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異世界エース  作者: 兄二
13,Make fun
182/195

175話 純


「ふー、帰って来ちゃったねえ?」


 まったく残念そうには聞こえない声音でカーペンターは言った。


「そうだな。また潜るか?」

「それはちょーっとね。また中途半端になっちゃうから」


 グンゼは村に着くと礼を残し去って行った。彼も今日は坑道に潜るつもりはないだろう。


「かと言って宿に戻っても暇だし」


 カーペンターは腕を組み悩み始める。そして、しばらくすると彼女は笑顔になってコテツの腕を取った。


「よし! デートだ!!」

「何がよしだ」

「暇でしょ?」

「暇だな」

「待ち合わせする?」

「必要あるまい」

「デートにはちょっと色気がない格好だけどね! ごめんね?」


 カーペンターはツナギをしっかりと着込んだ状態だ。確かに色気で言えば全くない。

 悪びれない謝罪を、コテツは気にすることもなく返した。


「それで、どうするつもりだ」

「とりあえずぶらぶらしよー!」


 カーペンターが勢いよく進行方向を指さす中、コテツの肩にいたゴーレムが軽快に地面に降り立った。

 そして、まるで力瘤でも作るようなポーズで、腕を叩くジェスチャー。


「頑張ってこいということか?」


 首を縦に振るゴーレム。


「人間ができたゴーレムだね……!」


 そうして、ゴーレムは宿の方へと走っていく。

 果たして入れてもらえるのか分からなかったが、コテツは黙って見送った。


「では、案内を頼む」

「デートから案内になってる!」

「詳しいのだろう」


 不満げに、カーペンターは道を歩き始めた。

 改めて眺めれば非常に長閑な村である。

 悪く言えば栄えていないのだが。


「有名な鉱山ではないのか?」

「どしたの? いきなり」

「わざわざ君が宿を常に開けておく程なのだろう。いい鉱石が取れるのではないのか?」

「取れるよー。私の行ってる穴はね。普通のは、まあ、普通かな? 私の掘ってる穴も、採算が取れるのは私位だしねぇ……」

「エーポスだから、ということか」

「そゆこと。誇りある子は絶対やんないけどね、こーいうの」


 カーペンターならば、魔物の湧く洞窟内に護衛も付けずに入ることができる。

 そして、機材の類を苦労して持ち込まずとも現地で転送すればいい。

 掘り出した鉱石もその場でしまっていけばいいのだから、運び出す手間も極端に少ない。


「奥まで行くとね、SHが出せるくらい広くなってるんだよ。というか広くした! どーよ! 褒めてよ!」

「凄いな」


 どうやら、そこまでしているらしい。これで彼女は一人で奥に入ってクレイ・コンストラクターを出して鉱石を掘り、クレイ・コンストラクターも鉱石もしまい込んで悠々と出てくればいいわけだ。

 入り口から通路にかけてが人間の大きさで造られている以上、エーポスにしかできない芸当だ。

 通路もSH用に拡張するとなればいくらかかるだろうか。そして、それだけの費用をかけて、割に合う産出量を確約できるのか。

 と言ったところか。だから、あの坑道は実質カーペンター専用なのだろう。


「だいたい、考えてることで合ってると思うよ。ちなみにそっちでは何かいい方法ないの?」

「俺の世界で、か。俺の世界では、そうだな。分解した機材を中で組み立てることもあった」

「SHを中で組み立てることはこっちでもあるよ。それでも道の広さを確保しないと曲がったり下がったりがあるからねぇ……」

「こちらには作業に合わせたサイズのものがあったぞ。五メートル前後のものだ」

「なるほどね。こっちではなかなか造れないなぁ。ノエルのを解析させてもらえたらどうにかなるかな」

「造れないのか?」

「私が個人的に研究すれば……、ギリギリコックピットが収まるサイズでなら造れるかな。それ以下は完全に操縦系統が変わっちゃって無理」


 どうにも、この世界のSH開発には様々な制限があるようだ。


「そもそもSHを造ろう、と志したらば! どうしたらいいと思う?」

「……機械工学を専攻すればいいのか?」

「そっちじゃそうなのかもだけど。正解は、アーキタイプと呼ばれる機体の設計図を購入する、でした!」


 確かに、SHを造る全員が、専門の教育機関を出ているというのは考えにくいことだった。

 SHを造る工房、ないしは工場は各地に存在する。それこそ田舎の町工場規模でも存在するのだ。

 その全て専門的な教育を受けているとは、ここは考えにくい世界だ。


「あるエトランジェと一緒に頑張って初代の造ったアルトを解析して、エーポスなしでも動くようにした、基礎の基礎の機体の設計図と、OSが出回ってるんだね、これが。アーキタイプはもうマジでマイルド。アクがなくて、最低限で造られてる」


