第百二十二話
「ふふふ……まだ戦うと言うのね貴方は。ならば覚悟なさい、その意志を貫く道は険しく困難だということを」
「言ってろ。さて──先ずは藍、もう一度お相手願おうか」
「……そんなフラフラで、何が出来る? そんなに手酷く痛めつけられなければ分からない程、お前は愚かではない筈だ」
「……もう、退くのは止めだ。今度こそ、前を見て進むんだよ。そのための……道だっ!」
ブレスレットを最大限活用し、地面を跳ねる様にして突き進む。刀は抜き放ったまま引き摺る形から刺突の型へと持ち込む。──思い出せ、妖夢に教わった型と重心のバランス感覚を。一撃に込める力の加減と、そこまで持ち込むためのスピードと技術を!
「来い! お前を止め、此処で終わらせてやる!」
藍が放つ弾幕を、或るモノは躱し或るモノは斬り捨てて走り抜く。足が驚く程に軽い、腕もまるで羽の様にしなやかに動いてくれる。弾幕では足止め出来ないと悟った藍は、続いて式神を数体召喚し自身も攻撃に加わるという連撃に持ち込んで来た
紙で出来た筈のそれらは本物の生き物の様に動き考え連携して攻撃してくる。だが、足を止める事なく生傷を負いながらも一体ずつ斬って行く
迫ってくる爪や牙を刀で防ぎ蹴り飛ばしつつ背後から奇襲をかけて来た式神に振り向きざまに鞘で受け止めて刺突を決める。徐々に俺の周りに紙の山が築かれ、反比例して藍の顔色がどんどん悪くなっていく
「やるな……もう私の知るあの時のお前ではないということか。人間の成長の速さには、つくづく驚愕させられるよ。ついこの間まで歯牙にも掛けないヤツだったのに、まさかここまで強くなるとはな……」
「……なんで俺が、ここまでやってのけれたと思う? 確かにこの幻想郷で生きるためでもある、だがそれだけじゃあないぜ? ……紫や幽々子の隣で胸張って歩いて行ける様に。それが一番大きい所なんだよっ!」
一気に距離を詰め藍と斬り結ぶ。──藍の爪に纏われた妖気に小さなヒビが入る。負けられない……! その想いも込めて、さらに押し込む
「ぐぅ……舐めるなぁ!」
藍に押し返され、今度は俺が押し込まれる形になる。足を踏ん張れ、腰と腹に力を込めろ。やがて、ゆっくりと均衡になりまた押し込む形になる
「──今だ!」
一瞬力を抜いて下がり、藍が前につんのめる。すかさず刀を振り抜き妖気を砕き、倒れた藍に刀の切っ先を突きつける
「……俺の勝ちだな、藍」
「……まさか負けるだなんて。強くなったな、悠哉」
──次は紫、お前か……勝てるかどうか分からない。それでも、それでも……
「やっとかしらね。さ、終わらせましょう。ただし──結果は目に見えているけれど。もちろん私の勝ちでね」
「さて、それはどうだろうな? やってみなくちゃ分からないぜ? ──行くぞ!」




