表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界エース  作者: 兄二
06,人の価値
56/195

50話 make value

「一体、なんだったんでしょう、彼女は」

「……分からないな。予想はついても全容と確証は分からない」


 部屋に戻った二人は、釈然としないまま部屋へと戻った。

 待っていたシャルロッテに、不審者を捕まえただけと報告しておいて欲しいと言い含め、今に至る。


「でも、報告しなくて良かったんですか?」

「正直何を伝えていいのかも分からん」


 何が無関係で何が関係しているのか、それが分からない。

 藪を突いて蛇が出る――、つまり下手にこじれても困るのだ。

 地下のアレはろくでもないものだ、と勘が囁いているのだ。

 しかし、考えた所で疑問点に答えが出るわけではない。


(下手の考え……、という奴か)


 焦ったところでどうしようもないと思って、コテツは思考を止めることにした。


「……寝るか」


 呟いたコテツに、リーゼロッテは神妙な面持ちで頷いた。


「その、今日はベッドで寝てください」

「何故だ?」

「疲れて、ないですか? ここに来て働き通しで、こんなことに巻き込まれてしまって」

「その台詞は君に返そう」

「わ、私は頑丈だからいいんです」

「同じ台詞をまた返させてもらう。軍人が婦女子よりも頑丈でないと言うのは立つ瀬がない」


 彼らのベッド事情は、大分変わっていた。

 無論、ベッドは一つしかなく、もう一つ運び込むようなスペースがあるわけでもない。

 そして、互いを互いに気遣い合った結果、ベッドの使用者は決まっていないのだ。

 コテツは、突き詰めれば一般人であるリーゼロッテに休養を取らせようと考えるし、リーゼロッテは主に休みを取らせようと考えている。

 結果が、先に寝た方がベッドに移動させられている、という話だった。。

 こういったことに対し、意地を張るというのも馬鹿らしい話であり、疲れている方は先に寝てしまう。

 そうしたら、起きていた方は寝た方をベッドまで運んで寝かせるのだ。

 基本的には、二人がけのソファに座って時間が経つのを待つだけだ。

 決まっていることと言えば、眠ければ我慢しないことだけである。

 なのだが、今日に限って言えば、リーゼロッテはコテツにベッドを勧めてきたのだ。


「その、ベッドを……」


 コテツとしては、リーゼロッテを休ませたいところである。

 女子供だからという理由だけでなく、戦闘員でもないのに無理をさせすぎたという部分がある。

 鼻や耳は便利だし、荒事や悲惨な光景に慣れている、と言っても彼女は訓練を受けた軍人ではないのだ。

 女子供だからどうこう、というよりも、倒れてもらっては困るという思いがあった。

 亜人だから、碌な治療が受けられるかも分からないのだ。むしろ代わりを勧められる予感すらあった。

 が、不意に、コテツは馬鹿らしさを感じてしまった。


「……二人でベッドを使えば済む話か?」

「えっ?」

「いや、女性に向かって言う台詞ではなかったか」


 失言だったと、訂正するコテツ。

 しかし、リーゼロッテからは、思惑とは違う答えが。


「……えっと、いいですよ?」


 顔を赤くして、リーゼロッテは言った。

 恥ずかしげに顔を伏せて、狐耳はいつもより少しだけ垂れている気もする。


「わた、私は、最初会った時にも言いましたけど、コテツさんが望むことをするのが私の仕事です。その……、夜伽の相手とかも……」

「そうか、だが安心しろ。手は出さない」


 そう言ってコテツは立ち上がった。


「先に寝ていてくれ。装備を外す」

