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七日目:文章作法編その5「ネットスラングや顔文字は人を選ぶから注意しろ」

 顔文字(AA)、その他ネット(ケータイ)スラング、読者ターゲット層について。

 入れるかどうかは各自で判断すべきもの。若干エッセイみたいになってしまっているかもしれません。

*!caution!:今回、縦書きだと意味不明になる可能性が高いので、横書きのまま読むことをお勧めします。また、PC・ケータイの環境によっては顔文字などが崩れる可能性がありますが、適当に空気を読んで脳内変換して下さいませ*

【簡易人物紹介】

 一彦かずひこ:男、ツッコミ、解説。

 双葉ふたば:女、腹黒、S、調教師、解説補助。

 三波みなみ:女、後輩、天然ボケ、質問。

【三波による修正版3・三波の小説】

 私の名前は(みなみ)麗奈(れな)。15歳、女子高生! 血液型はAだけど、全然マジメでもないし整理整頓が得意でもない。むしろ、苦手なんだよねえー。この間なんか自分の部屋でケータイ失くしちゃって、「どこ?」って涙目になりながら探し回ったほど、私の部屋汚い(>_<)

 そんな私だけど実は好きな人がいるんです。隣のクラスの、名前は和樹(かずき)君。きゃ、名前で呼んじゃった///

 え、告白しないのかって? ムリムリ! 「おはよう」も言ったことないんだから……。

〈了〉


「前回でやっとここまで()ぎつけたんだったな。で。まだどこかおかしいところはないか、三波?」

「ん~……特に見当たらないと思うッス」

「ふむ。……前々回、約物(やくもの)、つまりは記号の使い方を教えたわけだが……そこに|〔(>_<)〕〔///〕《こんなの》はあったか?」

「……そう言えばなかったッスけど」

「広義的な分類上はこれらも約物としてもよろしいのかもしれませんが、少々特殊ですので今回は一回丸々を使って説明してはいかがでしょう」



「そうするか。……まずは一般的によくある意見から述べよう。なあ、三波」

「なんッスかー?」

「たとえば、|〔v(^o^)v〕〔///〕〔(笑)〕《こういうの》が本文内に入っている小説について、『こんなのは小説じゃない』と主張する人たちがいるわけなのだが――三波としてはこういうのはどんなふうに捉えている?」

「別に悪くないと思うッスけど……分かりやすくないッスか、こう、見た目的に、てゆうかフィーリング的に?」

「なるほど。やっぱりそういう認識だったか……」

「うーん、少し難しいところではありますね」

「どういうことッスか?」



「こういったものは、“どんな読者層が読むか”、あるいは“どの読者層をターゲットとするか”でその使用の正否が分かれる……とでも言えばいいか」

「そうですね。たとえばケータイ小説なんかだと、読者層はほぼ若年層に限られ、さらに『携帯から見ている』ということはつまり、ある程度『絵文字やそれ関連のスラングを理解しやすい人』ということになります。だから、文章中に絵文字や顔文字を入れ込んでも違和感がない人たち、あるいはそれを気にしない人たちが読むので特に問題はありません」

