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異世界エース  作者: 兄二
09,空棘
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99話 掌



「ねーぇ、なかなか、見つかんないねぇ」

「そうだな」

「そろそろ、諦めたら? 一旦帰って、作戦、練り直すのもいいかもよ?」


 半分本心から、シャロンは口にした。

 事が始まるまで、帰っていてくれないだろうかと。


「それはできんな。もうしばらくは」


 答えは、半分判っていた。

 それを言ったのは初めてではなかったから。

 調査はそこらを適当に探しているように見えて、着実に進んでいる。

 聞き込み、現地調査を繰り返し、武器を保管できるようなめぼしい建物はほぼ調査を終了した。

 シャロンが言うのもなんだが、どうして見つからないのか不思議なくらいだ。

 そして領主と亜人街の長の協力も大きい。

 監視の目が強くなったと共犯者が言っていた。下手に動けば捕捉されるとも。

 調査の初動としては十二分な働きをしたと言えるだろう。

 だが、彼は戻る気はないらしい。


「もう、心当たりもないよ?」

「それでもだな」


 これまで殺してみようかと思ったタイミングは何度かあった。

 しかし、全てが実行に移されなかったのは、隙があるかなんてシャロンにはわからず、最初の襲撃の時のことを思い出してしまうからだ。

 襲い掛かった瞬間コテツは振り向いてシャロンの腕を掴んでそのまま……、という想像が容易にできるのだ。


(そもそも、あたし別に暗殺者って訳でもないし。半分素人だもん。隙なんてわからないって)


 しかし、今となってはそれだけ、とも言えないだろう。


(ダメっぽいけど、悪い人じゃないんだよねぇ……)


 ご立派な人間とはとても言えないコテツである。だが、こちらから手を出さなければ日がな一日ぼうっとしていそうな気もする。

 猫を踏めば引っ掻かれる、藪を突けば蛇が出る。それが道理というものだ。

 寝ている獣の尻尾を踏みに行くことはない、とシャロンは思う。

 そんなコテツは今、街の露天商となんらかの会話をしている。

 こういう時、露天商は道行く人々を見ているため聞き込みの際に意外と情報を知っているのだ、とついこの間シャロンは知った。

 街の現状がこんなものであるため、売り上げは減っているし、露天自体も少なくなっているらしいが。

 そんな露天との会話を終え、コテツが戻ってくる。


「どーだった?」

「これといったものはなかった」

「そか。じゃ、次いこ」

「ああ」


 再び歩き始める二人。

 そんな中、コテツがちらりとシャロンの方を見る。


「シャロン」

「なぁに?」


 徐にコテツは手をシャロンへと差し出した。


「要るか?」

「んんー?」


 差し出された手の中にあるのは、ネックレスだった。


「ナニコレ? どしたの?」

「露天で買うことになってな」


 というのは、所謂情報料という奴だろう。

 露天商なんかに何かを聞きだすにあたっては、なにかそこの商品を買えば口の滑りがよくなる。

 何か買うまで何も答えてくれない相手だっているし、快く喋ってくれたって、何も買わずに立ち去るというのも失礼な話だ。


「俺には必要のないものだ」


 確かに、女性用ネックレスは彼自身が使うことはないだろうが。


「いいの? まあ、この美少女シャロンちゃんにプレゼントしたい気分もわかるけど」

「問題ない」

「ん……、わかった、ありがと」


 受け取ったネックレスをポケットの中に入れる。

 そのまま付けるような気分では、なかった。


(あんまり、優しくしないでほしいんだけどなぁ……)