「じゃ、じゃあ。失礼します。待ってますから」

「大丈夫だ、ちゃんと寝る」


 ベッドの布団の中へと入ったリーゼロッテを尻目にコテツはホルスターを外し、ベッドの側に置いてあるテーブルへと乗せた。

 懐の銃も同じようにそこに置く。


「では入るぞ」


 コテツは上着を脱ぐと、布団へと入る。

 Tシャツとジャージのような寝間着があるにはあるのだが、侵入者が出ている以上はあまり軽装になるのは誉められたことではない。


「は、はい」


 布団に入ったコテツを、リーゼロッテは緊張した様子で受け入れた。


「温かいな」

「う、鬱陶しいですか?」

「いや」


 その温かみは、ありがたいとすらコテツは思う。

 人の武器は段々と人を人を殺す感触から外れていく。そのことを剣を使った戦闘をして、彼は再確認することとなった。

 銃では、人を殺しているのだという、吹き出る血飛沫の温かみを感じられない。

 血の温かみも、肉の柔らかさも、骨の硬さも、殴った時の拳の痛みも。

 人型機動兵器というのは、もっと悪い。断末魔も、死に顔もそこには無く、冷たい鉄の巨人がいるだけだ。

 そういう理由で、せめて声だけでもと通信をオープンで開いたままにしていた兵士もいる。

 鉄の巨人に乗るならば、鉄の巨人に体温を奪われることを覚悟しなければならない。

 顔も見えず、声も聞こえず、そして、感触も無いならば、人はどこまでも冷たくなれるものだ。

 戦時中はそれでもいいが、今は、そうではない。


(エリナには実感して欲しくない世界だが……。甘えか)


 何よりそれをエリナが望まない。

 ならば、国が平和であることを祈るしかないだろう。

 あるいは、意地でも平和を守って見せるか。

 何をすべきか、風に吹かれる木の葉のような生き方だが、それでも、意外にも、守るべきものは増えてきた。


(生きているだけでしがらみは増えるものだ)


 そう思って、コテツはリーゼロッテは見た。


「そういえば、君に聞きたいと思っていたことがある」

「なんでしょうか?」


 コテツの声に応え、もぞり、とリーゼロッテが身じろぎし、彼の瞳を見た。


「君は、エトランジェの侍従を辞めたいと思ったことはないのか?」


 この国に来てずっと気になっていた言葉を、コテツは吐き出した。

 差別の実情。権力が集中する場所に近づけば近づくほどそれは酷く、現場に近づけば近づくほど緩くなる。

 アマルベルガの城だから、かなりマシな方なのだろう。

 そして、エトランジェの隣は安全圏だ。

 だが、コテツに付き従うよりも、もっと楽な生き方があるのではないかとも思う。

 例えば森で静かに暮らす事。差別意識の薄い、冒険者となって、自由気ままに生きる事。

 それをコテツは、聞いておきたいと思ったのだ。


「無理に付き合う必要は無いぞ」


 だが、その問いに、リーゼロッテは、困ったような顔をした。


「逆に聞きますけど、私じゃダメですか? お役に立てませんか? ご迷惑、でしょうか」

「いや。君は十二分に役に立っている」


 私生活から、鼻や耳、役に立つ部分はデメリットを補って余りある。


「なら、お側に居させてください。私は大丈夫ですよ。私がそこにいることを許してくださるなら。私は他の人に何を言われても負けませんし、お仕事はちゃんとこなせますし、なんでもお役に立って見せます。私が、そう決めたんですから」

「自分で、か」

「はい、それが私だって決めたんです。めげないし、仕事はするし、役に立てる人です。許してくれるなら、そういう人でいさせてください」


 そう言って微笑むリーゼロッテに、コテツは目を閉じて、己の姿を思い浮かべた。


(では果たして俺にどんな価値があるのか)


