第百十二話
「ちぇっ、なんで私まで掃除の手伝いをやらなきゃならないんだぜ……」
「文句言う前に手を動かせ、止まってるぞ」
「あてっ! 暴力反対だぜ! そもそも女の子に手をあげるだなんて、男として最低だぜ!」
「……もう一発欲しいのか? なんなら、オマケしてさらにもう一発くれてやっても良いんだぞ?」
「…………掃除の続きをするぜ」
「よろしい。さ、やるぞ」
パチュリーに散々絞られた魔理沙は、許してもらう代わりに掃除の手伝いをするという事で手打ちとなった。今は俺の手伝いにまわってもらっているので、正直大助かりだ
小悪魔とフランは既に終わったのでのんびり紅茶を飲みながら休憩中で、パチュリーはあちこちから本の痛み具合を確認しつつ元に戻している
「……やぁっと、終わったぜ……」
「そ、そうだな。いや〜疲れた……」
「お疲れ様、小悪魔に紅茶を頼んであるから飲んで休んで頂戴。もちろん魔理沙、貴女もよ」
「助かるぜ。喉がからっからで死にそうなんだ、早く飲みたい……」
「小悪魔に悪いな。休憩中だってのに、動いてもらって」
小悪魔が淹れてくれた熱々の紅茶をちびちび飲んで疲れを癒す。お茶請けにクッキーも出してくれたので、齧りながら一口。うん、美味い
──十分休憩もしたし、掃除再開。休んだおかげで身体がよく動き、スピードアップでどんどん本が片付けられていく
「……お疲れ様。終わったわよ」
「お、終わったかぁ……いや〜なかなかにキツかったねぇ」
終わった事で気分を良くしたパチュリーは、俺達に報酬をくれるとのこと。さて、何が来るやら……
と思ったら案外普通で、フランには飴玉をあげてたし魔理沙には特別に何冊か本を貸し出していた。余程嬉しかったんだなパチュリー……
「ねぇ悠哉? 貴方は何が良いかしら、教えて頂戴な」
「ん? や、いいよ。報酬目当てにやったわけじゃないからな、構わないよ」
「……じゃあ、今後の貴方の行く末でも視てあげましょうか? レミィよりかは幾分能力との差で落ちるけれど、それでも魔女の未来予知よ? 受けて損は無い、と思うわよ?」
「未来予知、ねぇ……んじゃあここはひとつ頼むとするよ。内容はそうだな……俺の今後で」
「ベターね。まぁ良いわ、そこに座って……そうそうでこっちを見て……じゃいくわよ」
少しずつ俺の身体が光に包まれはじめる。徐々に光は強くなり──やがて弱々しくなり消えてしまった。パチュリーはやり遂げた顔をしているから、恐らくは終わったんだろうが……
「視えたわ。いいこと悠哉? この先、貴方には分岐点が大きく分けて二つ有ったわ。一つは、明るく優しい光に包まれた未来。もう一つは、暗くどんよりとしたいかにもな雰囲気を漂わせた未来。さて──貴方はどちらを取るのかしらね?」
「まぁその未来がなんなのかは、言わずとも分かるけどな。ちょっと安心かな? まだ……仲直り出来る余地が有るって分かったからな。頑張ってそっち側に転がるように、努力してみるよ」
「えぇ、頑張りなさい。何か有ったら私達が手を貸すから、その辺も遠慮無く頼りなさい。レミィだってノーとは言わない筈よ」
「ありがとうパチュリー。それじゃ、戻るかね」
フラン達と別れ図書館から出た俺は、迷うこと無く能力を発動。充てがわれた自室へと繋がる道を進んで行く。今なら気分も良いし、気持ちもスッキリしている。整理も出来た、整頓も済んだ。謝る準備も殴られる覚悟も決めた
「──行くか、博麗神社に!」




