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異世界エース  作者: 兄二
11,Show Down
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147話 終結






「終わったようですな」


 水滴の降り注いだ空を見上げて、漆黒の機体に乗ったフリードが呟く。

 敵のトップが大きな光を伴い、爆発し姿を消してから、敵が散り散りに撤退を試みるようになり、ワイバーンが墜ちた頃には、戦意の残った敵はいなくなっていた。

 味方の事後処理も、概ね終わったようである。


『そのようですね! フリード殿! あなたのおかげでもあります!!』


 現場は死屍累々、あるいはスクラップ集積場と言ったところか。

 地に突き立てていた無骨で大きな剣を引き抜くと、フリードは機体を歩かせた。


「なんの。こんな老骨一匹おらずとも、どうにでもなったでしょうよ」

『しかし、敵の精鋭をこんなにも一人で片付けておいて……』


 確かに、敵でも名だたる数人がいたようだが。


「エトランジェ殿は私の百倍は強いのですからね」


 自分一人であの戦況を覆すことはできないだろう。

 そう言って、老人は紳士的に微笑んだ。


『それは、とても安心ですね!』

「はっはっは、そうでしょうとも。まぁ、攻めに出る若者たちの家を守るのがこの老体の仕事、ということで」


 そうやって笑うフリードがちらりと城の方を見ると、向こうもある程度落ち着いたようだ。


「メイド長に仕込まれたというのは伊達ではないようですなぁ」


 城内に入り込んだ敵の排除に当たったのは、騎士だけでないようだった。


「うちのメイドは元気なようで何より」


 戦闘の途中にちらりと気にしてみれば、スカートを翻しとび蹴りを放ったり、肘で殴ったり、割とやりたい放題だったようである。

 リーゼロッテ、シャロン、メイド長の計三人は集まって城の中庭に立っている。


「おや、エーポスたちも帰って来たようで」


 なぜか、ノエルとソフィアは、ルイスを伴って帰ってきた。


『中々、強いのですね』

『王女としての嗜みですわ、うふふ』

『時折、くたばれ、とか死に腐れとか聞こえてきた』

『た、嗜みですわ、うふふふふ』


 機体が拾った音声が耳に届いた。

 そういえば、白い手袋が所血に染まっている気がする。


「さて、主役も帰ってきたようですな」


 三人の女性から目を離して、呟くと、今度はシャルロッテ、アルベールが城に辿り着く。

 そして、ディステルガイストが、城の前へと降り立った。

 操縦席から降りて、地面に立つコテツ。


「まだ完全に安全が確保されたとは言えないのですが……、これだけの護衛がいれば、まぁ、いいでしょうな」


 そして、それを見てか、シャルロッテもまたアマルベルガを抱え上げて地面に降りると、アマルベルガは自分の足で走り出し。


「これにて一件落着。というところですかな?」


 彼女はコテツへと飛びつくように、抱きついた。















 どこか遠くの地下格納庫。

 とてつもない轟音を立ててそれは現れた。


「な、なんだ!!」


 どうよく見ても、不時着。

 現れたのは、手足、そして頭をもがれた人型だったはずの巨人。


「スティグマダイバーが……。失敗したのか……」


 研究員や、整備員などが、次々と駆け寄っていく。

 目まぐるしく変わっていく戦況は、本拠にも伝わっていた。

 内部はコテツ・モチヅキによって堰き止められ、そして、外に控えていた本隊もまた、たった一機のSHによって潰走させられたという。

 コテツ並みの化け物が、もう一人いたということだ。

 そして、ルードヴィヒの帰還。


「そんなことより、ルードヴィヒ様の生死は!!」

「応答ありません!!」

「急げ、研究室に運ぶんだ!」


 格納庫内が大騒ぎになり、大急ぎで起動させたSH二機がスティグマダイバーを運んでいく。

 研究室に担ぎ込まれたスティグマダイバーを見届け、研究員は人間用の入口から研究室に駆け込んだ。

 研究室は、二部屋に分かれており、ガラスを隔てた向こう側にスティグマダイバーがいる。

 研究員は、マイクを使って、中へと語りかける。


「これは酷い……。コクピットハッチを開けてルードヴィヒ様を救助しろ!」


 爆発によって、あちこちが焦げつき、見る影もない。

 だが、これは自動保全システムが正常に働いた結果でもある。

 スティグマダイバーは、機体自身に一定以上の致命的なダメージを受けた場合、強制的に空間転移を行なうようになっている。

 前の戦争時はその転移先を指定しなかったようだ。確かに、基地などに呼び戻して修理を行なったとしても、どうせその時には戦争に負けている。捜査が入って無理矢理取り上げられるのがオチだ。

 ならば、ランダムに転移させた方が、手の届かない所に逃がすことができる。そう踏んだのだろう。

 設定操作をしたときのログなどから居場所を知られない一番の方法は、そもそも設定しないことだ。

 そして、自分すら知らないところに行ってしまえば、どんな拷問も意味を成さない。

 とはいえ、後々回収するために数年後にビーコンが発信される設定にはなっていたようだ。

 ただし、その強制転移は想定を大きく超えて、世界すらも跳んでしまったようだが。


「いいか、不用意に長居するなよ? どうなっても保証できない」


 研究室は、特殊な技術で時間を安定化させてはいるが、コクピットまで入ってしまうと保証が効かない。


『っ、ダメです……! 生存、確認できません……!』

「……そうか」


 強制転移のエネルギーに巻き込まれて、普通生きていられる訳がない。

 半分、予測できていたことだ。


「だが、仕方ない。最終手段を使う。遺体を第一研究室に移せ」

『了解』


 遺体が運ばれていくのを見届け、研究員は横たわるスティグマダイバーを見つめた。


「我々の指導者を失う訳には、行かない。スティグマダイバーもだ。ジェネレーターは無事なはず」


 実を言えば、スティグマダイバーのジェネレーターを破壊するのは容易ならざることだ。

 極秘中の極秘だが、スティグマダイバーのジェネレーターは特殊な技術で守られている。

 見掛け上厚さ1ミリもないその表面には、途方もない空間がある。

 それは、内側に広がり続ける宇宙のようなものだ。

 あらゆる武装はそこに届くことなく、不可侵を保つ。

 いわば、強制転移は、奪われるのを防ぐためのもの。

 ジェネレーターを覆う空間は、破壊を防ぐためのものだ。

 そして、ジェネレーターさえあれば、スティグマダイバーは修理できる。


「次は、空間以外も完全に取り戻す。時だ。時を操る能力すら……!」


 研究員は、スティグマダイバー修理のために動き始めるのだった。






あとはエピローグで11終了です。


ターニャの戦闘はここで開示するのがなんとなくもったいないので持ち越しで。

ルードヴィヒに明日はあるのか。

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