紅魔館に来てから一ヶ月近く経とうとしていた頃


いつもの様に、パチュリーが読み終えた魔導書や書き留めたノート類を小悪魔と手分けして回収していた時のことだ。咲夜が入ってきたのがチラリと見えたので、おそらくは来客だろうか


「なぁ小悪魔、今日って誰か来る予定でも有ったのか? なんか、咲夜が時間を止めずに歩いて入ってきてたんだが……」


「え? ええっと……記憶違いでなければ、予定は入ってなかったと思います。魔理沙さんなら突っ込んできますし、そもそも咲夜さんが案内なんてしませんからね。でもそれだと、一体どなたなんでしょう?」


一旦手を止め、気になったのでこっそり見に行くことに。幸い、たくさん有る本棚が隠れるのに丁度良いため隠れ場所には困らない。小悪魔と共に息を潜め、ゆっくりと灯りの灯された方を覗き込む


「……が……ねぇ。なら、……を……して……ば? これな……もんだい……」


「は……、ではそのほ……いします。……でですね……のほう……で……すか?」


やや遠いため、イマイチ聴こえが悪い。もう少しだけ近寄ってみることにする。忍び歩きで本棚に寄り掛かり、本を適当に何冊か抜き出して隙間をつくり向こう側を見ると──なんと来客は魂魄妖夢だった!


「じゃあ私の方で亡霊姫の食事量を抑える術式を組んでおくわ。出来次第人を向かわせるから、それまではなんとか凌いで頂戴。貴女ならそれくらい、わけないでしょう?」


「あはは……なんとかやりくりしてみます。引き受けてくださって、本当にありがとうございます。対したお礼も出来ませんが、良ければ此方をどうぞ。里で購入した、ちょっとしたお菓子です」


「あら、コレって確か……なかなかに値の張るモノじゃなくって? こんな高価なモノ、頂けないわ」


「お気になさらず、お納めください。此方からの感謝の気持ちですので……」


……どうやら、幽々子も妖夢も元気そうだ。なによりなにより。ホッと一安心したので戻ろうとして──


「丁度イイわ、が雇われ司書として頑張ってるから会っていかない? 呼べばすぐに来ると思うし、時間は取らせないわ」


思わずドキリとした。まさか俺の事を、パチュリーから言い出すとは思わなかったからだ。視線を戻すと、妖夢は困った様な表情を浮かべ頬をぽりぽり掻いていた


「え、えっとお気遣いは有難いのですが……実は彼と約束をしていまして、会いづらいのです。紫様に勝つまでは仲直りをしない、と。あ、でも言葉にしてはいませんよ? ただ……」


「……そう言えば、悠哉もそんな事を言っていたわね。勝てなかった事、そのせいで仲直りが先延ばしになった事、かなり悔やんでいたわね。あの分だと……一人で居る時なんか泣いていたりして」


「え!? そ、そうなのでしょうか!? ……どうしましょう」


「気になるなら会えば良いのに……ちょっと待ちなさい」


未だ悩む妖夢を尻目に小悪魔を呼び出すパチュリー。ん? 小悪魔のヤツ、急に笑顔になったぞ? ……いやーな予感がしてきた、この場を離れよう


「盗み聞きとは随分ね、悠哉? そんな所で見てないでさっさとこっちへ来なさい」


パチュリーが指をクイッと曲げた──途端に見えないナニカに引っ張られる身体。有無を言わせない力に引っ張られ、そのまま顔面から床にドーンとぶつかって停止


「…………あのー、悠哉さん? だ、大丈夫ですかー?」


「……ちょっと待って、今すっげぇ顔が痛いから。もうちょっとだけ待って」


しばらく待つとようやく痛みが引いてきたので顔を上げると、口元に笑みを浮かべたパチュリーとイタズラが成功した様な表情の小悪魔。そして、ポカーンと口を開けたまま固まる妖夢


「悠哉、お客様(・・・)がお帰りよ。ま、積もる話も有ると思うから道中のんびりしてきなさい。仕事は小悪魔に投げて、ね」


「え!? アレ全部私がやるんですか!? パチュリー様だって少しくらい手伝ってくださ──」


「アグニシャイン、喰らいたい?」


「誠心誠意やらせて頂きますっ! うわーんパチュリー様のバカー!」


……小悪魔には悪いことをしてしまったか。兎も角──


「ではお客様、玄関ひいては門までお連れ致します。粗末な案内ではございますが、どうかご容赦を」


「あ……えっと、よろしくお願いします」


先ずは、彼女を案内しなくては。仕事第一だし

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