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東方幻想記  作者: 弾奏結界
第九章──別たれる縁、離れゆく心──
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第百十八話

──目覚めは唐突だった。パチッと目を見開き時刻を確認……大方二〜三十分程眠っていたようだ。痛みは……だいぶ引いた、おそらく八意印のお薬ってところだろうな


「ん、ぐう……ふぅ。よし、いけそうだな。さてと……居間に居るらしいし、さっさと行くとするかねぇ」


痛みは引いたものの歩くとなるとやはり引き攣る。足を引きずるようにして歩き続けていると、魔理沙が縁側でのんびりくつろいでいた


「お、来た来た。死にかけてた割には、随分元気そうだな……まぁ良かったぜ! どっか痛い所とか有るか? なんなら手貸すぜ?」


「大丈夫、かな。死にかけねぇ……ま無理もないか、事実だし。永遠亭の薬のおかげだろうさ……それより、助けてくれてありがとう。命拾いしたさね」


「ははは、それほどでもないぜ? っとそうだ、長話してる場合じゃないんだった。紫や霊夢達が待ってるんだ、早く行こうぜ!」


魔理沙の案内の元、居間へ向かう。気配が少しずつ増えてくるのが分かる。人数からして……ん? 五人? いや、六人か……だが何故?


疑問に思うも進み続け、魔理沙が開けてくれた障子の先へ。そこに居たのは紫と藍、それに博麗だけではなかった


「……どうして、ここに? ──幽々子、妖夢、文……?」


無表情の幽々子、鋭い目つきの妖夢、そしてニヤニヤ笑みを浮かべた文。三者三様の表情ではあるが、一様に言える事は……三人共僅かではあるものの殺気を出している事か


「悠哉、取り敢えず無事で良かったわね。さ、とっとと座って。話し合いをするから、ほら早く!」


「あ、あぁ……」


魔理沙に手を貸してもらい座って改めて周りを見渡す。──なかなかに壮観なメンツだ、少々背筋が薄ら寒いが……あと視線も気になるが


「さて、当事者が揃った所で話し合いといきましょうか。先ずは悠哉、回復おめでと。全快にはまだまだみたいだけど、流石は永琳の薬ね。魔理沙も案内ご苦労様」


「おう! や〜でもまさか、穴だらけの身体をこんなにも早く治すなんて……流石は永琳だぜ」


笑い事ではないが、確かにその通りだ。後日改めてお礼を言いに行こう。人里で菓子折りの一つでも買うか……


「で、次ね。藍、アンタの事ね。紫達から大体の事は聞いてるから改めて言う必要はないわ。全く、ウチの境内で死闘を繰り広げるだなんて……営業妨害もいいところよ? 私にも一発くれるわ、神社を妙な黒いので包むわでもう……紫? どうなってんのよアンタんとこの式神は!」


「ソレに対しては、言い訳しないわ。えぇ、私達の責任よ。後できちんと弁償させて頂くわ。藍、覚悟はいいわね?」


「…………もちろんでございます。ですが、紫様……」


「分かってるわよ藍、貴女の行動は全て私のためである事くらい。でも、矛先を向ける相手が違ったわね。そこは、霊夢でもなくましてや悠哉でもないわ」


……今、なんと? 俺じゃない、だと? そんなバカな……


「……待ってくれ、おかしいだろう? 藍は予め俺に対して言っていた事を実行に移した。至極当然で何処にも間違いなどない筈だ、何故藍の行動は間違いだと?」


「あら、この子を庇うの? ……変ね、貴方は殺されかけたのに? それでもまだ、そんなことを言うの?」


「それとこれとは別だろう。……答えろ紫、ならば向かうべき矛先は一体誰だと言うんだ!?」


思わず声を荒げてしまう。直後、奔る痛みに顔をしかめながらそれでも紫から目を離さない。──スッ、と手が伸びてきて支えてくれる。持ち主は……


「落ち着いてください悠哉さん。まだ紫様のお話は終わっておりません」


「妖夢……」


「さて。続けるけれど、本来責められるべきは彼ではない。言うなれば、私や幽々子の方ではないかと私は考えているわ。実力も地位も全てにおいて、私達は彼より上。つまり、決定した事への影響も強いわけ。ならば従者として行動するのなら、彼ではなく主たる私達に苦言を呈するべきなのよ」


「……どうだか。それより、言い寄ってくる輩を潰す方が遥かにラクだし手を煩わす事もない。こう考えるのは変か?」


……笑われた。紫、幽々子、そして文の三名に。そりゃあ自分の首を絞めるような発言をしているのは理解しているつもりだ、だが藍の行動はどう考えても俺には当然だとしか思えない


「なんだかんだ言っても、貴方は変わらないわね……なんだか安心したわ〜。ねぇブン屋さん?」


「そうですねぇ。天狗の事をとやかく言われたことについてはまだ腹に据えかねますが、こういった所はブレてなくて良かったです」


「一体どういう意味だ?」


「まぁそれについては置いといて……藍さんの処置は如何します?」


「そうね……しばらく博麗神社で奉仕活動かしらね。そういう事だから霊夢? この子をこき使って構わないから、それでいいかしら?」


「……別にいいけれど、それだけじゃ足りないわ。食料やお酒、それから──」


「お賽銭ね? もちろんお支払い致しますわ」


──口を挟む間も無く、トントン拍子で事が進んでいく。文は文で忙しなく筆を走らせ、幽々子と妖夢は静かにお茶をすする。藍は紫の側で待っているし、魔理沙は暇そうにあくびを一つ


「なんか……死ぬ思いをした割には淡々と進んでくなぁ。幻想郷ってこんなモノなのか……」

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