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異世界エース  作者: 兄二
Interrupt,With me
65/195

59話 アサルトホーン








 気が滅入る。

 部屋のベッドの上で一人、クラリッサは膝を抱えていた。

 非番に加え、この前後に休みを取ったのが裏目に出た。

 訓練や仕事で気を紛らわせることもできず苛立ちが募る。

 おかげで、彼女の綺麗な金髪も、今は艶を失っていた。

 そんな彼女へと、不意にノックの音が届く。


「……誰です」


 暗い声が部屋に染み渡り、数瞬後、低い男の声が扉の向こうから返って来た。


「コテツだ」


 その静かな声にどきり、と心臓が嫌な音を立てる。

 コテツ・モチヅキ。その男は、クラリッサが今一番顔を合わせたくない相手だった。


「……何の用ですか」


 その言葉に目一杯の拒絶の意思を込めて、クラリッサはいつもより低い声を出す。

 対する言葉は、あまりにいつもと変わらず。


「帰ってから君と会っていないし、訓練もしていない。体調でも崩しているのか?」


 クラリッサはこの男に好かれるような言動はしていないし、実際そこまで好かれてもいないだろう。

 しかし、SHを動かすことしか考えてなさそうなこの男にその程度には気にされているようだと、ほんの少しだけ感慨を覚える。

 そして、それと同時に、惨憺たる気分もまた更に加速した。


「体調は崩していませんが。残念でしたね、この先は、あなたごときの訓練に付き合うような暇はなくなりそうです」


 胸にわだかまる黒い塊を吐き出すように、クラリッサは言葉にする。

 コテツは、それへと疑問を口にした。


「何故だ?」


 だが、その言葉を口に出すのは、酷く勇気が必要だった。

 その言葉は今までの何もかもを、吹き飛ばしてしまうだろうから。

 それでも、答えを先延ばしにするわけにも行かなかった。


「――私の結婚が決まりましたから」


 口に出した言霊は、重く肩に圧し掛かる。


「それは、おめでとうと言うべきか」


 そして、扉越しに聞こえた声に、一瞬、クラリッサは声を荒げかけた。


「何がっ! ……なにがおめでとう、ですか」


 コテツの言葉は嫌味でもなんでもない。それが分かっていて、クラリッサは荒げかけた声を静かな物に変えた。

 彼の言葉は嫌味でもなんでもない。この男にその辺りの情緒を期待するだけ無駄。どうせ、本気で言っているのだろう。


「嬉しくないのか?」

「嬉しい、訳がないでしょう」


 搾り出すような声。

 そう、結婚など嬉しいわけがなかった。

 この国では、一定以上の身分を持つ女であれば、必要以上に結婚を迫られる。

 女は早く嫁ぎ、男に従属すべしという考え。そういうものなのだ。そして、女王騎士団副団長という中途半端に低い地位であるクラリッサは貴族の男達にとって手が出しやすく、

 そして、身分が王女騎士団副団長という中途半端に高いものだからこそ他の貴族にとっては価値がある。

 手軽で手頃に手に入るが、価値はそれなり。

 そういう理由で求婚されて、何故嬉しいのか。

 故にこれまで、クラリッサは全ての求婚を断ってきた。

 しかし無論、断るには理由が要る。

 今までは、彼女はこう言葉にして求婚を断ってきた。


『私は誇りある王女騎士団副団長として私よりも弱い者と婚姻することはできません。私は強い者の伴侶になります』


 そして、求婚する者と戦い、常に彼女は勝利を収めてきた。

 手頃で良品だからという理由で勝負を求めてくる男など大概が貴族の次男や三男坊でものの数ではなく。

