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東方幻想記  作者: 弾奏結界
第九章──別たれる縁、離れゆく心──
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第百十九話

「──以上で、今回の一件は無事終了ね。はいお疲れ様でした、後はそっちで勝手にして頂戴。あ、でもくれぐれも怪我させないように。これ以上はシャレにならないから」


博麗が自室へ戻り、続いて魔理沙も帰った。そして、残ったのは俺と一騒動有った連中ばかり。正直何から話して良いのやら……沈黙が痛い


耐えきれず、といった風にブン屋が軽く咳払い。目を合わせて待ってみる


「…………死に損なったようですねぇ。いや〜残念残念、ネタに出来そうもないです。まぁそれはさて置き……今更どの面で居るの? さっさと消えれば良かったのに」


「……そうだな、出来ればそうするべきだったんだろうさ。だが出来ないんだよ、そう簡単にはな。何故か理解(わか)るか?」


「別になんだって構わないわ。もうどうだって──」


「忘れられないんだよ、いつも頭の片隅にいつしか心の奥に残ってるんだよ……」


「随分と安いセリフですねぇ。それで此方が動くとでも? はっ、笑えますね! 良いですか、貴方は殺されてもおかしくない状況に身を置かれているのですよ。なのに、どうしてまぁそんなに落ち着いていられるのでしょうかねぇ?」


「決まってるだろ。……やっぱり、仲直りしたいからだよ。自分勝手だって思ってるし確かに殺されてもおかしくない、それでも! それでもさ、戻りたいんだよ……」


再び沈黙。直後、今度は幽々子が口を開く


「なら──貴方の覚悟を見せて? それから、どうするか決めましょう」


そう言って彼女が出したのは、一匹の蝶。だがただの蝶に非ず、ソレは正しく反魂蝶だ


ソレはゆっくりと羽ばたき、俺の眼前で静止する。まるで合図を待っているかのように……


「その蝶に触れる覚悟は有る? 貴方の心を、そして覚悟が伴っているのなら……出来るわよね? さぁ、見せて?」


「…………」


「ゆ、幽々子様! 覚悟も何も、触れてしまえば彼は……!」


「黙りなさい。私は彼の覚悟が見たいの、邪魔は許さないわよ」


汗ばんだ右手をゆっくり上げる。怖い、だが何かを得るためには覚悟と犠牲が必要だ。ソレが俺の場合、己の意志の強さと命だったということか……


怖い、怖い怖い怖い。まだ死にたくない、逃げ出したい、隠れたい、引きたい。でもそれではダメだ、進まなきゃ。進むために今此処に居るのだから


そして俺は──意を決して右手を蝶へ伸ばして、そして……指先が触れた


暗転する視界、ぐらついて倒れ込む身体。身体が揺さぶられ、視界が明るくなる。死んだ、にしては早過ぎる……ひょっとしてもう幽霊となったのだろうか?


「……合格ね。私はもう一度だけ、貴方と歩んでみるわ。また──よろしくね、悠哉(・・)


幽々子の声が、身に染みた。ぎこちなく笑いかけると、柔らかい笑みが帰ってくる。……嬉しかった


だが、俺はどうなったのだろう?死んだ割には随分あっさりしているが……


「大丈夫よ、貴方は死んではないし人間のままだから。無闇矢鱈には出さないのよアレ、貴方が触れたのは何処にでも居るただの蝶──をモチーフにした私独自の蝶よ。別に反魂蝶なんかじゃないから、安心して頂戴?」


「……心臓が、止まるかと思ったよ。──これからも、いや違うな。これからまた改めて、よろしくお願いします」


幽々子と握手を交わし、抱きつかれた。驚いて固まる俺を尻目に、徐々に力が強くなってくる。流石に骨が軋み始めたので、背中を軽く叩いて合図


えへへ、と笑う幽々子を見て──今度こそ、今度こそは……!


「はーい、良い雰囲気の所悪いですけどまだ終わってませんよー。大体甘いですねぇ……こんなヤツ、さっさと潰しちゃえば良いのに」


「あらあら、そんな事言っちゃって〜。あーだこーだ言ってる割には、貴女も……」


「ゴホン! まぁ私は許す気は有りませんがね。一度違ってしまったらなかなか元には戻れない……貴方にはその事をきちんと理解して頂く必要が有りますのでねぇ」


「なら、時が来れば戻る気は有るのね〜。良かったわ〜」


「ちょ、何故そうなるのですか!? おかしいでしょう!」


言い合う二人から目を離す。紫達は──無表情だった。これから仲直り、そう思うと……


「やりづらい、かしら?」


「──っ! はぁ……あぁそうだよ。でも、許してもらうためにもきっちり謝らなきゃ。さっきも言ったが進むために必要なんだ、だから俺にチャンスをくれ。……頼む、紫」


「…………藍」


「はい。ならば悠哉、私達八雲からの要求はただ一つ。勝ってみせろ──以上だ」


八雲に勝て、か……乾いた笑いが零れる。あれか、言外に断られているのか……


「分かった。精一杯やろう、いややらせてください。頂いたラストチャンス、活かしてみせるさ」


神社の境内へ出向くと──博麗が待っていた。どうやら彼女の勘の的中率は、凄まじいらしい。なにせ未来の出来事まで当ててしまうようだから


「どうせこんな事だと思ったわ。ま、結界も色々と手を加えたから存分にやりなさい。ただし! 危ないと私が判断したら、その時は無条件で止めるわ。構わないわね?」


「あぁ。それでいいさ。ありがと博麗」


「……霊夢、でいいわよ。取り敢えず一言、勝ちなさい」


「了解。持てる全てでお相手するよ、でなきゃ勝てないだろうし」


──肩を叩かれ振り返ると、妖夢が刀を差し出していた。無言で受け取ると妖夢も無言で頷く


──妖夢もどうやら、勝たなきゃ許してはくれないらしい。これは、ますます負けられない。今一度気合を入れ直し、刀を抜いて空を睨む


「さぁ、いらっしゃい悠哉。貴方の覚悟と後悔、そしてその想いの強さを見せて頂戴」


「……行くぞ悠哉、手加減無しだっ!」


──八雲紫及び八雲藍戦、開始

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