表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界エース  作者: 兄二
12,Under The Moonlight
164/195

157話 無情



 四日目の昼。


「ふむ……」


 コテツは、考え事をしながら街を歩いていた。


「ご主人様、アンニュイですねぇ」


 隣を歩くあざみが見上げるも黙殺し、コテツは考え事を続ける。


(不可解だな。彼女に似た知り合いは、いただろうか。俺は、彼女のような人間を、よく知っている気がする)


 考えるのは、吸血鬼のことだった。


「ご主人様ー、何をそんなに悩んでるんですか?」

「む、ああ。今、気になる女性がいる」


 コテツがそう呟いた瞬間、あざみが尻餅を突いた。


「おい、大丈夫か」


 この世の終わりのような顔をして、彼女はコテツを見上げる。


「ご、ごごご、ご主人様に気になる女性……!?」

「ああ、そうだ。会ったばかりなのだが、妙に引っかかる」

「ここここ、恋ですか!?」

「それは既に否定されている」

「んー……?」


 不可解そうにあざみは立ち上がった。


「酷く気になるのだが、理由がわからん。知り合いに似た人間でもいたのかと思ったが、思い当たらん」

「妹に似てるから放っておけねぇんだよ的なアレですか。一目惚れじゃないなら……、何でしょうね」

「わからん。が、なんとなく話が合う」


 再び二人が歩き出すと、不意にコテツは道を曲がり、ある店の中へと入っていく。


(そもそも俺は彼女をどうしたいんだ。牢から出したいのか。彼女はそれを望んでいないが……)


 今一つ、煮え切らない。


「さっきから雑貨屋、骨董屋とまわってますけど何か欲しい物でも?」

「少しな。青空の描かれた何かがあればいいのだが」

「空ですか? どうしたんですいったい」

「大したことではない」







「最近このあたりを嗅ぎまわっているようだな」

「だとしたらどうする」


 夜、街を歩くコテツの背に声がかかる。

 ずいぶんと人相の悪い三人組だ。


「なぁに、大したことはしないさ。せいぜいちょっとした忠告程度。ほんのさわりだけ」


 舌なめずりをして、楽しげに男が言った。


「これ以上やるとどうなっ……」


 言葉は途中で途切れ、語尾が跳ね上がった。


「随分とお優しい事だな」


 コテツの拳が、男の頬に突き刺さっていた。

 そのまま吹き飛びそうになるところを、コテツは首を鷲掴みにして止める。


「う、うわっ! 止めろっ」


 別の、痩せぎすの男が動揺して放った銃弾を、コテツは掴んだ男を盾にして止めた。

 小口径の安物だろう。銃弾は貫通せずに男の体で止まる。

 コテツはそのまま男を放り投げ、痩せぎすの男は衝突しもつれ合うように地を滑る。

 すると、背後から最後の一人である大男が剣を引き抜き振り下ろしてくる。

 コテツはそれを半身になって回避した。

 だが、男はそこから更に逆袈裟に剣を振り抜く。

 コテツが後ろに下がれば、剣先が鼻先を掠めて行く。

 そして下がったコテツへと一歩の踏み込み。

 足を狙った横薙が迫った。


「そこだっ!」


 裂帛の気合いを持って放たれた一撃はしかし。


「ふむ……」


 コテツが剣を踏みつける事によって止められた。

 剣が地面と噛み合いいくらかの砂利を巻き上げ力をなくす。

 足で剣を押さえられ、剣を離すか力尽くで引き抜くか、逡巡は一瞬だったがもう遅い。

 まるで剣を駆け上がるかのように地を蹴ったコテツが、大男の顔面へと拳を突き入れる。

 突き刺さった拳に思わずのけぞり、一歩、二歩と男が後退する。

 どうにか破れかぶれで剣を振り下ろそうとしたときには、コテツは既に懐に飛び込んでおり、振り下ろされつつある剣の柄尻を蹴り上げていた。

 剣が弾き飛ばされ舞い上がる中、それでも尚、男が拳を振るう。

 その延びきった腕をコテツはつかみ取っていた。

 腕の下に滑り込むようにして、背負い投げ。


「う、わ……」


 消え入りそうな驚きの声とともに、男が反転したその瞬間。

 コテツがその無防備な腹に拳を突き入れた。

 声もなく、男が地を転がる。


「終わったぞ」

「そですか。思ったより大したことなかったですね」


 暗がりからぬっとあざみが抜け出してくる。


「ああ、では話を聞くとしようか」 

「はい、起きてくださーい」


 ちかちかと、一番最初に倒した男の目の前に当てたあざみの手元が一定間隔で光る。


「ここは……、うぐっ」


 男が目を覚まし、撃たれた腹を押さえる。


「気分はどうだ。君は腹を撃たれている。内臓は大丈夫なようだが、治療しなければ死ぬ」

「治療を受けなきゃってお前っ、がぁああっ!」


 身を起こそうとした男の腹の傷口を足で踏みつけてコテツはその動きを制した。


「さて、それを念頭に聞いてもらおう。君達のトップは誰だ」

「しっ、知らないっ!」


 瞬間、ぎりとコテツの足に力が篭もる。


「ぎゃああっ! まて、待ってくれ! 教える」


 くの字になって痛みを堪える男が、喚き立てる。


「よし、言え」

「ま、待ってくれ、足を、足をせめて……」

「早くしろ」

「があああっ! 俺は知らない! いつもフードの男が命令を伝えるだけなんだ!そいつなら何か知ってるかも知れない!」

「どこにいる?」

「知らないっ、本当だ! いつだって向こう主導で俺たちからはどうしようもない!!」

「なるほど。大体わかった。そうだな、では……」


 不意にコテツが足の力を緩めた。


「君たちを俺が雇おう」

「な、何を言って……」


 男がおびえたような声を上げる。


「仕事は簡単だ。フードの男とやらを尾行してくれればいい」

「そんなのっ……」

「報酬は出そう。まずは治療と、一人金貨三枚。足りなければ、言い値を払おう」


 言い値を出す、そこの言葉が出た瞬間、苦悶に喜悦がにじみかけるが、すぐに凍り付くこととなる。

 コテツは、男の顔を覗き込むと、暗くて見えない表情でこう言った。


「現物支給だ。拳は、何発欲しい」

原稿の修正が終わりました。これで大分書籍化の大きい作業は終わった……、んでしょうかね。


さて、今回の公開情報はアインスです。

挿絵(By みてみん)

なんだかんだ言って影の主人公機(弱)と言えなくもないアインスは愛着があったりなかったり。

ダメな子ほどかわいいというかジムとかかわいいという感じのアレ。


ちなみに、巻末ページにメカデザインと設定が付くらしいですよ。

装甲材質とかジェネレータの名前とかデザイナーがどうとか永遠に日の目を見ない設定だと思ってましたが果たして需要はあるのか。

まあ……、メカデザインの横に箇条書きでスペックが載ってると彩り的な意味でワクワクしますよね。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