 そこで、妙だとコテツは感じた。

 確かにコテツの世界でも始祖となる機体は存在するが、だがそれは、のちの世にも影響するような機体だったろうか。

 断じて否だ。とっくに忘れ去られたような機体である。


「まずはこれを素直に組んでみるわけだ。出来上がったら二機目に行こう。今度はアレンジだね。腕の人工筋肉盛って、装甲もガシガシつけちゃおうか。さて、テスト起動しました。おおっと、ジェネレーターの出力が悪くて増やした筋肉がろくに動いてないし、自重に耐え切れず腕がポロリしちゃったぞー? っていうのがよくあるって言ったら驚く?」


 そもそも開発の経緯が違いすぎるのだ、と改めて思い知らされる。


「ちょ、もう乗らねぇかんな、絶対、って顔すんのやめて! 大丈夫! みんなわかってるからテストだけは念入りだよ!」

「随分、行き当たりばったりだな」

「そーなんです! 必要な計算式とかが足りてないんだね! だから、大体は経験と感覚でこれくらいなら動くとか、覚えてくしかないし、駆け出しはアーキタイプからあんまりかけ離れたものは造れない。アーキタイプとは違うものが造れる程腕がいいよ」

「ゼロから構築するのではなく、ある物を弄っていく、か」

「そゆこと。いい師匠を見つけられたらかなり近道できるけど。基本手探りなんだなぁ。これが一般的な機工士ってやつ」


 機工士。魔術師の中でSH分野に造詣が深い者だったか、とコテツは思い出す。


「アカデミーはね。ある程度計算を教えてくれるよ。で、計算系の研究もしてる」

「それを聞いて安心した。足りない強度は魔術で補強するとでも言い出すかと思ったぞ」

「あるよ」

「……あるのか」

「というかそっちの方がありがちなんだけど……。まあ、それはともかく。ほんとは計算系の研究が先だったんだ。というか、教える前に、教えるものがなかったから。とりあえず生徒にSH造らせて、まあ、失敗するよね、で、その設計図を提出させて、こういう条件で造ると自壊するとか、これなら大丈夫とかとにかくデータを蓄積して、そこから計算式を導き出す! で、分かった式は生徒に実践させてテスト。以下繰り返しね! その蓄積が今のアカデミーのカリキュラムになってるんだねぇ」