「だが、ネット小説となるとその読者層は一気に広くなる。そんな中で|〔v(^o^)v〕〔///〕〔(笑)〕《こんなの》を小説本文中に入れたりすると……」

「それを理解できない人たちが読んじゃって、文句言うってことッスか?」

「ああ、そうなる可能性がある」

「あ、そういえばアタシの小説の感想にも『顔文字とか使ってるのは小説じゃねーよ』みたいなのも来てたッスねー」

「……あの小説に複数の感想が来ていたことがまず驚きなんだが」

「その言い(ぐさ)はひどいッスよ、カズ先輩……」

「あまりにも文章がひど過ぎて、怖いもの見たさで最後まで見てしまった、とかではないでしょうか」

「…………うぅ」

「一番ひどいのは双葉だと俺は思うのだが。三波が撃沈したぞ」

「いえ。一番ひどいのは三波さんの修正前の小説でしょう」

「……………………」

「……ドSの本領発揮か。おい、三波が完全にいじけたぞ。だからこいつには毒を吐くなと言ったのに。どうするんだ」

「あらあら、いけませんね。ほら、三波さん。頭なでなでしてあげます」

「…………はふぅ……えへへへへ~……」

「……こいつの頭には躁鬱(そううつ)の切り替えスイッチでもあるのか……!?」

「うふふふ……」

「…………藪蛇(やぶへび)になりそうだからこれ以上はツッコまないでおこう……。三波、正気に戻ったか?」

「はい? 何のことッスか?」

「…………え、記憶がない……? ホントにやばいんじゃないか、こいつ……」

「一彦さん。そんなことより話を続けましょう」



「……そーだな。で、どこまで話したか――そうそう、顔文字を是とする人とそうでない人の話だったか。まあ、突き詰めればこれは個人の主義や価値観の話になってしまうからな。結局、自分の目指す方向で書くしかない」

「目指す方向ッスか?」

「分かりやすく極端に二分するなら、『プロの作家を目指す』か、自分の書く物を理解してくれる人だけに見せる『内輪(うちわ)小説』か、だな」

「自己満足のために書いている、という人もいらっしゃいますが」

「それもネットに投稿・公開している以上、人の反応を欲しているということだから、『内輪小説』と言っていいだろう。……ああ、『内輪』というと閉鎖的で響きが悪いが、別に(けな)してるわけじゃないぞ。あくまで便宜(べんぎ)上のものだ」

「それは分かってるッスけど……具体的にその二つは何が違うッスか?」

「プロ作家を目指すなら、出版を意識して、小説の作法をきっちりと守らなければならない。もちろん、その中でもライトノベル作家を目指すのか、純文学作家を目指すのか、あるいは詩人やらエッセイストにでもなりたいのかで、どんな書き方かは変わるが」

「それとは逆に、とりあえず人に見てもらいたいだけでしたら、そこまで厳格に規定を守る必要はないということですね」

「顔文字とかバンバン入れちゃっていいってことッスか?」

「んまあ……さっきも言ったが、それを嫌う人もいる。それを気にしないならいいんじゃないか?」

「顔文字も表現方法の一つではありますからね。ただ、『一般的な』小説ではないとだけ覚えておいた方がよろしいでしょう」

「うーん、入れない方が無難ってことっすかねー?」



「ま、無難と言えば無難だな。それに、顔文字やらを入れると読者が制限されることにもなり得るし」

「制限?」

「顔文字が通じる人・受け入れられる人が限られるということはつまり、それが理解できない人は(おの)ずと遠ざかっていくだろう?」

「ん~……?」

「たとえば、この場でも以前から何度か『萌え』だの『厨二』だのを誰かさんが発言したので、それもある種の制限になるな。萌えはまだしも、厨二は何のことかさっぱり分からないという人がいたことだろう」

「まったく、厄介な発言をする人がいたものですね」

「………………」

「ええと……つまり、そうゆう言葉がよく分からないアタシはその制限にハジかれてるってことッスか」

「制限とか弾かれるとか言うとちょっと大げさだが……少なくともその空気にはついていけなかったということだろう?」

「あ~、そうッスね。疎外感ってヤツッスか」

「小説でも同じだ。だからそういう、ついていけなかった人たちは『理解できない』『内輪だけのツマラン小説』……最悪、『小説として成り立っていない』とすら評し、感想すら残していかずに帰っていくことだろう。三波、感想を貰えたお前はよっぽど運が良かったんだと思うぞ。それが否定的意見であっても」