 恩を仇で返す気であるシャロンとしてはあまり恩を着せないでほしいと思う。

 彼自身は、聞き込みで得た要らないものを渡しているだけなのかもしれないが。


「そういえば。君に聞きたいことがあるのだが」


 人の気も知らないで、コテツはそんなことを聞いてきた。

 平静を装ってシャロンは答える。


「んー、なにかな? わかることなら答えるよ」

「実質、この件とは関わりのないことで、俺の純粋な興味と言っていいだろう。答えたくなければ答える必要はない」

「おぉう、プライベートな質問? いいよ、答えられることなら」


 さて、彼は一体何を聞いてくるのか。

 色気のある質問が飛んでくるとは思っていないが。

 そうして、彼が口にしたのは。


「君は人を憎んでいるようだが、何故だ?」


 確かに色気のある質問が飛んでくるとは思っていなかったのだが。

 それはそれで予想外だった。


「えっとさ……、それ聞いて、どうするの?」


 あまりに空気を読まない、というか気にした素振りもない質問である。

 こういったことはもっとそれらしい雰囲気の時にそれらしい態度で聞くものだと思ったのだが。


「参考にさせてもらおう」

「……なんの? いや、まぁいいけどね、楽しい話じゃないよ?」


 まるで日常会話のように当然のように問われて、綺麗さっぱり毒気を抜かれてしまい、悲壮感たっぷりに話す気も失せた。


「構わない」


 あまり楽しい記憶じゃない。思い出したい訳でもない。かといって思い出すのを拒むほどに忌避する類のものでもない。

 コテツと出会ってからたまに刺激される思い出を、シャロンは引き上げた。


「あたしさ、婚約者がいたんだよねぇ」


 何でもないことのような声で、シャロンは話し始める。


「そうなのか?」

「そ、しかも人間で、貴族の息子さんだったわけよ。あたしも中々、捨てたもんじゃないよねぇ」


 茶色の髪に優しげな風貌の男だったと、彼女は語る。

 その男は貴族の次男であり、しかしながら、奇跡的にその親は息子の色恋に口を出そうとはしなかった。

 次男だからどうでもよかったのか、息子の自主性を尊重したのか、あるいは結末を見越していたのか。


「彼はね、亜人とか人間とか関係ないって言ってくれたんだよ。優しい人だった」

「そうか」

「でも、わかるよね。あたし今結婚してないから」

「……ああ」

「領主も息子の恋愛には口を出さなかったよ。でもね、周囲はまあ、そうでもないんだよねぇ」


 屋敷の従者が、同じ貴族が、影で、あるいは真っ向から嫌味や皮肉を口にする。


「それでも、関係ないって言ってくれたよ。命と引き換えにしても君を愛するって。結婚の約束もした。でもねぇ……、ちょっとずつ溜息とか、イライラとかさ、うん……」


 何も感じないなんて、あるわけがないのだ。

 シャロンたった一人と、周囲の人間全て。それを天秤に掛けなければならない。


「そして、ちょっと過激な人も、いてさ」


 貴族の血に、汚らわしい亜人の血が入ることなど許せない。そういう人間がいた。

 しかもその人間たちはシャロンではなく、相手の男を問題視した。

 シャロンを引き離すのは確定事項ではあるが、再発を懸念したのだ。


「そんなことになってしばらくしてさ、夜に帰り送ってもらったんだけど。いきなり人に囲まれて、あたしじゃなくて彼の方がナイフを突きつけられてた」


 シャロンを引き離すのは簡単だろう。しかしながら、貴族の息子はまた別の亜人に惚れるかもしれない。

 亜人と下手に関わるとどうなるか、教えてやる。そういう意図がそこにはあった。


「『その亜人と別れろ。そしたら、命は助けてやる』今思えば、ただの脅しだったとは思うんだけど。あの人は言ったんだ」


 流石に貴族の息子を本当に殺したりはしなかっただろうと、冷静になればそう思う。

 だが、その時はそうもいられなかったし、そして、これまでの非難や辛さが、この先を決めたのだろう。


「『こいつはどうなってもいいから、僕の命は助けてくれ』」


 彼も冷静じゃなかっただろうから、本当の本心はわからない。


「『こいつに関わってから僕の人生ろくなことがない。遊びの、つもりだったんだ。亜人女に優しくしてやったらどうなるかって。そしたら、こんな……。こんな売女どうなってもいいから、命だけは、どうか』」