 本物の実力者は政治的立場が決して強くはないクラリッサを求めてくることもない。

 だが今回。

 負けを喫した。コテツが帰ってくると思った矢先のことだ。

 思うことは色々ある。だが、事実だ。

 今までずっと勝って断って来ただけに、今更取り下げることなどできない。

 だから、あの嫌味たらしい気障な男と、クラリッサは結婚することになる。


「そうか」


 その事に対してコテツからの言葉はそれだけだった。

 ただ、足跡が遠ざかっていく音だけが聞こえる。

 クラリッサは、抱えた足をぎゅっと強く抱きしめた。


「……馬鹿」


 コテツではなく自分が。

 助けでも求めればよかったのに、自分は膝を抱えていじけている。


「……可愛くない」


 膝に頭を埋めて、目を瞑る。

 そういえば、昼過ぎにあの男が迎えに来ると言っていた。

 きっと、今の自分は酷い顔をしていることだろう。

 ならばいっそ、最高に酷い顔で会ってやろうと、クラリッサは自嘲気味に笑う。

 果たして、あの男はいつ来るのだろうか。

 昼過ぎとは言ったが詳しい時間指定はしなかった。

 アバウトでいちいち癇に障る男だ。

 着衣は色気も何もあったものではなく、部屋着同然。

 だが着替えようという気にもならず、クラリッサはその体勢のまま待ち続ける。

 そうして、時間は無為に過ぎ去っていく。

 カーテンを閉め切った部屋の暗さが眠けを誘った。

 うとうとと眠りかけて、無理な体勢故に意識が戻る。

 それを何度か繰り返した頃。


(いつまで待たせる気ですか……)


 やはり気に食わない、やるせないという気持ちが込み上げる。

 情けないことに、涙が溢れてきそうになって、壁を睨み付けてどうにか堪える。

 どうしようもなく惨めだ。

 ただただ、クラリッサは壁を睨み付ける。

 そして、どれだけの時間が過ぎ去っただろうか。

 涙を堪えるのも限界かと思われたとき。

 乱暴なノックの音が部屋へと響き渡る。


「今更なんですかっ」


 苛立ち気味にクラリッサが声を荒げる。

 返事を返したのは待ち人でもなく、かといって今しがた去って行った男でもなく。


「嬢ちゃん、ダンナがあんたの婚約者と決闘を始めたぜ!」


 アルベールだった。

 しかし、あまりにも予想外な言葉に、伝えに来た者のことなど一瞬で消え去った。


「――え?」
















 練兵場は、いつになく野次馬でごった返している。

 王女騎士団副団長を巡っての、凄腕のエトランジェとあまり良い噂のない貴族の次男坊の戦いは、彼らにとって好カードになりえるようだった。


『では、決闘を始める。後悔しないでくれよ? そして、出た結果には何があっても従ってくれたまえ』

『ああ』


 黄の機体と、青いアインスが相対する。

 なだらかな曲線の集合体とも言えるような黄色のがっしりとした機体と、いかにも騎士然とした青い頭部のブレード状の角が印象的なアインス、それらが睨み合っている。


「なんか、大変なことになってたみてーだな。知らん間にっつか、いつの間にそんな事になってたんだよ」

「あなたが仕事で出かけている間に、です」

「それで、嬉しいかい? あんたのために、ダンナが戦うぜ?」


 練兵場の一角で、アルベールがにやりと笑って問うその言葉に、クラリッサは少しの動揺を隠し切れずに誤魔化した。


「そ、それより、どうしてこんなことに……」


 まったく、意味が分からない。

 本当に、コテツの考えていることはよく分からない。


「曰く、強い者と結婚したいと言ったなら、強いほうに優先権がある。そして、ダンナが保留にしとけば嬢ちゃんは誰とも結婚せず自由の身って訳だ。それが、ダンナがその辺の奴に事情聞いて出した結論らしいぜ」

