第十二話
二人から謝罪をされたので、先ほどの事を水に流して──現在スキマの前。右手に紫から貰ったお賽銭の入った小袋を、左手に藍から貰った護身用の霊撃符という札を持ち紫に頷きかける
紫も頷き返し、藍を一瞥する。藍が静かに頭を下げて一言
「行ってらっしゃいませ。くれぐれも──お気をつけて」
その言葉を背に受けながら、俺と紫はスキマを潜り寂れた雰囲気のする神社へとやってきていた。紫がスキマを消す間に軽く辺りを見回してみる
綺麗に掃除された境内、所々塗装が剥げた鳥居、ポツンと置かれた小さなお賽銭箱、人が住んでいそうな母屋、そして少し離れた場所にある納屋
参拝客は……どうやら居なさそうだ。まぁ妖怪が真昼間から堂々とやってきているくらいだし、真っ当な人間の存在が居る事自体考えるだけ無駄か
「さ、お賽銭箱に早速お賽銭を入れてみなさいな。外出中でなければ、出てくる筈よ」
「賽銭が呼び鈴代わりってどうなんだよ……入れるぜ?」
ジャラジャラと音を立てて小銭がお賽銭箱へ収まっていく。全て入れ終わり、耳を立てて辺りの音に集中する
……が、いつまで経っても一向に人がやってくる気配が無い。もしやハズレか?
「……来たわよ、悠哉。にしてもいつもより遅いわねぇ」
紫が見つめる先に、少女が居た。巫女装束に身を包んではいるが、彼女の雰囲気からは俗世の気配が漂い神聖さなど微塵も感じられない。それに何故か──脇の部分が露出しているし
変わった巫女装束だな、なんて呑気に考えながら待っていると少女は此方に見向きもせずにお賽銭箱へ直行。なるほど、客よりも金か……
ますます巫女へのイメージが崩れて行くなか、中を確認したのかホクホク顏で此方をようやく見る少女。慣れている筈の紫ですらため息を零している
「久しぶりね霊夢、せめて確認する前に客人をもてなしてほしいわ」
「私から言えばお金の方が先よ。まぁ取り敢えず、いらっしゃい。お茶でも出すわ」
くいっ、とあごで母屋を示す霊夢と呼ばれた少女。あまりの態度に、呆れた笑いしか出てこない。礼儀も何も有ったもんじゃないなぁ……
ともかく少女の後に付いて行き、母屋の一室へ通される。紫と二人待っていると、おぼんの上に湯気の立つ湯呑みを三つとお饅頭を乗せて戻ってきた
「はいどうぞ、熱いから気をつけてね?」
「ん、ありがとう。ほれ紫、置いておくぞ」
「えぇありがとう。わざわざごめんなさいね霊夢」
気にしていない、といった風に首を竦めてお茶を啜る少女。本当にこんなヤツが俺の能力を調べられるのだろうか、不安になってきた
紫が少女に事情を説明している間、開け放たれた障子から何処までも続く外の世界では決して見られない大自然を堪能して時間を潰す
肝心の少女の返答は──あんまり良さそうなモノではなかった