 その場凌ぎの口からでまかせだったのかもしれない。

 だが、思わず座り込んだシャロンを見た、彼の虫でも見るかのような目は。

 未だに忘れられそうにもない。


「せめてさぁ……、躊躇してからとかさ、悩んだ後とかさぁ。申し訳なさそうにしてくれるとかさ」


 もしそうだったなら、今頃シャロンは仕方がなかったのだと、美しい思い出を胸に一人生きていたことだろう。


「亜人だからダメなの? 亜人だから、人間は何をしてもいいの?」

「その男に、その後は会ったのか?」

「会ったよ。一回だけ。その時から一週間後」


 その時には既に、彼の隣には人間の女性がいて。


「『あの時の僕は、どうかしていたんだ。――"亜人と付き合うだなんて"。皆英断だと誉めてくれるし、ここにいる彼女とのことも、皆祝福してくれている。もう、会わないでくれ』」


 あの後、泥だらけになって帰った記憶がある。

 足元がふらついて、おぼつかなくて何度も転んで。


「人間ってさぁ。亜人なら簡単に捨てられるんだよね。だって、誰も非難しないもん。亜人が死んで数人助かればさ、犠牲者ゼロの、偉業なんだよ」


 にへら、とシャロンはしまりのない笑みを浮かべた。


「似たような人は結構いたよ。亜人も人も変わらない、平等な世界を一緒に作りましょう。そのためなら命だって、って言った人は、お金で掌返したんだったかなぁ」


 それなら、最初から手なんて伸ばさないでくれればよかったのに。


「だから人は嫌い。どう? 楽しかった?」

「楽しくはなかったな」

「そういうコテツ君のはっきり言うとこは好きだよ」

「しかし、余り聞かれたくないことだったようだな。すまなかった」

「だいじょーぶ。最初に言いたくなかったら言わなくていいって言ってたからね」


 ちらりと見たコテツの顔は、いつもと変わらぬ無表情。

 何の痛痒もなさそうに、彼はそこに立っている。


「参考になったかな? 何の参考にするか知らないけどさ」

「ああ、すまない。ありがとう」

「ん、どーいたしまして。まあ、一応なんの参考にするか位聞いておきたいけど。あ、言いたくないなら言わなくていいけどね」

「人の強い情動に興味がある。今の俺に、ないものだ」

「確かに、コテツ君はもっと情熱的に生きたほうがいいかもねぇ……。けど、今回のお話はあんまり参考にならなかったんじゃない?」

「聞いておいてなんだが、確かにな。現状、婚約者に手酷く裏切られる予定はない」

「あったら困るよ。それに、ないのが一番」

「そうか」

「うん」


 呟いて、シャロンは視線をコテツから前に戻した。


(なーんか、ぺらぺら喋っちゃったなぁ……。仕方ないね。信頼を得るために、聞かれたことは答えないと)