 そう、この世界では一から構築していくのではなく、既に答えが用意してあり、そこに辿り着く手順を考えることこそが主題と言えた。

 いつか、彼らは自らの手でアルトを作り出す日が来るのだろうか。少なくとも、自分が生きている間のことではないだろう、とコテツは思う。


「ところでさぁ」

「なんだ」

「デートで盛り上がる話題じゃないよねぇ」


 今更なことを、カーペンターは呟いた。


「知らん」

「こう言っちゃなんだけど、場所もデートに向かないなぁ……」


 さらに、失礼なことまで言ってくれた。

 確かに、どこまで歩いても長閑な風景しかないのだが。


「あ、アリアお姉ちゃんがデートしてる!」


 不意に、そんな声がかけられた。

 この村に来た当初であった、年端もいかぬ少女である。


「おおう! そうとも! 一応デートさ!」

「すごーい!」


 何がすごいのか分からないが、コテツは何も言わないことにした。

 子供とカーペンターのテンションについていくのはコテツには至難の業だろう。


「カレシさんは何してる人なの?」

「お城の兵士さんだよ! カレシさんじゃないけどね!」

「兵士さん? 強いの?」

「めちゃくちゃ! ちぎっては投げちぎっては投げのばっさばっさだよ! 騎士団長よりも強いよ!」

「すごい!!」


 きらきらとした目で見つめられ、コテツは反応に困った。


「……コテツだ」


 そして、困った末に吐き出したのが無愛想な自己紹介である。

 子供は苦手だ、と思いつつ逃げることも叶わない。

 だが、向こうは気にした様子もなかった。


「ミィです!」

「カーペンターです!」


 名乗りながら少女は手を挙げ、何故かそれに続いてカーペンターも手を挙げる。


「……君は知っている」


 冷静な呟きは、あっさりと無視された。


「ねえねえ、お姉ちゃんってエーポスなんでしょ? じゃあ、カレシさんはお姉ちゃんとアルトに乗って敵をばっさばっさするんだ!」


 期待の声に、カーペンターは困ったように笑う。


「あはは、それはないかなぁ。私のアルトは戦闘用じゃないからねぇ」

「えー? アルトってすごいんでしょ? いつも言ってたじゃん!」

「うーん、お姉ちゃんの、お姉ちゃんか、妹のは凄いんだけどねお姉ちゃんのアルトは、手先が器用なだけなんだ」

「ダメだよ! そんなんじゃ取られちゃうよ!」

「ははー、困っちゃうね」


 今度は気の抜けた顔で彼女は笑った。


「うーん……。あ! デートの邪魔しちゃった! 馬に蹴られて死んじゃう! じゃあ、後は若いお二人で!」

「ばいばい」


 手を振り駆けていくミィと名乗った少女に、カーペンターが手を振り返す。それに習ってコテツも無表情のまま手を振った。


「お互い、若くはないのだがな」

「そこ言っちゃう!?」









(ある意味、気楽でいい旅だな)


 夜、井戸から桶に水を汲み、コテツは心中で呟いた。

 考えるのは、カーペンターという女性のことだ。

 少し悪乗りが過ぎるが、明るく気さくな性格は、好印象だ。

 特にどこがと言えば、


(勝手に一人で話してくれるのは助かる)


 概ねそういうことである。

 口下手なコテツにとっては、その方がカーペンターという女性は非常に楽な相手だ。

 水を汲み終わり、コテツは桶を持って宿へと戻る。

 木造の階段を上って、コテツはカーペンターの待つ部屋のドアノブに手をかけた。


「え、ちょ、ま」


 中から慌てた声が聞こえてきたのは、既に手遅れとなった後だった。

 ドアを開けたその先にいたのは、一糸纏わぬカーペンターの姿。

 美女揃いの今まで見て来たエーポスの中でも特に、女性らしい、豊かな体つきをしている。

 確か、昨日は着替えるから外に出ていてくれと言われたはずだ。

 今日は、変に気を遣ってくれたらしい。コテツが水を汲みに行った間に済ませてしまおうと思ったのだろうが、脱ぎ切ったばかりということは、何か手間取ることでもあったのか、それともコテツが早すぎたのか。


「すまない」


 そんなようなことを冷静に考えて、コテツはとりあえず退散すべきだということに思い当たる。


(彼女のことだ。またからかわれてしまいそうだな)


 それとは関係なしに、まじまじと見つめるものでもないだろう、とコテツが動きかけたその瞬間。


「にゃああああああああっ!!」


 ごっ、という鈍い音。

 コテツの顔面に、拳が突き刺さった。

 少々、予想外の反応である。だが、女性としては当然の反応でもあった。

 顔面に拳が突き刺さったまま、コテツは微動だにせず言う。


「すまん」


 桶の水がこぼれていないのはさすがとしか言いようがない。


「着替えが済んだら、呼んでくれ」


 回れ右して即座に退出。扉を閉め、コテツは桶を持ったまま廊下で待つ。


(らしくもない、というのは失礼か。女性ならば当然の反応だな。……そうだな、当然だ)


 ほどなくして、扉の向こうから声が聞こえて来た。


「もう大丈夫」

「了解」


 再度、入室。

 しっかりと着替え、ベッドに座ったカーペンターがそこにいた。

 そもそもがキャミソールにホットパンツという、露出の多い格好なのだが。


「先ほどはすまなかった」


 桶を置いて、コテツはカーペンターを見つめた。


「あはは、き、気にしないで。 それより、こっちこそごめんね? 痛くなかった? 怪我してない?」

「問題ない。君の方こそ、殴った指は大丈夫か。桶を持っていたせいで真っ向から受け止めてしまった」

「大丈夫だよ。それよりさ……、見た?」


 見たのか、という言葉が何を指すのかは、さすがにコテツでも分かる。


「見た」


 簡潔に事実だけを伝えた。

 そもそも見てないという答えは通用しないだろう。


「あ、あはは! そっか、そうだよね、見たよね! どうだった? お姉さんも捨てたもんじゃないでしょ?」


 快活に笑うカーペンター。

 やはり彼女らしいとコテツは心中で胸をなでおろした。

 彼女の顔が、耳まで真っ赤だった件については、特に気づかぬまま。










 対するカーペンターは、酷く焦っていた。


(み、見られた! は、はは、ハダカ、見られ――!)