「……でも、どうして」

「嬢ちゃんが結婚したくねーって言ったんだろ」


 確かに言った。

 だが、それだけで? と戸惑いながらクラリッサはアインスを見上げた。


「ま、ダンナも不器用だからな」


 機体が動き出す。

 双方剣を構えて、今にも始まる戦いに備える。


「……あの、お馬鹿は」

「嬉しそうだな」

「嬉しくなんてっ」


 クラリッサは説得力のない言葉で否定する。

 そんな中、戦いは始まった。


『こちらから行かせてもらう!』


 初手は、相手の男が攻める。


『好きにしろ』


 今回もまた、コテツは受けに回り、カウンターで倒す算段のようだ。

 しかし、そう上手くいくか、クラリッサには疑問だった。


「……んー、つか、相手の男は普通だよな? ……ぶっちゃけ弱い?」


 そんなクラリッサの横でアルベールが呟く。

 確かに、的確な指摘であり、見事な眼力と言うほかないだろう。

 まったくもってその通りなのだ。


「はい」

「どうして、嬢ちゃんが負けたんだ?」


 だとすれば出てくる当然の問い。

 圧倒的実力差。アインスに乗ればハンデをくれてやる羽目になるコテツはともかく、正統派に強いクラリッサが負けるはずないのだ。

 一体何をもってしてその実力差を埋めたのか。

 そんな疑問点の答えは、果敢に攻める男と、全て受け流すコテツ。

 その剣戟がしばらく続いた後に出た――。


「……来ましたね」

「ん?」


 不意に、アインスが傾ぐ。

 アルベールが目を見開いて、不審そうに呟く。


「おい、ありゃあ……」

「整備不良、ということになるのでしょうね」


 苛立たしげにクラリッサは吐き捨てた。

 アインスが、片膝を着き、左腕はぶらりと垂れ下がる。

 力なく、まるで、糸の切れた操り人形だ。

 周囲の反応は何処も似たような物で、皆が皆驚いた顔、あるいはやはり、という顔でアインスを見ていた。


「私のときも、随分と都合のいいタイミングで整備不良が起きました」


 魔法を使わないルールと、騎士らしい銃を持たない装備上、手足の不調は直接的に響く。

 特にクラリッサの場合、その大剣が十全に動かせるならばどのような攻撃もそれで防ぎ、どのような敵も切り伏せて見せるのだが、その剣は片手と片足では振るえないのだ。


「なるほど。そういうことかよ」


 こうなっては仕込としか思えない。

 クラリッサの時とて、油断はなかったのだ。

 しっかりと整備に回した上で挑んだ。整備班がサボったとは思えない。彼らは職人だ。自分の仕事に全力な男達だ。

 だが、あの時クラリッサは機体にべったりと張り付いていたわけではない。

 求婚してきた者への礼儀として、呼び出されて話がしたいと言われれば応えないわけにもいかなかったのだから、むしろ、誰かが細工する時間なら十分すぎるほどあった。


「私と同じ箇所。片腕と片足ですね」

「仕切り直しを要求できねぇの?」

「如何なることがあっても結果に従うという、戦闘前のルールがあります」

「それでサマするってんだから、最悪だな」


 横に振られた剣を、アインスが伏せるように避ける。


『整備不良かな? 悪く思わないで欲しいな。機体の管理は君の仕事だろう』

「……いけしゃあしゃあと」


 クラリッサは忌々しげに呪詛を吐いた。

 彼女の時と同じだ。

 同じように相手は悠々とアインスを見下ろしている。

 いや、見下しているのか。

 男の機体が剣を振り上げる。


「……でも、あれだよな」


 しかし、クラリッサの心に心配は浮かばなかった。

 少しだけ、悔しくはあったが。

 なぜならば。


「――ダンナは片腕片足のもげたシュティールフランメで」


 ――今地に伏している青の機体が負ける気が、ほんの少しもしないからだ。


「俺達の包囲を食い破って行ったんだからなぁ」


 止めを狙う刃。


『君も不運だったね。タイミングが悪かったようだ』


 応えるのはやはり、いつもの声だ。


『それがどうかしたのか』


 片腕と、片足だけで、機体が動く。

 地上戦用のSHは片足だけで動くことなど考えられてはいない。

 だが、動く。