「そうッスかね?」

「感想や意見を貰い、その意見を自分なりに活かすことで、より小説の腕が上達することができます」

「『制限』をかけると、その機会が減ってしまうのではないか、と俺は危惧しているわけだ」


「んー、つまり……“より幅広く意見を貰いたいなら、より幅広い層に読んでもらえるように書け”ってことッスか? そうすれば小説を書く腕も早く上達する、と」

「正解だ。……最近、まとめるのが上手くなってきたか?」

「ですね。努力の(たまもの)でしょう」

「へへっ、褒められたッス!」

「えへへ、褒めて褒めて~」

「だから便乗するんじゃない! もうそのネタやっても次から反応してやらんからな」

「え~、やだやだぁ~!」

「うるせえ。というか、それ、もはやただの幼児退行じゃないか……?」

「フタバちゃん、だいじょうぶでちゅかー?」

「三波もノるな! 変なところだけ空気読みやがって!」

「え~ん、カズお()ぃたんがいじめりゅのぉ~」

「お~、よちよち。カズ兄ちゃんは悪い子でちゅね~」

「オイ……」

「お兄ぃたん、おかおこわい」

「カズ兄ちゃんはいつもしかめっ面でちゅからねー」

「…………もう勝手にやってろ、お前ら……」

「ううぅ、カズお兄ぃたんがおこったぁ……」

「カズ兄ちゃんは口は悪いでちゅけど、実は結構いい人なんでちゅよー?」



「説明は続けるからな? さて、絵文字や顔文字以外にも、以下のようなものは“人を選ぶ”から注意しろ。これを小説本文中に使った場合、批判が来る可能性があることを覚えておいてくれ。…………本当に勝手に続けるからな?」


【人を選ぶような表現】

 ・〔、、、〕〔。。。〕など、本来の使い方とは別の使い方をしているもの。

    ⇒()を表現したいなら、〔……〕〔――〕を使うべし。

 ・〔///〕〔♪〕など、記号や特殊記号を使った表現。

    ⇒〔♪〕は出版されたラノベでもたまに見かけるから、なんとかいける……? でもやめた方が無難。

 ・〔(笑)〕〔(汗)〕〔(爆)〕など、括弧()内に感情などを補足すること。

    ⇒ブログでやれ。小説内では描写で表現すべし。

 ・AA(アスキーアート:文字や記号を使って絵や図形を表現したもの。顔文字もAAの一つと言える)やそれに類するもの。

    ⇒ネタとしてはありかもしれないが、大抵は縦書きにすると意味不明になってしまう。描写で表現すべし。

 ・〔w〕〔(ry〕〔厨二病〕〔kwsk〕〔こωL=ちレ£〕など、各種ネットスラングや局所的にしか通じない言葉やネタ。

    ⇒内輪ネタの類。それでもいいならお好きなように。

 ・下品すぎる下ネタ、行き過ぎなエロネタ。

    ⇒何事にも限度がある。ほどほどが一番。

〈了〉


「これらはもちろん、時と場合と読者によりますね。筆者が使うべきところだと判断したなら、使っても問題ない場合もあるかと」

「素で戻ってくるな! そして平然と補足するな!! 切り替え早過ぎだ、お前は」

「一彦さんが寂しがっているご様子でしたので」

「別に寂しくはない」

「べ、別に寂しくなんてないんだからねっ! ……ツンデレですか」

「言ってない。それより――――」

「え? あ、あれ? フタバちゃんがカズ兄ちゃんにいじめられて、それで……あれ?」

「三波が絶賛混乱中なんだが、どうするんだ……」

「頭を撫でると戻ってきますよ」

「…………。おい、三波! 双葉の芝居は終わったぞ。変な洗脳法を使われる前に戻ってこい!」

「しばい………………あっ、はいッス」

「……今の間が何なのかはあえて訊かないでおこう……」

「優しいんですね?」

「そういう問題じゃない気がするが……。で、三波よ。とりあえず人を選ぶような表現は注意して使えよ」

「え、あ、了解ッス?」

「微妙に不安になる返事だ……」

「今度個人レッスンでもして差し上げたらどうですか」

「今も個人レッスンみたいなものだろう。……なんか拗ねてないか、お前?」

「そうですか? 気のせいだと思いますけど。それより、次の話題に移りましょう」



「あ、ああ……? それで、だ。筆者ではなく、出版社側が『制限』をかけて――と言うより、『ある読者層を標的にして売り出す』ために文章などを変えるということも近年では見られるようになった」

「どういうことッス?」

「有名な近代文学作品――たとえば芥川龍之介の『羅生門』や太宰治の『人間失格』など――の文章にルビを振り、表紙をマンガ調に替え、また横書きにするなどして、あまり小説を読まない若者たちを狙って売り出す、ということが何年か前に行われましたね」

