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異世界エース  作者: 兄二
11,Show Down
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148話 My Life

 また、夢を見ている。

 昔の自分が、自分を見つめている。

 何が言いたいのだろうか。

 恨みがましく、ただ、見つめている。

 前回と、同じだ。

 目の前に立つ、小さい頃の自分。

 前回と何も変わらない。


「……ふむ」


 変わったのは、


「そうだな。その視線も、分からないでもない」


 今のコテツの方だった。


「君はこれから、数え切れない間違いを犯すだろう」


 コテツは呟く。


「正解の道はどうせ辿れん。もう、間違いながら進む他にない」


 子供時代の自分へと。


「その先ずっと五里霧中の人生だ。先は見えない。足元もおぼつかない」


 そう呟きながら、コテツは薄く笑った。


「――だが、問題ない」


 目を閉じて、思い浮かべる。


「未だに尚、俺は一人ではない」


 今、共にいる仲間達を。


「慕ってくれる物好きもいる」


 元の世界でだって、ターニャはずっと傍にいた。


「中々どうして、悪くない」


 胸を張って、そう言える。


「安心しろ。君はちゃんと幸せ者だ」


 そう、口にしたその時、目の前の少年が笑った気がして――。

 目が覚めた。上体を起こし、人の気配を感じて辺りを見回す。


「あら、おはようございますご主人様」

「……何故部屋にいる」


 柔らかな光が差し込む部屋。

 激しい戦闘があったとは思えない長閑さだった。

 あの戦闘から、一週間が経つ。


「いやですねぇ、野暮ですよ、そいつは」


 だが、城下には戦闘の傷跡がいくつも残っている。

 死傷者も、決して少なくはなかった。


(これではアマルベルガよりも結果的に犠牲が少ないというのも、怪しい話だ)


 実際の所、どうなのかコテツには分からない。

 アマルベルガのやり方は時間が掛かるというのには同意するが、どれほどの時間と犠牲を要するかまでは予想できない。

 だが、例えなんであろうとコテツのすることが変わらないのも事実だ。

 コテツは、窓の向こうに向けていた視線を、ふとあざみへと向けた。


「どうしました? 見とれちゃいました?」


 じっと見つめるコテツに、あざみはポーズを取って問う。


「いや、君も変わったと思ってな」

「へ? 変わりました? いやぁ、自分じゃ分からないものですけどねぇ。綺麗になったな、とかですか?」


 確かに分からないものだ、と身に覚えのありすぎる言葉に、コテツは少しの間目を閉じた。


「会うたび嫌味を吐いてきた君が、今ではな」

「ちょ、ま」


 呟いた言葉に、慌てたのはあざみだった。


「あ、アレは黒歴史ですから忘れてください! むしろアレですから、過去に戻ってやり直せるならやり直しますよ! そりゃもう、生きる目的を失ったご主人様に優しく包み込むように接したいです! それで、甘えて来てもらって、あわよくばちょっぴり依存してくれちゃったりなんかしちゃったり!」

「別に、やり直す必要はないと思うがな」

「えー? ご主人様にだってやり直したいこと、あるんじゃないですか? ありますよね?」

「確かに、選択を間違えたと言える場面は何度もあるだろうな」


 その答えに満足したように、あざみは笑った。


「ですよねー。やー、失敗しました」

「だが、やり直す訳にも行くまい」

「えー? そうですか?」


 どこでやり直せばいいのだろうか。

 軍に入る時だろうか。それとも、もっと前か。


「君との出会いも含め、何もかも、なかったことにはできんだろう」

「……えー、あー、……照れます」


 あざみがそっぽを向き、コテツはベッドを降りて着替えを始める。


「……変わりましたね、ご主人様」

「君がそう言うなら、そうなのだろう」

「変わりましたよ。初めてあった時より、素敵になりました」


 襟を閉めて、着替えを終える。


「そうか。さて、では行くか」

「そーですねぇ。いきましょう」


 扉を開けて、コテツは歩き出した。












「コテツ」


 戴冠式が、行なわれる。

 あんなことがあった後だが。いや、あんなことがあったからこそ、アマルベルガは健在であり、テロリストなどものの数ではないと対外的に知らしめる必要があった。

 赤い絨毯の上。コテツとアマルベルガが、向かい合っている。


「私は、これから女王になるわ。今までよりは、ずっとできることも増える」

「そうなのだろうな」

「正直、彼らに関してはどうなるか分からないわ。撃退はしたけど、指導者を失って空中分解するのか、それとも新たな頭を得てまた、仕掛けて来るのか」


 過度な期待はできない。王を取れば終わり、などというゲームとは違う。

 最悪の場合、一人残らず根絶やしにするまで、終わらないかもしれない。

 敵の規模はあれで全滅とは思えないし、魔物を操る装置がある限り、兵力は無限と言えなくもない。


「過信は禁物でしょうね。多分、また来るでしょう。それに、国内の情勢も完璧じゃない。きっとあなたに、戦ってもらうことになる」


 コテツの手には、王冠がある。

 異世界の者、つまりこの世ならざる者から冠を受ける。

 それは、この世界の宗教における教皇から冠を受けるよりも特別な意味がある。


「もう、いいの? なんて聞かないわ。だから、私と一緒に戦って?」


 アマルベルガが、微笑む。


「そして、私と一緒に、生き方を探しましょ?」


 もう、迷いもない。


「問題ない。任せておけ」


 今は、この国を守ることが、コテツのしたいことだ。

 その役目を終える前に、何か見つかればいいと、コテツは思う。


「よろしく頼む」


 多くの見守る中、コテツはアマルベルガへと王冠をかぶせた――。




これにてストック放流完了です。

一月近く、お付き合い頂いた方、一月分一気読みした方、お疲れ様でした。

終わらないあまりに展開を急ぎすぎたり、

久々だったからとかそういう言い訳の効かないレベルでアレだった部分もあって申し訳ないです。

でもやりたいことはやらかしたのでその辺に関してはとりあえず満足です。

アルもシャルロッテもここぞとばかりに活躍しましたし。


ルイスがどうなったのかとか、捻じ込む隙がなかったので、その辺はインターラプトでエピローグ延長戦やりたいと思います。

ということで、できるだけインターラプトくらいはサクッと出したいなと思っています。


ちなみに、12に関しては、

まさかのカーペンター編

エリナ決意編

何故に新キャラ・吸血鬼(ロリババァ)編のどれかです。

できれば近いうちにお会いしましょう。

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