 これまで、余裕ぶった態度でコテツに接してきたカーペンターであるが、実は生まれてこの方、恋人もできたことがない生娘中の生娘である。


(ど、どど、どうすれば……! どうすればいいのコレ!)


 アカデミーの人口はどちらかと言えば男性が多いのだが、SH研究の第一人者であり、エーポスであることの権威はいささかありすぎた。

 彼らにとってカーペンターは、自分では及びもつかない所にいる先生なのだ。

 そして、エーポスの中でも年長の枠にいる彼女は、妹たちに年上らしく接して来た。

 無論、異性関係においても、である。

 そして、拗らせた結果が、これだ。


(と、とりあえずいつも通り、いつも通りに……!)


 自分に言い聞かせ、ぐるぐると回る視界の中、無理に明るい声を上げた。


「興奮したかなっ? まったくコテツさんがむっつりだったなんて……、言ってくれれば、見せてあげたのにねっ」


 ところどころ声が裏返ったが、何とか言い切った。

 コテツからの返事はない。


(な、何か言ってよ!)


 カーペンターはその時知る由もないのだが、コテツは返事に困っていた。

 特に何も、と言えば女性としての誇りを傷つけるのではないかと気を回していたのだが、そもそも答えに詰まる時点で手遅れということにまでは気が付いていないようだ。


「……まあまあ、か?」


 まあまあってなんだ、だとか、なぜ疑問系なんだ、とか問うべきことはいろいろあったが、動転したカーペンターは行き当たらなかった。


(こ、興奮したの!?)


 これまで妹たちの攻勢を受け流してきた彼も男だったという事だ。

 問題は、相手が自分と言うことである。


「そ、そっか! 仕方ないね、じゃ、じゃあ」


 そのとき、彼女の混乱は頂点に達していた。


(待って! まさか、今、ここで!? 色々段階が跳んでない!? は、はは初めてだし! ゆっくり湯浴みもしてないし! も、もっと段階を踏んで――!)


 思わず彼女の口をついて出た言葉は、彼女すらよくわかっていなかった。


「つつつ、付き合おっか!」

「……何?」

「ま、まずは恋人から、ね!?」


 何が恋人から、なのか。

 その時点で色々手順が間違っているのだが、今のカーペンターにはどうでもよかった。


「見たんだよね! 裸を見るってことは少なくとも恋人以上ってことだよね! ということはまずは、つ、付き合わないと」

「落ち着いてくれ。君は動転している。考え直せ」


 コテツが冷静な分、逆にカーペンターは動転を加速させた。


「それでね、デートしてね、夜景の見えるとこでキスしてからね、それから……」


 まくし立てるカーペンターの肩をコテツが掴む。


「落ち着いてくれ。君は冷静ではない」


 落ち着かせるために肩を掴み、視線を合わせて声をかけたコテツだが。


「か、かか肩、掴まれっ……! 顔、近っ……。キス、され……!」


 びくんと肩を飛び跳ねさせ、大きくのけぞるカーペンター。


「キス、されたら次は……、け、結婚っ、結婚しなきゃ……!」


 大きくカーペンターがのけぞったため、カーペンターはコテツに押し倒されるような格好で、ベッドに背を着いた。


「なぜ結婚に行き着く。頼むから落ち着いてくれ」


 心臓が飛び跳ねる。


「し、しんこきゅー、しんこきゅーしないと……」

「カーペンター」

「ひゃいっ!?」


 真剣な顔で、コテツが覗き込む。


「あ、あああ……!」


 いよいよ耐え切れなくなったカーペンターは。


「ッ!!」


 目を瞑り、頭を跳ねあげて、口づけを敢行した。

 柔らかい感触は一瞬。

 勢い余ったカーペンターは、前歯ごとかち当たり、更に勢い余りすぎて、額同士激突し、彼女は気絶したのだった。




こないだ、何故コテツの世界でDFが主流足り得たのかという質問を頂いたので自分用メモですが、貼っときます。

でもやっぱり人型機動兵器ってどう考えても実用性は……。

という感じなので少なからず穴が空いてます。

足りない根拠はロマンでカバー……、ダメですか。


1,通常兵器の性能が頭打ちに。

2,オーバーテクノロジーとすら呼べる、極めて高性能な人工筋肉が開発される。兵器転用への期待が集中。

3,四足戦車等の開発が行われるも、人間が乗って操縦する、ということへの限界が発生。レバーを使っての操縦では人工筋肉の動作の柔軟性や瞬発力、追従性、反応性を発揮しきれないことが発覚。

