6話 中庭と空
翌日。
謁見の間に、コテツは呼び出された。
アマルベルガが、跪いたコテツの前に立っている。
「貴方の働きを賞し、武勲勲章を授けましょう」
「は」
周囲がコテツを見る目は、お世辞にも祝福しているようには見えない。
彼らは、コテツの活躍に懐疑的である。
いや、王女含め、全ての人間はあざみが動かしたディステルガイストによって救われたのだと思っており、コテツは座っていただけだと思っている。
ただし、ディステルガイストに乗って生還できた以上は国のために働いたものの一人だ。
故の勲章。
なのだが。
「ご主人様ーっ! 探しましたよまったくもう!」
一人の闖入者によって、空気ががらりと変わった。
「……ご主人様?」
いやな予感がして、コテツが振り向くと、そこには陽気に手を振るあざみがいた。
「あ、あざみ……、今コテツをご主人様と……」
「はいっ、アマルベルガ様」
「それがどういう意味かわかってるの?」
「ええ」
あっけらかんと、あざみは笑って答える。
そして、コテツを見た。
「今この時から私はモチヅキ コテツをマスターと定め、この先いかなるときも、いかなる戦場でもお傍で貴方に仕えます」
「……は?」
思わず、コテツの口から声が漏れ出た。
頭が痛い、とばかりにコテツは眉間に皺を寄せる。
「よろしくお願いしますねご主人様」
「いや、しかし、そんな話は聞いていないし、俺はそんなこと要求した覚えは……」
言えば、あざみは照れたように身をくねらせる。
「やですよう……、もう。昨日はあんなに激しかったのに……!」
場の空気が凍った。
「あんなに熱く、俺のモノにしてやるって……、責任とってくださいね?」
今代エトランジェはアルト乗り。
一躍、コテツは時の人となった。
まだ、城外には知れ渡ってないのが救いだが、しかし、時間の問題でもある。
「……結局ここか」
場内では、どうにも好奇の視線に晒される。
それ故に、彼は今日も人気のない中庭に居る。
良いも悪いもない、ニュートラル。
それが一番コテツにとって落ち着く場所だ。
そんな彼は、これからの波乱を予測して――。
「ご主人様ーっ!」
どう考えてもニュートラルではない声を無視することにした。
「……いっそ本気で農家でも目指すか」
ということで、ひと段落。
続くかどうか未定の話だったもんで、書いてある分はここまでです。
元々、息抜きにテンプレ異世界召喚物がやりたくて始めたこれでしたが、非常に書きやすくて楽しかったです。
ここまでコテコテなのは初めてでした。
テンプレのおかげですらすら書けるので、もしかすると続くかもしれません。