 片腕と片足で、器用に体を跳ね上げて。

 片腕を軸に派手に回転して見せた。


『え?』


 それは正に奇襲。

 迫るのは、鞭のようにしなる動かない足。

 遠心力を過剰に乗せられた足が敵を打つ。

 鉄がぶつかり合う轟音が大地を揺らし、腹の底に響く。

 傍から見てもそれは相当な衝撃だったことが分かる。


『う、あぁっ!』


 大きく後ろに仰け反る相手。

 その隙が、コテツに見逃されるはずもない――。

 アインスは蹴っていない動く方の片足が地に着き、器用に反転。

 片手と足を地に着いた状態で体をたわめるように力を溜める。

 しかし、ここでクラリッサの目には問題が映った。

 アインスの手に、何もないのだ。


「コテツ……、どうする気ですか……!」


 片腕が動かず、そして動く手は機動に使ってしまった今、ブロードソードはその手から離れてしまっている。

 つまり、武器がない。

 それで如何にして決定打を放つのか。

 無論、アインスの拳で倒れてくれるほど敵は柔ではないだろう。

 先ほどのような高威力の打撃であっても、衝撃を与えるだけで、装甲を破損させることもない。

 だと言うのに、コテツのその操縦は淀みなく。

 決着を、付けるつもりなのだ。クラリッサにはそれが分かった。

 相手は大きくバランスを崩し、死に体の今を逃す手はない。

 ならば、一体どうやって決定打を決めるのか。

 それは、溜めた力を解放するようにアインスが突っ込んだことで答えが得られた。

 その結果に、アルベールが呆れ気味に呟く。


「……嬢ちゃん。アレって、飾りじゃなかったんだな……」


 アインスに残された武器。

 当然それは剣ではなく。

 拳や足などではなく。

 隠していた武器が合ったわけでもなく。

 アインスに残された最後の武器は。

 それは、そう。

 頭部にあるそのブレード状の角だった――。


「私だって……、使ったのは始めて見ました」


 貫いている。

 下から突き上げるように放たれた一撃は、機体の腹を貫き、背後へと突き抜けていた。


『……そんな、機体がうごかな……』


 相手の機体が雲を掴むように手を動かし、やがて力を失う。

 そして、アインスが角を抜き去ると同時に、相手の機体は崩れ落ちた。


「そんで制御装置にドンピシャ、ね。狙ってたのか、偶然なのか。ま、いつも通りっちゃいつも通りか」


 勝者が決まる。

 どこかで歓声が上がった。

 勝ったのだ。

 一気に、肩の荷が下りた気がした。


「嬉しいかい? 副団長さんよ」


 そんなところを、アルベールに茶化すように問われ、クラリッサは少しだけ頬を赤くした。


「別に……、そ、そのようなことは。でも、お礼はしなければならないと思いますっ、礼儀上の観点からすればそれは当然のことで……、他意はありません」

「素直じゃないねぇ」


 微笑ましげに、彼はクラリッサを見つめ、そして笑いながら言葉を続ける。


「ま、ダンナは俺が引き止めておくよ。その間に嬢ちゃんは部屋に戻んな」

「何故です?」


 意味が分からず問うと、アルベールは意味ありげにクラリッサを見る。

 そして、クラリッサは自らを見つめて、答えに辿り着いた。

 そうすれば、こうしてはいられない。

 即座にクラリッサは踵を返し、走り出す。


「恩に着ますっ」















「お疲れさん、ダンナ」

「ああ」


 コクピットから大地へと降り立ったコテツを迎えたのはアルベールだった。


「相変わらず、やるねぇ」

「……いや、今ひとつだ。これでまた、アインスはオーバーホールだろう。整備班には迷惑を掛ける」

「マジで?」


 問うアルベールにコテツは頷いた。

 この戦いでまた、アインスは部品単位に分解して整備することになるだろう。


「関節が馬鹿になっている。なんとか戦闘中に崩壊するような真似は防いだが、限界だろう」

「そりゃ、片足立ちで戦闘するようには作ってねーもの」


 これがコテツの世界の機動兵器、DFや、アルトほどの物ならば操縦技術で衝撃を受け流すことができるのだが、操縦系統の反応の遅さや大雑把さのために、精々が機体が分解しないように抑える程度だ。

