第百二十八話
美鈴に食事を渡して組手の約束を無事取り付けた俺は、そのまま食堂へと向かった。途中でワゴンを押す咲夜と会い、共に歩きながら談笑を楽しんだ
──で。目の前にはとても豪華な食事が並んでいるわけだが……どうやって食べるのコレ? マナーとかイマイチ分かってないし、取り敢えずスプーンやナイフやフォークは両端から使ってくんだっけか。それくらいしか知らん……
「では皆、今日も一日ご苦労様。たくさん食べて英気を養って頂戴。咲夜、私とフランにはワインを。パチェと小悪魔には果実酒を、それから……悠哉はどうするの?」
「へ? あ、あぁそうだな……酒はからっきしだから何かアルコール抜きの飲みやすいモノで頼む」
「はい、ではどうぞ。白ぶどうの炭酸割りですわ、レモンスライスの酸味と共にお飲みください」
…………居心地がすこぶる悪い。場違いにも程が有るが、周りは当たり前の様に食べているし全く音がしない。いや食器同士擦れたり当たったりするんだから、音くらい鳴る筈なんだがなぁ……
小さくなって食べている俺を見て、真向かいのフランが不思議そうに首を傾げている。右手に座るパチュリーも小悪魔もキョトンとしてるし……ちなみにレミリアは吹き出しそうに震えていて、咲夜は何と言うか困った様な顔になっていた
「……くくっ、ゆ悠哉? そんなに、ぷぷ……畏まらなくても良いのよ? それなりに出来れば問題なんて、ないのふふっ」
「お嬢様、零れておりますよ? ……悠哉も、硬くなりすぎよ? もっとリラックスしてください、折角の食事なんですからね」
「…………変な悠哉。もっと楽しく食べようよー? それじゃあ美味しくないでしょう?」
散々な言われようである。が、傍から見た俺は確かに可笑しいのだろうなぁ……もういっその事開き直って普段通りに食べるか
変に気張るのを止めて咲夜の料理を普通に味わっていると……ふと違和感。あれ、なんか……野菜の量が減ってないか? 見間違いかと思い、パンをちぎって食べ飲み物を飲みもう一度見直して……やっぱり減ってる
「……なぁ咲夜、野菜のお代わりって貰えるか? どうにも食べて無いのに減ってるような気がするんだ」
「あら、それは奇々怪々ですわね。少々お待ちを……はいどうぞ。次は無くなる前に召し上がってくださいね」
で一口。美味い、んだが……また減ってる。明らかに食べた量より減ってる、流石に見間違いではない。何気ないフリして野菜を横目で眺めていると──一瞬だが野菜が浮いた、で直後に消えた
「………………パチュリー?」
「あら、何かしら? お代わりなら咲夜に言って頂戴、私の分はあげられないわよ? ね、小悪魔」
「あ、あはは。そうですねー……」
犯人が分かったものの野菜は戻ってこないので、仕方なく咲夜にお代わりを頼む。見ていたフランとレミリアは終始楽しそうに笑っていたが、当人からすれば笑えない冗談だよ全く
まぁ兎も角、食事を終え咲夜や他の妖精メイド達と一緒に後片付けをしようやく一日が終了した……




