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番外編1

中学校時代の二人。

私にはいくつか苦手な言葉がある。


例えば、ファンタジー小説。

例えば、シュミレーションゲーム。

例えば、BLTサンド。

他の人からしてみればなんでもないような言葉だろうけど、私はその言葉から連想される事柄に酷く動揺してしまうのだ。


今日も親友の何気ない言葉が私の動揺を誘う。

「なあ、雪路(ゆきじ)。“転生”って言葉を知ってるか?」

うわあぁぁああ。

思わず、頭抱えて叫びたくなるような言葉を聞いた。


転生と言う言葉は私、篠原(しのはら)雪路(ゆきじ)の動揺ランキング上位の言葉だ。


こんなに驚いたのは久しぶり。

だがしかし、人は日々進化し慣れて行くもので、私はそ知らぬ顔で返事を返すのだ。

「死して生まれ変わることでしょう? 宗教的な話ですか、雨流(うりゅう)

「いや。この前、本でそういうものを見てな」


それは、どんな内容だと問い詰めたいような聞きたくないような。

にやにやと気持ち悪い笑顔を浮かべる友人は、いつの間にやらアニメや漫画を好むようになっていた。

人の趣味にとやかく言うつもりもないし、前世の私はオタクやら腐女子やら言われるような類の人間だったので差別的な感情もないのだが……

男×男の漫画を見ているのを発見したときは、真剣に悩んだものである。

日曜朝にやっている変身魔女っ子ヒロイン(もちろんつるぺた美少女)のフィギアをもっていることが判明したときよりも悩んだものだ。

そんなことを思い出していると、どうやら顔に出ていたらしい。


「そんな冷たい目で見るな。普通に“ファンタジー”だ。エロかったり幼女だったり“BL”ではない」


うっ。またもや禁句を発する雨流の口を塞いでしまいたい。

久しぶりに倒れてしまった友人に対してこの攻撃の数々は何なのか。

今もベッドで上体だけ起こして話している私への気遣いはないのか。


「結局、なんのお話ですか」

「怒っているのか? それともまた具合が悪くなったのか」

「別に」

「そうか。じゃあ、話を続けよう」


ここで、あっさりと私の言うことを鵜呑みにしてしまうのが雨流という男である。

もっと心配してくれても良いとは思うが、良いところの家の末息子で甘やかされて育ってきたので仕方がないかとあきらめてもいる。


「雪路、お前は中等部に上がってからキャラが変わったな」

「それは、話の続きになっているのですか」

「なってる」

「あと、私は自分が特に変わったようには思いませんが」

「いいや、変わった。よく倒れるようになった」


ああ、嫌な話の流れだ。

今日はどうして、こんなにも追い詰めてくるのだろう。


手に嫌な汗をかいてきたのを気づかれないように布団で拭いた。


「おい、やはり具合が悪いのか。汗をかいている。熱でも出てきたか?」

「は……なぁっ」

はい。どうやらそのようです。話はまた次にしてくれませんか。

そう、言うつもりだった。


しかし、驚きでぱくぱくと口が動くだけで音が出ない。

雨流が額をあわせて熱を測っているからだ。


どこでそんな測り方を習ったぁ――――!!

あれか、男×男の漫画か!?

あの時言った、漫画として面白いだけで男は恋愛対象ではないという言葉は嘘だったのか!?

二時間も重ねた話し合いは嘘だったのか!?


「少し熱いな」

「う、りゅう。いま」

「悪いな。具合がよくなったかと思っていた。寝ていろ」


軽く押されただけで私の体はベッドに沈み、少し乱暴に引き上げられて掛けられた布団に視界は塞がれる。

雨流の顔は見えない。

息苦しいので、布団から顔を出そうとすると阻止された。


どうして雨流は掛け布団を敷布団に片手で縫い付けているのか。

これじゃあ、布団から顔を出せない。

ジタバタもがいていると、布団越しにくぐもった声が聞こえた。


長い言葉だったようだが、何を言っているのか私には分からなかった。




「なあ、雪路。俺の読んだ本の主人公は転生者で、前世の記憶を思い出すと頭を抑えて倒れこむんだ。

今日、久々に倒れた雪路を見て、そのことを思い出した。それを話したかっただけだ。

……雪路が転生者なんてあるわけないのにな」


雨流は何事かを言い保健室を去っていった。


私には、雨流が何を言っているか分からなかった。

だから、今私の体が震えているのは、急に背筋が寒くなってきたからなのだろう。



いろいろ考えた末、雨流がオタクなのが全て悪いと思い、どうしてそうなったのか調査した雪路。

結果、幼い雪路が漫画雑誌あげたのが原因と判明。

酷く後悔した。

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