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田舎のお姫様  作者: Naoko
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戻って来たフリモン王子

 「ルベット、一体どうしたんだ!?」


「フリモン王子様! アレクシス様も!?」



 二人がやって来た時、三人の侍女たちは、散らかったステファナの寝室の床に座らされていた。

ルベットは、ステファナとリディがいないので、彼女らを問い詰めていたのだ。



 アレクシスは、パレードでのステファナの格好と様子が変だったので、それをフリモンに伝えた。

そしてフリモンは「まさか!」と思い、ロセウスへ戻り、ステファナに会いに来たのだ。



 三人の侍女たちは固まるようにして座っており、しくしく泣いている。


「この三人は、姫様と侍女のリディの行き先を知っているようなのですが、

 『散歩』と言うだけで口を割りません」



 アレクしスは、侍女たちをかばう様に覆い、

「かわいそうに・・・」と慰め、ルベットをキッと見上げる。


「ルベット、侍女たちの口が硬いのは知っているでしょう?

 『姫様が殿下に会いに行かれた』だなんて言えるものですか」

「殿下に!? ご冗談でしょう!」


「冗談なんかじゃありません!」


反動でそう言ってしまった侍女の一人に、他の二人はドキッとするが、もう遅い。



 アレクシスの作戦勝ちだった。

彼女は、ステファナがアクィラを意識しているのではないかと思い、カマをかけてみたのだ。


 観念した侍女たちは、アクィラ王がステファナを、月の間に誘ったのだと白状する。




「ああ、やはりこんなことになったか・・・」


肩を落とすフリモンに、ルベットは言った。


「どういうことなのでしょうか」



 こうしてフリモンは、事の次第を説明する。


 アクィラの悪戯好きは、子供の頃から有名で、

一番の騒動は、スファエに行った時だった。

水遊びをするのに水が少なかったので、ポンプを全開にして壊してしまったのだ。

子供たちは大喜びしたのだけれど、街は水浸しになり、

付き添っていた自分とイベリスは、散々叱られてしまった。


それ以来、二人の間では、「スファエの・・・」が出ると、

「警戒した方がいい」という意味になっている。


ということで、ステファナのコンテスト参加は、ロセウスを出てから知ったのだし、

「まさか殿下と結託するなんて」と高を括っていたので、

コンテストが終わるまで潜むことにしていた。



 フリモンは、イベリスがステファナを推薦していたと、ちらっとでも聞いたら、

もっと早くロセウスに戻ってきただろう。

それは、ステファナがアクィラの好みだということで、ステファナも無事ではない。

とういうか、アクィラの方が無事ではないかもしれない。



 ところでイベリスだけれど、

自分の推薦は却下されたと思ったままで、

ステファナがロセウスにいるなんて知る由も無い。




「つまり、二人が会うのは『悪戯のため』という事ですか?」

「殿下は、コンテストの『花嫁探し』が気に入らないので、

 ステファナに手伝わせ、側近たちを慌てさせようとしておられるに違いない」


ルベットはため息をつく。


「問題は、この散らかり様です。

 姫様は、『処女の儀式』をやったのかもしれません」

「何だって!?」


そして侍女たちを見て言った。


「姫様は、殿下と関係を持つおつもりなんでしょう?」


侍女たちは慌てる。


「いえ、それは聞いておりません!」

「でもそういうことなんじゃないですか?」

「月の間は、王宮の奥にありますし、ロマンチックな所だと・・・」


「つまり! あなたたちも姫様を煽ったのですね!?」


ルベットの声に驚いた三人は、わっと泣き出す。



 その時アレクシスは、ドアの近くに白い封筒が落ちているのに気付いた。

何だろうと思って見ると、裏には王宮の印璽が押されている。


「これは?」とフリモンに渡す。


「この封筒は、コンテストの委員会からのものだ」

「なぜこんな所に?」


などと言っても、誰も答えられない。



 この封筒は、アクィラの招待状と一緒に届いていた。

ところが召し使いが、盆にアクィラの招待状を上にして持ってきたので、

慌てて受け取った侍女は、下にある委員会の封筒を落としてしまったのだ。




 フリモンは、封蝋を破って中の手紙を読む。


「今夜、月の間で、スファエ王国の出展品の審査をやるそうだ」


一瞬、皆が息を止めたので、時間すら止まったかのようだった。



「大変だわ! 姫様は、大きな勘違いをしておられます!」

「どうしましょう!?」

「約束の時間はもうすぐです!」


と慌てふためく侍女たちに、フリモンは言った。


「王宮の奥へは、侍女たちだけでは入れないから、わたしが連れて行こう。

 それに、わたしも陛下をお止めしなければ」



 そうしてフリモンとアレクシス、四人の侍女たちは、

一群となって月の間に向かったのだった。



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