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第70話 邂逅

 そこに立っているのは、普段とは別人と思えるほどに殺気立ったブルームだった。


 「大司教ミレディ。大陸最後の吸血鬼にして最強の存在。そして、我が怨敵。――殺す」


 復讐相手を目視したブルームの体が躍動する。

 それはミレディが以前対峙した時よりもさらに素早い動きだった。


 「はあああああ!」


 大鎌が敵へと襲い掛かる。

 迎え撃つミレディは見たこともない細長い剣――日本刀を左手に持っていた


 絶対の死をもたらす刃が振り下ろされるが、突き出された日本刀に防がれる。


 「その武器は……」

「カカッ、大昔の英雄の借りモノじゃ。奴は『日本刀』などと呼んでおったかのう」

 

 刀身は細いにも関わらず、『死神の大鎌』の攻撃を受けても傷1つ付いた様子がない。

 キラリと光る刃を見たブルームはわずかに身震いする。

 見るだけでも業物だと分かる逸品だ。

 芸術的なまでに研ぎ澄まされた刃は、直撃すれば最後身体を真っ二つにされる事が容易に想像できる。

 

 「では、次はこちらから行こうかのう」


 ミレディは義手になっている右手を掲げて魔法を発動した。

 血を凝縮して作成した槍を射出。

 それと同時に、彼女本人も槍に迫る勢いで突撃してきた。


 「ッ……」


 身を翻して投擲槍を回避すると同時に、上段からの一撃を受け取める。

 衝撃に手が痺れた。

 ブルームはソウルライトにより普段の数倍の身体能力を手にしているが、それでも尚ミレディの腕力と互角、あるいは不利だ。


 「カカッ、前と違って随分と余裕がないのではないかのう、死神よ!」

 

 ミレディの刀が閃き連撃を繰り出す。

 その剣裁きは、まるで熟達の剣士の如く隙のないものだった。

 ブルームは大鎌を駆使してそれを防御する。

 

 しかし、大鎌は刀に比べてかなり取り回しが悪い。

 防ぎきれなかった斬撃が体を掠めて、ブルームの肌に傷をつける。

 

 「ッ……!」


 痛みに顔をしかめるブルームだが、決して怯む様子はない。

 たとえ自分が死んでも相手を殺せればいい。

 そんな風に思っているような戦い方だ。

 

 「カカッ! 余裕がないぞ。うっかり死んでしまうのではないか?」

 「黙れッ!」


 先ほどまでとは一転、ブルームが攻勢に出る。

 

 当たれば即死の鎌の連撃を受けているミレディは未だに余裕を見せたままだ。

 その剣裁きは芸術的と言えるまでに熟達したものだった。

 

 元々、ミレディは得物の扱いに長けている。

 しかし今回の刀の扱いについては、飛びぬけた練度を見せていた。

 

 明らかにソウルライトの後押しを受けている。

 持っており能力が次々と変わるのはミレディの『奪取』の強みだ。

 特に今回は、とびきりの能力のストックを持ち出している。


 「ッはあああ!」

 「フム、ちと興醒めじゃのう。あの陽光の力は使わんのか?」

 

 大鎌を受け止めたミレディが挑発する。それに対してブルームは黙って唇を噛むだけだった。

 2つ目の魂――転生者であるブルームの魂を一時的に眠らせている今、彼女の力である『サンライト』は使えない。

 おそらくこの戦いの間に使うことはないだろう。

 

 切り札が1つ失われている状態だが、ブルームに怯む様子はなかった。


 「狩魂術」


 今の彼女はソウルライトの原点――復讐の炎が最も激しく燃え盛っている。

 身体能力の向上、そして『死神の大鎌』の強化能力は転生者であるブルームよりも遥かに強化されている。


「Death is the great equalizer (死は一切を平等にする)」

 

 『死神の大鎌』が拡張されていく。

 血のような色で固められた刃先は、3m近くにも渡って拡張されていた。


 「はあああああッ!」


 巨大な『死神の大鎌』が風切り音と共に振り下ろされる。

 しかし、その切っ先は日本刀に防がれた。

 

 その一撃は、過去にブルームが放った中でも最も威力のあるものだった。

 仮にミレディが持っているのが前回の戦いと同じメイスだったなら、得物ごと首を飛ばせていたはずだ。

 

「おっと。不死殺しの神器をそんなに振り回すでない。危なっかしい奴じゃのう」

「……!」

 

 ブルームは目の前の仇に対して殺意に満ち溢れた視線を浴びせかけるが、まったく効いた様子はない。

 大鎌を握る手に力を籠めるが、刃先を止める刀はビクともしないままだ。

 

 「熱烈なのは結構な事じゃが、少々芸がないのではないか?」

 「……『死を告げる霧よ』」


 打ち合いの不利を悟ったブルームは、一旦距離を離すことにした。

 白い霧が一瞬にして2人の周囲を包み込み、ブルームの姿はその中に隠される。


 視界を奪い、一撃で命を刈り取る狩人の術。

 ブルームが最も得意とする戦法だが、ミレディはそれを見てもニヤリと笑うだけだった。


 「カカッ。せっかく会えたのじゃ。ワシからも、少しばかりのおもてなしをしてやろうかのう」


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