 特に答えは出ない。

 そんな中、不意に、リーゼロッテがコテツの手を握った。

 何のつもりかと考えるも、リーゼロッテは笑っている。


「とりあえず今は……、冷たい手を温められる人ということにしてください」

「……ああ」

「それでは、おやすみなさい」

「ああ、お休み」


 寝ると決めれば後は早い。コテツの意識は、水に鉄塊を落としたかのように沈んでいった。




















 そしてその三日後の昼。

 更なる、襲撃があった。


「ふ、来たか。行くぞコテツ!」


 暗殺者達を前にシャルロッテが、愉しげに口の端を歪める。

 コテツは、それをちらりと横目で見ていた。


「楽しそうだな」

「そうか?」


 言葉を交わしながら、シャルロッテは斬りかかった。

 相手のナイフを弾き飛ばし、更に剣を振るって、確実に敵にダメージを与えていく。


「ああ。楽しそうだ」


 しかし今回は、ナイフや剣ばかりではない。魔術師二人が、今にも魔術を唱えんとしていた。


「させん」


 それを許すわけにはいかない。

 コテツはそちらに向かって銃撃を放った。

 四発撃った内、最初の二発が外れ、一発が相手の一人の腹に当たり、もう一発はもう一人の膝へと当たる。


「中距離になると精度が悪いな」


 だが、十分であった。

 集中を途切れさせ、まともに術式を考える暇を与えなければ、魔術は発動できない。

 その間に、シャルロッテが果敢に切り込み、敵を切り裂く。

 そして、魔術師二人を切り伏せて、一度コテツの元まで戻ったシャルロッテは呟いた。


「ふむ、しかし……、楽しいかも知れんな。不謹慎だが……、エトランジェと共に肩を並べて戦うことを、私は楽しみにしていたのでな」


 確かに、本当に肩を並べたのはこれが初めてかもしれない。

 同じ戦場にいただけであれば二、三度あるはずだが。


「背後にはエーポスまで控えているのだ。気合の入らないはずも無し!」


 言うとおり、背後にはソフィアが立っている。

 彼女の専門は障壁。今も尚、モニカとエリナを包むように張られ、半透明の緑の板が彼女らを守っている。


「何人いようが掛かってくるがいい! 剣の錆にしてくれる!!」


 背後への憂いはなく、シャルロッテの剣が冴え渡る。

 コテツは、バックアップに徹するだけで、簡単に決着は付いてしまった。


「ふう、助かったぞコテツ」

「いや、ほとんど君が決めたようなものだ」


 その冴え渡る剣技は流石と言うべきか、相手の全てを生存者として捕縛させた。

 コテツであればそうはいかない。一人二人を残して全て絶命させることになったろう。

 彼らは既に兵士によって回収され、今頃は牢の中か。


「意外と、使えるものだな、銃というのは」


 彼女曰く、殺すだけならいつでもできる。相手も覚悟済みであろうから、収容できなくなれば殺せば良い。

 だが、話を聞きたくなっても殺してしまっては生き返る事は無い、と。


「導入しようと思ったことはないのか?」

「一度試験的に我が騎士団で運用してみたが、暴発が頻発、的に上手く当たらず、故障もしょっちゅうと来るとな」

「買ってきて、必要なとき弾を入れればいいというものでもないからな」


 整備しなくては故障するのも当然だ。しかし、その整備の知識はどこで得るのか。

 そこも問題だろう。書物は印刷技術がそこまで発達していないために、銃の分解整備に関する本など売られていない。

 無論、ネットワークなどないし、そうすると人に聞くしかないのだが、聞けるような銃のユーザーが少ない。

 つまり結局、物好きのための武器ということだ。


「ふむ……、見せてくれないか?」

「ああ、少し待て」


 コテツは、弾倉を外し、スライドを引く。

 薬室に装填されていた弾も排出され、銃に弾が残っていない状態にしたうえで、安全装置を掛けて手渡した。


「先ほどのが……、安全装置というものだったか。弾が残っていないのに掛ける必要はあるのか?」

「軍では銃に弾が入っていないという状況を想定していない。弾が入っていないと勘違いして暴発させた件数が多いためだ」

「なるほど、その辺りの徹底が暴発を防ぐのか……」


 シャルロッテが、受け取った銃を弄って、射撃をするような動作をする。


「しかし、使うたびに整備しないといけないのだろう? やはり些か面倒だな」

「現場であれば現場の判断というものが挟まれるが、実弾を撃ったなら整備すべきではあるな」


 後は慣れがあれば然程苦でもない、それこそ弓よりもずっと簡単に扱えるのだが、その最初のハードルが難しいのだろう。