 誤魔化すように、心で呟く。

 自分を騙して、納得させる。

 今度はそんな彼女を、コテツが見ていた。

 そうして、失敗を悟る。


「やはり聞くべきではなかったようだな。顔色がよくないぞ」


 ああ、失敗した。

 心のどこかが呟いた。

 その言葉に、胸の奥が疼いて、シャロンは失敗だったと心で呟く。

 もっと早くに殺しておくべきだったと、気付くには遅すぎた。

 どこで手遅れだったのか。多分、きっと、最初からだ。コテツ・モチヅキが亜人を差別しない限り、きっと何度繰り返してもこの結果になるのだ。


「さっき聞いたし、知ってるよね? あたし、人嫌いだって。だから、放っておいてもいいんだよ?」


 コテツは言う。


「いや――」


 その先の言葉を彼に言わせたくなくて、シャロンは呟いた。


「君は俺の協力者だから?」


 ああ、失敗だった。

 失敗だったのだ。

 何で素直にぺらぺらと過去まで語ってしまったのだろうか。

 もう、手遅れだ。

 幾ら自分を誤魔化しても、何度敵同士なんだと確認しても。

 今となっては。


「ああ」


 その確認の言葉を聞くだけで、胸が痛むのだから――。


「……そっか」


 コテツとシャロンは本来は敵同士。

 人間と亜人。相容れることはない。

 コテツが優しいように思えるのも、協力者を心配しているに過ぎないのだ。

 事が起きれば敵同士、容赦などしてもらえはしない。

 その事実が切なくて、シャロンは胸元に置いた拳をぎゅっと握る。

 そんな彼女を見て、何を思ったかコテツは言った。


「シャロン。これから俺は宿に戻る」

「え、もう……?」

「少しやらなければならないことがある。君は好きにするといい」


 まだ、日は暮れていない。

 だが、もうコテツは調査は打ち切りだという。

 いつもと違って戸惑うが、これはある意味好機でもあった。


「わかった。あたしは、後で帰るから」


 できるだけいつも通りに、コテツに向かってシャロンは言う。


「ああ。だが、気を付けてくれ」

「わかってるよ。あれっきり襲われたりもしてないからって油断とかはしてないからね!」


 背を向けたコテツを見送ってから、シャロンは行動を開始した。

 路地裏へと入り、とある地点まで迷わず進み、待つ。

 ここに目的の人物が現れるかどうかはわからない。だが、来るだろうとは思っていた。


「まだ、エトランジェは殺せていないようだな、シャロン」


 短い赤毛に、鳶色の鋭い瞳。シャロンの共犯者、ゲイルがそこにいた。


「中々、隙を見せてくれないんだよね、あの人」

「わかっているのか?」


 問いかけるような視線。

 シャロンは、逸らして答える。


「わかってるよ。明日でしょ。知ってる」


 明日。それが、タイムリミット。

 作戦決行の日だった。

 わかっていながら、シャロンはぽつりと口にした。


「ねぇ。作戦、延期しない?」


 私情だ。わかっていて、口にした。


「何故だ?」

「エトランジェ、殺せないかも」

「なるほど」


 ゲイルが頷く。

 もしかすると。


「だが駄目だな」


 そう思った瞬間、希望は消えた。


「予定は変わらん。待てばエトランジェは帰るかもしれんが、その時は大勢の応援が来たときだろう。そうなれば作戦どころではない。エトランジェがいる状況で行った方がマシだ」

「ッ……!」

「それとも今更やめるというのか? この街の亜人の有志達による、武装蜂起。今更、止められるというのか」

「それは……」


 シャロンにも、目的がある。その為にエトランジェを殺さなければいけなかった。

 その目的こそが、先ほど男が口にした武装蜂起だ。

 賛同した若い亜人達と共に、提供された武器を以って電撃的に領主の館を強襲し、一気にこの街を掌握する。


「今正にお前たちは住処を追われようとしている。これ以上人の横暴を許せるのか? 君の祖父は血を流すのを避け、諾々と従おうとしている。それは、長としての群れを思うが故の英断だろう。しかし、若いお前達はどうだ。血を流すことはできないのか。群れのために、仲間のために」


 賛同する若い亜人は少なくない。誰も彼も、人に対し鬱憤が溜まっているのだ。


「住処を追われれば、死ぬぞ。子供が死ぬ、年寄りが死ぬ。ゼロからのスタートだ。屋根も壁もないところから始まる、最初の冬は地獄が待つ。あるのは、領主の嘘か真かもわからん援助の約束のみだ。この援助を、君は信じられるのか? 誰よりも、君こそが」

「……わかってるよ」


 わかっていたことだ。

 今更、止められる訳もない。

 それでも、と思ってしまったのだ。


「決心はついたか?」

「うん。今日中に、終わらせるよ……」


 ポケットに収まったままのネックレスが、ずしりと重たくなった気がした。























 日も落ちないうちに調査を打ち切ったのは、何もシャロンに気を遣っただけではない。

 明日到着する応援のために、これまでの調査を纏めた書類を作っていたのだ。

 ただ、一通り纏めた後時間が余ってしまったので、銃の分解整備に手を出していたのだが。

 それも終わり、コテツは椅子に座って考える。


(概ねめぼしい建物は探ったが見つからない。ということは地下でもあるのか、それとも街の外に隠したか?)