 しかし、目的は達成したのだから、十分に役目は果たしたと言っていいだろう。

 やはり整備班に迷惑は掛かってしまうがそこは仕事として諦めてもらうしかない。


「ところで、先ほどまでクラリッサがいたようだが」


 ふと、そう言ってコテツは視線を動かした。

 今回の件の中心にいる当の本人は、試合開始前にちらりと視界の端に映っていた気がするのだ。

 しかし、当の本人は何処にもおらず、アルベールはわざとらしく笑う。


「女には色々あるんだよ。ま、しばらく待ってな」

「そうか」


 よく理解はできないが、アルベールの方が自分より女に詳しいだろう、とコテツは断じた。


「で?」


 頷いたコテツへと、アルベールは次を促す。


「で、とは?」

「ダンナ的には嬢ちゃんが結婚するのはNGなのか? もしかして恋の予感?」

「嬉しくない結婚というのは拒否すべきではないのか? 確かに必要な結婚というものがあるのも理解しているが、これはそういうケースではあるまい」


 一瞬空気が固まり、凍る。

 それが終わってからアルベールは呆れた顔で笑った。


「そーかい。いやはや、まあ、ダンナらしいけどさ。でも、よくやる気んなったね?」

「運動不足だとあざみもぼやくのでな」

「……そーかい」


 諦めたようにアルベールが呟いた。

 そして、そんな折。


「コテツ」


 コテツの背後から女の声が届く。

 そちらを見れば、見知った顔。

 艶やかな金の髪に、いつもより少しだけ華美な服装。ブラウスに、ケープと、青いフリル付きのスカート。


「クラリッサか。勝手に話を進めたが、問題はなかったか」

「……そうですね。普段ならばあなたはいったい何を考えているのか、と問い詰める所です」


 が、とクラリッサは逆接をもって言葉を続ける。


「こ、今回は、特別です。それよりも、それよりもっ、婚約の権利の優先権があなたにあるということについてはどういうつもりですかっ?」


 それは、それなりに勇気が必要だった言葉なのだろう。所作から緊張が見て取れるほどだった。

 しかし、返って来たのはあまりにもあんまりな真顔で。


「君に好きな男ができたなら、手加減しよう」


 そんな言葉に、クラリッサは呆れ顔を向けた。


「……そうですか」


 いつの間にか、アルベールはさりげなくその場を後にしていて、野次馬もすでにめいめいに散った。

 つまり、ほとんど二人きり。

 そんな状況で、彼女は気を取り直したように頭を振り、真っ直ぐにコテツを見据えた。


「いえ、それよりも……。今回の件に関してお礼をしなければなりませんね」

「大したことはしていない」


 だから、必要ないとコテツは言うのだが、強くクラリッサは否定した。


「いいえ、これは騎士の沽券にかかわることです」


 言いながら、クラリッサは頬を赤くする。

 彼女にしては珍しく、俯いて判然としない中途半端な言い方で。


「で、ですから、なんでも一つだけ願いを聞きます。今回だけは、は、破廉恥な願いでも……」


 言われて、コテツは考える。

 考えるが――、答えは一つだった。


「では、訓練に付き合ってもらえるか」


 あまりにもいつも通りなコテツ。

 いつもの唐変木ぶりに、再びクラリッサは呆れ顔を見せる。

 だが、しかし、その呆れ顔はいつになく楽しそうで。


「分かりました。では、朝まででも付き合いましょう――」


 そう言って笑う彼女は陽光に照らされて、コテツの目に輝いて映った。










今回は宣言どおりあまりこだわらずにさくっといきました。

次回からはちまちま書いてきます。

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