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東方幻想記  作者: 弾奏結界
第九章──別たれる縁、離れゆく心──
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第百八話

「おはようございます悠哉様。朝食の準備が出来ましたので、食堂までいらしてください」


昨日一日をのんびりと過ごさせてもらい、朝を迎える。正直、あまり眠れなかった……思い出すのは紫達の顔ばかり、浅く眠れても夢にまで見てしまい起きてしまう


「……悠哉様? 如何なされましたか?」


「……いや、大丈夫だよ。わざわざありがとう咲夜、支度したらすぐに向かうよ」


一礼し、静かに扉を閉める咲夜を見送り顔を洗って寝癖を直す。人前に出れるくらいにはなったので、食堂目指して歩き出す。もちろん、能力は一切使わない。いや、使いたくないの方が正しいよな……


「おはよう悠哉、今日は最高の朝ね」


「おはようレミリア、最高って言っても曇り空だけどな。フランもおはよう」


「おはよう悠哉! ゆっくり休めた?」


「……あぁ、もちろん。心配してくれてありがとう」


パチュリー達は図書館に篭っているそうなので、俺とレミリアとフランに咲夜を足した四人で朝食を取ることに。洋式らしくパンとサラダ、それに温かいスープという胃に優しい献立だ


途中、フランが好き嫌いでニンジンをちょいちょい入れてきた事以外は何事もなく。朝食を終えてさて何をしようかと考えていると──


「ねぇ悠哉、お客様が来てるよ〜?」


「……客? なぁフラン、それってどんなヤツだ?」


「え〜っとね、背中に黒い羽の生えた……何て言うんだろ? 鴉?」


……鴉。なるほど、ブン屋か。さては俺のこの様を嘲笑いにでも来たか、はたまた今の心境を〜とかでネタを漁りに来たか……どちらにせよあまり良い予感はしない


難しい顔をする俺を見て、フランは小首を傾げる。客と聞いてそんな顔をすれば、誰だって不思議がるだろう


「ねぇ、ひょっとして来ちゃダメなお客様? だったらさ──私がドカーンしてこようかな?」


「…………止めとけ。レミリア達に迷惑がかかるだろ、それに面倒事になるのも目に見えてるからな。悪いなフラン、気遣いありがとう」


「えへへ〜。でも、無理はダメだよ? お姉様もパチュリーも無理はしちゃダメだっていつも言ってるもん」


一瞬、本気で悩む提案だったが理性をフルに働かせて捩じ伏せる。フランに案内を頼みその客人の元まで歩いて行く


「あやややや、賢者を見限って今度は吸血鬼の所に居ましたか……随分と取っ替え引っ替えするのですねぇ」


「……やはりお前かブン屋、何の用だ」


「やだなぁケンカ腰だなんて。もっと落ち着いてくださいよぉ、別に逃げ出した貴方の事を無様だとか情けないだとかみっともないだとか言いに来たわけじゃあないんですからねぇ」


「……そうか。で、それなら尚更何の用だ? 用が無いならさっさと帰れ」


「いえいえ、それがねぇ。妖怪の賢者の近況、聞きたくありませんか? 貴方と別れた後、どうなったのか知りたくはありませんか? もちろん亡霊姫の事もちゃあんと仕入れていますから、聞きたければお話しますよ〜?」


「……別に。言いたければ勝手に言えばいいし、言いたくなければ言わなくても構わない。出し惜しみなぞするくらいなら、ほれさっさと帰れ。出口は……あっちか」


「悠哉、そっちは図書館だよ? 出口はね、あっち」


「……だ、そうだ。分かったなら早く帰れ」


「しょうがないですねぇ。妖怪の賢者こと八雲紫様はお仕事を精力的にこなしておられますよ。亡霊姫こと西行寺幽々子様も冥界の幽霊の統率に尽力しておいでだとか……ただねぇ、お二方とも時折簡単な凡ミスを繰り返しておられるのだとか。まるで、何か(・・)大切なモノ(・・・・・)が一つ(・・・)抜け落ちた(・・・・・)かの様に(・・・・)……ねぇ? 一体何でしょうねぇ、その抜け落ちたモノ(・・・・・・・)って」


「…………さぁな、皆目検討もつかないな。それで? 言いたかった事というのは……それだけか?」


「おやおや随分と冷たくなっちゃいましたねぇ、最早過去の付き合いなど問題外ですかぁ? これじゃあお二人が可哀想で不憫でバカみたいで哀れですよねぇ……」


──気づけば、俺は刀を抜き放ちブン屋の首元にかけていた。目を丸くするブン屋と、ソワソワするフランと、無表情で静かに刀に力を加える俺。時計の針の音だけが静寂の中を木霊する、そんな中で──俺は口火を切る


「……………………もう一度だけ、問うてやるぞ鴉。カァカァ煩くさえずるのはそれで終いか? それともまだ……鳴き喚くつもりか? ハッキリしてもらおうか」


「……ただの人間風情が、誇り高き鴉天狗に対して随分な口の聞き方ね。望み通り細切れにしてやってもいいのよ?」


「はっ、やれるもんならな。……言っとくが、ただじゃあやられるつもりはないぞ。腕の一本翼の片割れくらいは頂くからな」


一触即発。ブン屋は団扇を取り出し俺はレミリアから貰ったブレスレットを改めて付ける。と、フランが笑みを零しながら口を開いた


「喧嘩するの? だったらさ……」


──ブン屋が予備動作無しで横の壁にブチ当たる。一切見えなかったのは、フランが腕を薙ぎ払ってブン屋を弾き飛ばしたからだった


「悠哉を助ける。悠哉のおかげで私は此処に居るの、だから恩返しをするの」


「……あ、あやややや。まさか不意打ちとは……随分小狡い手を使うんですねぇ……お前の性根の悪さが移ったんじゃないの?」


「鴉にカァカァ言われたくはないな。フラン、手ェ貸してくれ。あの鴉を叩き潰すぞ」


「うん! どの道紅魔館(ここ)で騒いじゃったんだから、お姉様や咲夜達が来るし。逃げられないよ、鴉さん。貴女が──コンティニュー出来ないのさ!」


──戦闘、開始

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