 深く考え込むコテツの耳に、ノックの音が響く。


「誰だ?」

「あたしあたし。シャロンだよ。入っていい?」

「ああ」


 コテツの返答と共にドアノブが回され、シャロンが室内へと入ってくる。


「銃の整備してたんだね。外からも火薬の匂いしてたよ」


 シャロンが、整備を終え、机の上に置かれた銃を見て言う。


「そうか」


 随分と亜人は鼻がいいらしい。コテツも火薬や硝煙の匂いには敏感なつもりではあったが亜人には到底敵うものではない。

 コテツは、立ち上がり窓の方へ歩く。

 眼下に見下ろす街になんらかの手掛かりはない。

 そんな中、不意に花の香りがコテツの鼻腔をくすぐった。

 シャロンに渡した花の、花瓶に入りきらなかった分だ。

 甘い匂いがして、コテツはその花を見下ろし、何かが、引っかかった。


(……見落としている)


 街のめぼしい建物は探った。それでも見つからない武器群は一体どこにあるのか。

 一箇所だけあるのだ。手を出していない、おいそれと手を出せない、そして、意識から外していた場所が。

 亜人街だ。あそこには入るのも一苦労であり、入るのも一苦労なら、そこから武器を出すのも一苦労となり、人間には手を出せないものと思い優先順位が低かった。

 しかしながら、めぼしい建物を探って尚、何も発見できなかった今。


(花は、亜人の嗅覚を誤魔化すためか……?)


 ふとそんな考えが過ぎる。

 亜人の嗅覚は現にシャロンが外から火薬の匂いに気付けるほどであり、亜人街にあるならとっくに亜人が気付いているものと考えていた。

 きっと亜人達の長も同じように思っていただろう。近くをあるならば、すぐに分かると。

 だが、亜人街に咲き誇る白い花。もしもそれが亜人の嗅覚を誤魔化すためのものだったとしたら。


(前提から間違っていたのか? 俺達は組織がこの街で何かすると思っていたが)


 花を植えたのは誰だ。若い亜人だと言っていた。

 組織は武器を流すだけ、協力するだけで、主戦力はその亜人達だとすれば。

 亜人街の若い者達が全面的に協力したならば運び込むのも、運び出すのも容易い。

 後者に至っては容易どころの話ではない。持って出て、そのまま使えばいいだけだ。

 気付いてしまえば単純な事実だった。人間の居住区にないなら亜人街にある。それだけの話だ。

 ただ、亜人街に武器を運び込むのは現実的ではないと思っていたこと、近くに武器があれば亜人がすぐに鼻で気付くと思っていたこと、組織は組織として動き何かを起こすと思っていたということが、気付かなかった原因だ。

 相手は亜人の幾らかを雇っている、どころではない。この街の若い亜人のほぼ全ての協力を得ている。いや、むしろ亜人達に協力していると言うべきか。

 そう考えれば、状況に説明が付く。

 ではそんな亜人達の目的はなんだと問われれば、この街の状況を考えれば想像は付いた。溜まっている不満と、そこに流れ込む武器。やることなど一つだ。

 となれば、問題はこれからどう動くかだ。どう動くのが最良か、コテツはそれを考える。

 そんなコテツの背へと、声が掛けられた。


「ねぇ、コテツ君」


 コテツは窓側を向いて考え事をしていたため、シャロンは背後から近づいてくる形となる。

 とん、とん、と足音が近づいてくる。


「……シャロン」


 呟いて、振り返る。

 そこにシャロンはいた。

 彼女は、笑っていた。


「なぁに?」


 コテツの胸に銃を突きつけて。



やっとクライマックスに入れそうです。

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