第百二話
朝。目を覚まし布団を畳んで庭へと出る。ここ最近出来ていなかった素振りをするためだ
「あ、おはようございます悠哉さん。これから素振りですか?」
「おはよう妖夢。そうさ、少しでも強くなりたいからな。少なくとも、妖夢と剣を交えられるくらいには……な」
……ただただ一心不乱に素振りを行う。俺がもう少し強ければ紫を困らせずにすむのかもしれない、ならば後悔する前にやるべき事をやるだけだ
「……ふぅ、ふぅ、ふぅ……こんなものか」
「随分と太刀筋がブレているわねぇ。何か悩みでも有るのかしら〜?」
「……幽々子か、悩みなんてないさ。ただ何も考えず振ってただけだよ」
「そうかしら〜? 私には貴方が、悩みを振り払うように見えたわよ〜」
「……気のせいだろ」
言葉短くその場を立ち去る。その後、妖夢の作った朝食を食べまたひたすらに素振り。腕が上がらなくなっても、足が痺れ始めても無視して振り抜き続けた
──気づけば、辺りは暗くなり屋敷には灯りが灯されていた。視線を感じて振り返ると、心配そうな表情を浮かべた幽々子が蝋燭片手に立っていた
「ねぇ悠哉、ちょっといいかしら〜? 何が貴方をそこまで駆り立てているの〜?」
「……別に、なんでもないよ。心配してくれてありがとう幽々子」
横を通り過ぎようとして──幽々子に止められる。彼女の顔は、心配そうに歪んでいた
「お願い悠哉、話して? 何が有ったの?」
……無性に幽々子の眼が気になる。何故か分からないが、こう……見下されているような気分になる。もちろん幽々子にはそんな気はない筈なのに、どうしてだ……?
「…………大丈夫だよ幽々子、だから悪いけれど一人にしてくれ。落ち着いたら話すからさ」
少々強引にそのまま進み続ける。幽々子は一言も声をかける事も追って来る事もしなかった。それが安心すると同時に不安にもなった
一体俺は、どうしてしまったんだ……?