「へぇー、それは確かに手にとって読みやすそうッスね」

「言わば “読者層の選択”だな。語弊を承知で言うと、純文学の敷居を下げた出版物、というところか。実際、そこそこ売れたらしい」

「表紙などを変えたことにより、作品の持つイメージや雰囲気をも変えたのですね」

「奥が深いッス……」



「ところで、こんな感じのものはどうでしょう」


 ワガハイは猫である(=^・ω・^=)ニャーン

 名前はまだない(=´・ω・ `=)ショボーン


「ぶふぉっ!」

「あははっ、なんか見てるだけで面白いッスねーっ!」

「笑って頂けたようで何よりです」

「素で噴き出してしまうとは不覚……。しかし、コミカル度が異常に高くなったな。読者層を変化させるというより、ジャンルそのものが変化しそうなくらいだ」

「でもこういう顔文字が毎回ついてたらやっぱウザいッスかねー」

「そうですね。やるならここぞというときに、よりインパクトを与えるために、ですね」

「全ての文に顔文字がついてるとしたらそれはそれで凄いがな」

「そんな小説あったら見てみたいッス」

「労力と売れ行きが見合わないような気がしますけどね」

「まあ、それはともかく。これはさすがに極端すぎる例だが……文章の書き方でその作品がどんな雰囲気なのかを、ある程度筆者や出版社の意図で決めることが出来るわけだ。言わば、“雰囲気の演出”だ。これについては次回やもっと後でも詳しく説明する」

「でも、こういうのってあんまり狙ってやり過ぎると、大抵は失敗するッスよねー」

「そうですね。二番煎じなども嫌われますし……」

「……ふむ。俺も一つ思いついたぞ」


 国境の長いトンネルを抜けると、そこは雪国であった……!


「おおー、ただ『……!(これ)』を入れるだけでこうなるなんて、すごいッス」

「なんだか緊迫感を感じますね。よっぽどの大事件だったのでしょうか。目を見開かんばかりに主人公がショックを受けている、という光景も頭に浮かびます」

「『雪国』という綺麗な情景に対するインパクトは若干薄れるが、代わりに主人公の驚きの感情の方が強調・優先されたわけだな。こんな風にたった数文字、手を加えるだけでだいぶ印象が変わるだろ?」

「なるほど~。うむむ……じゃあ、次はアタシッスね!」


 柿食えば 鐘が鳴るなり ☆法隆寺☆


「…………何を伝えたいのかが全く分からん。センスとかそういうもの以前の何かが欠落している」

「……うーん……」

「あ、あれ? 反応が微妙……?」


「……三波の微妙すぎるオチがきたので、今回はここまでとする」

「第七回目の講座終了です」

「どこが悪かったッスかー!?」

 閉幕。


 “入れるかどうかは各自で判断すべきもの”=“読者が限られてしまうような表現・言葉”。今回のこの話、おそらくは賛否両論あることでしょう。個人的な考えとしては、ネット小説やラノベにおいてはアクセントとしてたま~に顔文字を入れるぐらいなら別に構わないと思っています(ただし、コメディー調の内容・文章の場合のみ)。もちろん、それを嫌う人がいるのも忘れてはいけませんが、彼らの言う『まともな文章』『まともな小説』に惑わされるべきではないと私は考えます。読者あっての小説ですが、読者(あるいは他の作者)の考えを押し付ける場ではありませんので。とは言え、無難に(批判が来ないという意味で)いきたいなら、やはり顔文字その他はやめた方が良いでしょうけれど。

 それと、ケータイ小説云々言ってますが、実はケータイ小説はほとんど読んだことがありません……。一応少し前に調査のためにいくつか読んでみたのですが、もし間違っていることがあれば、その旨をご一報ください。

 後になりましたが、漱石先生と川端先生、並びにファンの皆様、勝手なアレンジを加えて申しわけありません。さらに申しわけないのが、『柿食えば~』の俳句の作者の名前を全然思い出せなかったことです。正岡子規老師、祟らないでください。


 次回は文章作法編の一応のラストを予定しております。更新は少し遅れるかも?


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