「武器の整備はどれも面倒だと思うが」

「いやしかし、整備のために部品をなくされた日には……」


 その顔に、苦労が滲む。

 これが実情か、とコテツは心中で呟いた。

 この分だと、銃の組織的導入は随分と後のように思える。

 シャルロッテが銃を構える姿は凛々しく、美しいのだが。

 そんな彼女はひとしきり触って満足したのか、コテツに銃を手渡した。


「ふむ、しかし今回もあれらはどこから入ってきたのだろうな」


 大事を取って、モニカの部屋は別の箇所へと移されたのだがしかし、暗殺者は当然のように侵入してきている。

 どこから入ってきたのか。

 コテツはその答えを持ち合わせておらず、シャルロッテの疑問は虚空に溶けて消えた。


「マスター」


 と、そんな中、ソフィアがコテツに声を掛けてくる。


「どうした?」

「守った」

「そうだな」

「誉めて」

「よくやった」


 言われるがまま誉めてみたのだが、ソフィアはその場を動かない。

 なにか違うのだろうかとコテツが疑問を覚えたとき、それを隣からシャルロッテが笑い飛ばした。


「はははは、コテツ、そういう時は行動で示すものだぞ」

「行動、か?」

「無表情でよくやったでは誉められている気などしないさ。笑顔の一つも付けられないなら何か行動の一つでも加えなければ」

「……どうしろと」

「頭でも撫でてやれ。親が子にするようにな。それでダメなら物で釣れ」


 言われつつ、コテツとソフィアは見詰め合う。

 無表情同士が見つめあう様は、ある種異常とも言えた。

 そうして、無表情の片一方は、その手を上げて、もう一方の頭へと乗せたのだった。


「助かった。次も頼む」

「任せて欲しい」


 満足したらしいソフィアから手を離すと、その後コテツは背後に振り向き、そちらへと歩き出す。

 背後といえば、護衛対象であるもにか、そして、見学のエリナがいた。


「大丈夫か?」

「私は何もありませんわ」


 そう言って微笑みを返すモニカ。

 コテツは続いて、その横に控えていたエリナを見た。


「エリナは」

「は、はいっ、大丈夫です、お師匠さまっ」


 今回は見ているだけだったエリナだが、それも已む無し、いや、それでいいだろうとコテツは考えている。

 エリナが戦えるのは試合までだ。

 実戦においては素人。彼女が使うのは剣であるからして、竦んでしまった時の危険は銃の比ではない。

 実戦にいきなり投入するのは余裕のない時でいい。訓練を施していない兵士を出してろくなことにはならないだろう。

 エリナが戦いたいと望むのなら、少しずつ戦場の空気に慣らしていけばよい。


「では、移動するか。ソフィア、何かあったときは障壁を頼む」

「ん」


 侵入経路が掴めないため、襲撃のあった箇所に留まり続けるのは得策ではない。

 むしろ、できることなら相手が知らない場所に隠しておくのが安全なのだ。どこに居るのか知らなければ襲撃のしようもないのだから。

 伏兵は既に兵士達が確認し、安全だという判断が下されているため、動き出すことにためらいはなかった。


「ではこちらに」


 シャルロッテがモニカを先導し、歩き出す。

 そうして、その部屋から少し遠ざかった部屋に、一同は落ち着いた。


「しかし妙だな。やる気があるのか、それともないのか」


 その言葉に、コテツは考える素振りを見せる。

 思い浮かべるのはこれまでの襲撃だ。


「確かに、諦めずに向かって来てはいるが」

「自棄になって無駄に戦力を投入しているようにも思える」


 式典が近づくにつれ、襲撃は多くなっていた。

 これまでに三回の襲撃があり、その襲撃は全て阻止されている。

 しかし、それを護衛が優秀だからと言って自惚れて事実を見誤るわけにはいかない。


「ここまでされるほどの恨みでも買ったのか?」


 コテツの問いに、モニカはふるふると首を横に振った。


「……いえ、私自身はそのようなことは」


 確かにモニカは美しい。

 しかし、それ以外に取り柄もないのだ。

 それほどまでにモニカにこだわる理由とは何か。

 考えても分かることはなく、コテツはモニカを見た。


「しかし、気丈だな」

「私ですか?」


 ああ、と頷いたコテツに、モニカは微笑を返した。


「私は、お父様や兵士の皆さんの誇りでありたいのですから」


 だから泣いたり喚いたりする無様はしない、と彼女は言う。


「そうか」


 そんな彼女に、コテツは続けて言葉を向けた。


「だが、俺はこの国の人間でもなければ、君を誇りに思っている訳でもない」