4,操縦の自動化など、人工筋肉の活用の研究が盛んになる。

5,そんな中登場した操縦方式の一つ、思考制御の有用性が認められる。

6,研究の結果、人工筋肉は一定の量から急激に出力が伸びることが発覚。兵器を大型化させた方が人工筋肉のスペックを引き出せるという結論に。

7,思考制御により柔軟で繊細、それでいて力強い操縦が可能になるも、人体から外れたものを動かすと、心身に悪影響が見られた。

8,人工筋肉を最大限活かすための思考制御、そしてその思考制御を行うためには人型であることが必須。

9,人工筋肉をコストと性能、もっともバランスよくパフォーマンスを発揮できるのが18mサイズ。

10,18mの人型兵器が完成。



最初のDFは局地戦闘用。戦闘により、激しく隆起した大地をあの手この手で乗り越えるための兵器であり、人工筋肉による柔軟で繊細な動き、思考制御による器用さによってさまざまな作業をこなしつつ跳躍、ぶら下がりなどを駆使して進軍。

テスト用にロールアウトされた3機は想定通りの戦果を挙げる。

重要なのはそこからで、初投入の後、帰還時に敵軍の奇襲を受けた所、弾切れとなっていた一機が敵中に突撃。

左右に小刻みに跳躍しながらの接近は強い思考制御により非常に高いレベルでのパフォーマンスを発揮し、戦車の照準を振り切り、敵中に突入。

18mの鉄の巨人が戦車を殴る蹴る等の原始的な攻撃で破壊し、子供の玩具の様に掴んで振り回す姿は恐怖を与え、それを含め友軍の援護により敵部隊を撤退に追い込む。

こちらは想定外の戦果であり、人工筋肉を効果的に運用するのであれば、思考制御が最も高いパフォーマンスを示すことも発覚。限定的な色物兵器としての登場だったが、ある程度の有用性が認められる。

以降開発が続けられ、エース機の登場などもあり戦場の主役となっていった。


ぶっちゃけると最初のDFの性能が思ったより良かった結果。

最初のDFを造ったロボットを愛する偏執狂的天才科学者がいなかったら四足戦車が戦場にはびこっていた可能性が。



ポイントとしては、思考制御が使えるのが最大の焦点。

とにかく思考制御ありきなため、人型に近いことが求められる。


DFのポイント

・操縦がとにかく柔軟で繊細に対応できる。

・直感、反射に即座に対応できる。

・パイロットの歩兵としての訓練がある程度反映される。

・操縦を覚えるのがそこそこ楽。細かいところは思考制御でカバーしてくれるため。

・思考制御による人工筋肉の制御が最も高いパフォーマンスを発揮する。

・その高いパフォーマンスで走ると戦車より早い。

・人工筋肉のパフォーマンスを考えると18m位がいい感じ。前方投影面積? 性能で避けろ。

・思考制御はレバーなどと合わせたバイナリ方式でないと危ない。


四足戦車

・完全自律型は以前重大事故を起こしたため、規制が激しい。

・なので、ほぼ機械任せの操縦で、人が一人乗せられているだけの戦車が開発される。

・ほとんどAI任せなので操縦が楽。

・コストが安い。

・ただし小さいので人工筋肉のパフォーマンスがあまり期待できない。

・人が乗ってるより動きが単調。

・飛んだり跳ねたり走破性が向上。

・人工筋肉の出力が安定しすぎている。

・そこそこ強い。



ちなみに、SHの技術が生活レベルに転用されないのは。

・解析があまり進んでない。

・工場などがなく、部品製作を魔術師に頼るため、大量生産、普及に問題がある。

・脳筋が多くてSHの性能強化に興味があっても、解析とか応用とか細かいところに興味がある人材が少ない。

・研究、開発分野も人工筋肉盛れば良くね? とか、装甲厚くしようぜとかが主流。

・上手くいかない部分を魔術的アプローチで解決しようとするため技術力が上がらない。機体が重い? 軽量化の魔術だ!

・そもそも生活の不便を魔術でクリアしたがる。そっちの方が親しみが強いため。


要するに魔術という便利なものがあるために、問題を先送りに。

SHの強化開発も、いいエンジンを積むとか良い装甲に変えるとか、人工筋肉を盛れとか、分かりやすいそういうところに目が行きがち。

いきなり降ってわいた技術なので製鉄技術だとか、産業革命だとか、そういう下地の時点で追いついていない。

まだ算数やってるのに複雑な数式が解説付きでやってきた感じ。


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