第百二十五話
「──世話になった。本当にありがとう、俺には礼くらいしか言えないが……」
「あら、別に良いわよそんなこと。それより萃香の相手をしてくれて助かったわ、こちらこそありがと」
約一週間、霊夢の元で世話になった。その間家事を手伝ったり萃香の相手──主に軽い組手だが──をしたりして、体術や回避のタイミングなどの身のこなしを徹底的に鍛え直した。少なくとも鬼の一撃を簡単には喰らわなくなったから、収穫は有ったと思う
「お、悠哉。そっかもう行っちゃうんだ……寂しくなるけど仕方が無いよね。月並みになるけど、元気でな」
「あぁ、ありがとう萃香。それから、鍛錬に付き合ってくれた事も感謝してる。おかげで身のこなしが軽くなった気がするよ」
「鬼相手に立ち回りをしたんだ、イヤでも上達してるよ。ただ、怠けるのはダメさ。他に出来そうなヤツの所にでも行って相手してもらいなよ。先ずは地道な鍛錬の積み重ね、コレが一番だよ」
「基礎を固めろって事か……だよな。応用も何も基礎が無きゃ話にならないもんな。だが、体術が上手いヤツとか居たか? 弾幕なら思い当たるんだけどなぁ」
首を捻って唸る。誰か……あ、そういえば紅魔館の美鈴。彼女は弾幕よりも体術の方が上回っていた筈だ。つまり、美鈴に師事すれば体術の向上も見込める……?
「お、思い当たる節が有ったみたいだね。善は急げ、早速行って来な。達者でね」
「気をつけてね悠哉。そしてゆくゆくは……紫に勝ちなさいよ?」
「おう。んじゃ、行ってきます!」
「──で、出戻りで此処に来たと?」
「そうだ、迷惑なのは百も承知。頼むレミリア、しばらくの間俺を雇ってくれ!」
「……え? 雇う? ちょ、ちょっと待って。どうして泊めてくれじゃなくて、雇ってくれなのよ」
「いやな、ただ泊めてもらうのはレミリアに悪いだろうと思ったからさ。だったら雇う形で置いてもらって、少しでも家事とか手伝い出来ればなーと。どうだ?」
「んー、家事は生憎咲夜で間に合ってるし……そうだわパチェよ。あそこならしょっちゅう人手不足だからいいかも。この前も小悪魔がヒィヒィ言ってたし」
「そ、そうか……兎も角パチュリーの所だな。分かった。あそれからもう一つ、美鈴と組手をしたいんだが時間をくれないか?」
「……なるほどね、体力面を鍛え直すのね。そういった意味なら美鈴が適任だわ、体術ならこの幻想郷においてもかなり高ランクだろうし。構わないわ、許可してあげる」
「すまんな。……そういえば、フランは何処へ? 全く見てないんだが……病気でも患ったのか?」
「いえ? あのこなら……パチェの所で勉強中よ、なんでも賢く強くなって貴方を助けてあげたいんだって。あ、今の話はフランには内緒よ?」
「……フランが、そんな事を……嬉しい限りだなそれは。だが、無理はしてほしくないな……あまり根を詰め過ぎなければいいんだが」
レミリアに案内され廊下を進み、図書館の扉をくぐり抜けてパチュリーの元へ。パチュリーは事情を聞くと快く承諾してくれたため、晴れて次の拠点が紅魔館と決まった
……しばらくは、此処で己の鍛錬だな。いつか必ず、紫にリベンジして絶対勝つ。そして仲直りをする、それまでは止まれない




