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田舎のお姫様  作者: Naoko
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美人コンテスト

 ロセウスでは、コンテストの準備に追われていた。

そのコンテストは、近隣諸国の特産品を集め、開発・促進を助けるもので、

華やかさを添えるため、年頃の姫たちも招待されている。


つまり、このコンテストの裏の目的は、アクィラ王の花嫁探しだったのだ。


アクィラは、

「わたしは美人コンテストの優勝者への褒美なのか!」

と気に食わない。



 アクィラは、即位して六年になる。

なのに、お后を迎える話には興味を示さない。

世継ぎ問題を理解しているのだが、

うるさく言われれば言われるほど、わざと逆の方へ行く。

側近たちは、へそ曲がりの王に振り回されるばかりだった。


 そして側近たちは、「見目麗しい姫たちは集めてみては」と思い立つ。

シンデレラの王子様のような話なので、

アクィラは、「その手には乗らない」と思ったのだけれど、

側近たちのコンテストにかける意気込みは尋常でなく、しぶしぶ開催を許可したのだ。




 それに比べ、スファエ王国の王太子フリモンには婚約者がいた。

その婚約者とはアレクシスで、小学校の先生をしている。


彼女は、スファエを、本の読み聞かせボランティアで何度も訪れ、

王様・お后様にも気に入られ、

結婚式も「ゆっくり準備しなさい」と、ありがたい言葉をもらっている。


フリモンは、引き続きロセウスにおり、王宮図書館の司書をしていた。

小学校の先生に司書、お似合いの二人だ。

彼らの周りには、ほんわかした春のような雰囲気が漂っている。


ステファナの心配とは関係なく、この二人は、着実に愛を育んでいた。



 そのステファナだけれど、六年ぶりにスファエに戻っている。

学校を卒業し、資格を取り、見習いで仕事をしていたのに、

「婚期が遅れる!」と心配した王様に強制送還されたのだ。


それも、スファエ大使館がウィリディス王国に働きかけ、

ウィリディス大使館が帝国の移民局に要請する、といった面倒くささで、

散々皆に迷惑をかけたステファナは、戻るとすぐに荒野へ消えていた。


せっかく帝国の行儀作法を学んだステファナだったけれど、

故郷へ戻れば、あっという間に、元の「山猿」に戻ってしまったのだ。




 さて、コンテストも数日に迫ったある朝、フリモンはイベリスに会う。


「出かけるのですか?」


とフリモンが聞くと、イベリスは、「急用で、しばらくロセウスを離れる」と言う。


「コンテストも近いのにですか?」


イベリスは、「どうしても外せない用事なのです」と、半ば嬉しそうに答える。

彼は、コンテストに係わりたくないのだ。



 イベリスは、アクィラにとって兄のような存在で、今では王の助言者役になっている。

そして、コンテストに不満なアクィラから、

「側近たちにひと泡吹かせたい」と話を持ちかけらてしまった。


つまり、アクィラに協力すれば側近たちに怒られ、

側近たちにつけば、アクィラに怒られるかのどちらかだ。


そんな時、ロセウスを離れる事情が出来たのは、渡りに船だった。



 イベリスは、この穏やかなスファエの王太子を見て、ちょっと心が痛むのを感じる。


というのも、このコンテストの話が持ち上がった時、

「良い姫はいないか」と聞かれ、

ステファナを推薦したのに却下される、といういきさつがあったからだ。


今回、スファエ王国は、招待すらされていない。

ステファナの評判は悪く、ラファラン家の独身の姫は彼女だけだった。


イベリスは、それ以降、この企画に係わらないようにしている。

ステファナが却下されたのは不本意だけれど、招待されても責任を感じる。

アクィラが、こんなことに大人しく協力するはずは無いからだ。



 そんなこんなでイベリスは、うっかり口を滑らしてしまった。


「フリモン王子、このコンテストには係わらない方がいいですよ」


フリモンは驚く。


「我々が、スファエを訪問した時のことを思い出してください」


それだけでフリモンは理解した。


「イベリス殿、ご忠告ありがとうございます」


イベリスは会釈すると、フリモンと別れる。



フリモンは、

「イベリス殿がいないということは、自分が代わりに呼ばれるかもしれない」と思う。


同じ年の二人で、以前は王太子同士。

しかも静かな陰のフリモンと、陽のような性格のアクィラは仲が良かった。


「そうだ、ステファナが荒野に草を生えさせたいと言ってた」と思い出し、

草の研究のため、農業試験場にこもることにする。



それでアクィラが、「フリモン王子を呼べ」と言った時、

フリモンは、すでに王宮を離れた後だった。




ところが、「コンテストにスファエ王国を除外するのは理不尽だ」という声が上がった。


しかも、「アクィラ王の友人であるフリモン王子の妹を無視するのもどうか」と言う。


また、「開催直前に、今更ステファナ姫に招待状を出しても・・・」と意見は分かれる。


それで、「フリモン王子に相談しよう」ということになったのに、彼はいない。



 結局、ダメもとで良いということで、招待状は送られてしまったのだった。



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