「……えっと?」

「他の人間とてそうだ」


 そう言って、コテツは周囲に居る人間を見回した。

 シャルロッテ、エリナ、ソフィア。他には誰も居ない。ソムニウム組はある種一つの班として活用されている。

 そして、警備の人手が足りない以上、こういった面子で護衛に当たることもあるということだ。


「つまり、今この部屋に君の国の人間はいない」

「気を……、使ってくださってるのですか?」

「この環境が女子供に優しくはないということは理解しているつもりだ」

「そうですか……」

「おいそれと、他国の人間に弱みを見せられないことも理解してはいるが。護衛対象がパニックになって泣き叫ぶことは珍しいことではない」


 なにせ、護衛するのは心得のある人間でも、護衛されるのは戦闘に無縁な素人だったりすることが多い。

 特に軍人の将校の娘などは、平和な日常から突如銃声と死体と硝煙の中に放り込まれ、パニックを引き起こしやすい傾向にある。

 むしろ、パニックを引き起こさない方がおかしいというものだろう。


「じゃあ、あなたは護衛対象が泣いてしまったときはどうしているの?」

「特に何もしないが?」

「……ええ?」


 コテツの言葉に、モニカは微妙そうな表情を返した。

 何が気に食わないのかと、コテツは答えに付け加える。


「敵に居場所を悟られたくない場合は無理やり口を塞ぐか締め落とすことを考えるが」

「そうじゃない場合は、なにもしないのね?」

「ああ。ガス抜きというものは必要なのだろう? ケースバイケースに合わせられないんだからお前は邪魔をするんじゃないとよく同僚に言われたものだ」


 お前が関わるとこじれるから、とはよく言われた台詞だ。

 実際気の聞いた台詞も出てこないのだから否定のしようもない。


「真面目な人なのですね、今度のエトランジェ様は」

「そうか?」

「その方の言いつけをずっと守ってらっしゃるんでしょう?」

「進歩がないだけだ」

「ふふ、そうですか。でも、私は大丈夫ですわ。もしも泣きたくなってしまったら、あなたの胸を貸してくださいませ」

「善処しよう」


 と、話が纏まった辺りで、機を見ていたのだろう、シャルロッテがしかし、と声を上げる。


「奴らは一体どこから、という話だな」


 未だにどこから入ってきているのか掴めていない。

 如何に手薄とは言っても自由に好き勝手できるほど人数が居ないわけでもないのだ。

 ここまで自由にすり抜けてくるとなると違和感を感じざるを得ない。


「……地下通路から入ってきていると思うか? というかアレは報告しなくていいのか」


 シャルロッテが声を潜めて、コテツへと囁く。

 コテツも、低く小さな声で言葉を返した。


「わからん。だが、おいそれと報告するには嫌な予感がしすぎる」

「お前は地下通路で一体何を見たんだ?」

「女だ。ろくに会話もできなかったが。それと、SH」

「女? SH? それが一体なんの」

「推測するくらいしかできないが、圧倒的にきな臭くなってくれたのは確かだ」


 と、ふとそこで、コテツはモニカに視線を向けた。

 地下通路にまつわることを知るのは王族だけ、という知識が頭に浮かぶ。


「君は王族用の地下通路を知っているか?」

「はい、一通りは」

「できれば、教えてもらいたいのだが……」

「しかし、それは王族しか……」

「機密に属することは分かっているのだが。向こうがそれを活用している可能性がある」


 すると、モニカは表情を変えた。


「本当ですか?」

「ああ」

「口外しないと約束していただけますか? それと、エトランジェ様にだけお教えするという形で」

「構わない。こちらも無理を言っていることは分かっている」

「では、見取り図を持ってこさせますね」

「すまない、頼む」


 そう言ってコテツは、見取り図が来るのを待つことになったのだった。






遅くなって申し訳ありません。

現在更新されているのが83kb、今書き終わってるのが総計120kbほどで、後30も書けば終わりと言ったところでしょうか。現在は所々書き直しつつ進めております。

まあ、正にクライマックスです。この周辺は今回は特に気を使う羽目になってしまいました。しかも前後の編集が入りかねないので軽々しく更新するわけにも行かず。

こればっかりはしくじったら酷い惨状になってしまいますので、すみませんがもう少々お待ちを。

峠を越えたら連続更新で行きますので。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