表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

36/52

第36話 ※微熱あり

 随分と長い間眠っていたようだ。

 体が重くて頭がフワフワする。


 フレンによれば、俺の症状はソウルライトの消耗しすぎによって引き起こされたものらしい。

 ベッドから上体だけを起こして、俺はフレンから最近の出来事について聞いていた。


「そう、黒牧師が……」

「ええ。ですが、大丈夫です。彼女は既に捕えられ、現在は帝国の騎士団が尋問を進めている最中ですから」


 眠っている間に2巻のイベントが全て終わっていた件について。


 馬鹿な……俺が原作の名シーンを見逃しただと……! 

 涙を流すフレンと彼女の為に憤るリオ、そしてクリミナル打倒の瞬間……! 


 などと思っていたが、そう言えば俺が原作の鬱展開をぶっ壊したからそのシーンは生まれないんだった。

 まったく、原作のイベントをぶっ壊すなんてとんでもない奴がいたもんだ。

 俺が見かけたらぶん殴ってやる。


 そんな風に思考を巡らしていたので、黙り込んでいるように見えたようだ。

 フレンが心配そうに覗き込んでくる。


「ブルームさん、大丈夫ですか? やはりまだ調子が悪いのでしょうか……?」

「大丈夫」

「本当ですか? ちょっとお熱を図りますね」


 フレンの手がピタリと俺の額に触れてくる。

 フレンとの距離が近くなって、結構気恥ずかしい。


「あら、少し熱いような? でも、ブルームさんの平熱はどのくらいでしょうか……?」

「大丈夫。いつも通りだから」


 俺がお熱なのはいつものことだ。そう、君たち推しにね! 

 まあでも、それを抜きにしてもちょっと熱がある気がする。


 おそらく体調的なものと言うよりも、気恥ずかしさによる熱だろう。


 ミレディと戦った時、俺は俺自身のソウルライトと向き合うために前世の追体験をした。

 そのため、今までよりも前世の自分に意識が寄っているようなのだ。


 すると、自分が今とんでもない状況にいることが改めて意識されるようになった。


 目の前に生きた推しがいて、俺を見ている。


 改めて意識すると緊張する。

 眩しさに身を焼かれてしまいそう。

 そんなことを考えていると、フレンが顔をずいと近づけてくる。


「いつも通り、ですか……しかし、やはり顔が赤いような」

「き、気のせい。だから、離れて……」


 まずい。どんどん体温が上がっている感覚がある。

 とりあえず聞きたいことだけ聞いておこう。


「ん、ンンッ……。1つ、聞きたいことがある。──フレンが襲われたのは私がいたから?」


 俺は今、最強のラスボス吸血鬼に狙われる身の上になった。

 ミレディは自分の脅威となり得る力を持つ俺を絶対に殺そうとするだろう。

 だから、俺が彼女との戦いで消耗した後の隙を狙わないわけがないのだ。


 クリミナルが襲ってきたのは原作と同じ。

 ただ、真っ先にフレンが狙われたのは明らかな原作との相違点だ。


 ひょっとしたら、これは俺をターゲットにしたからではないか。

 俺が不用意にフレンとの距離を近づけたせいではないだろうか。


 そんな不安があったから、聞いておきたかった。


 俺の言葉を聞いたフレンはスッと表情を消した。

 それは、何かに憤っているようにも見えた。


「敵の目標はリオさん、ローラさん、そしてブルームさんだったようです。──ですが、ブルームさんがそれに責任を感じる必要は一切ありません」


 断言した彼女が真剣な瞳でこちらを見つめる。

 ……気恥ずかしいので俺はそっと目を逸らした。


「敵の目標が3人だったことを考えれば、ブルームさんがいたから今回の襲撃が起きたとは言えないと思います。それに、あなたは私たちが黒牧師ハンターに襲われた時に助けてくださいました。……私は、守られるだけは嫌です。あなたが私を助けてくださるのなら、あなたが困った時には私が助けたい。そう思うのが普通ではないでしょうか?」


 そう言って彼女は透明な笑みを浮かべた。

 その瞳に灯る光は、まるで太陽の光のように煌めいて見えた。


 ──俺が原作で見て、憧れたフレンの在り方そのものだ。

 気取らず、正しく清廉であり続ける。

 ああ、やはり彼女は俺の推しだ。


 その事実を認識したら、改めて彼女と話しているのが恥ずかしくなってきた。


「ムリ……テエテエ」


 その輝きを目にした俺は、たまらずベッドに倒れ込んだ。

 ノックアウト。10カウントを待つまでもなくギブアップである。


「ブルームさん!?」

「眩しくて熱い。ちょっと寝かせて」

「あ、やはり具合が悪かったのですね。失礼しました。……ではブルームさん。カーテンは閉めておきますのでゆっくりと眠ってくださいね」


 サーッとカーテンを閉める音がして、フレンが部屋を出ていく音がする。

 まあ、些細な勘違いはあった気がするが、今日くらいは気にしないでおくか。

 なにせ眠くて仕方がない。


 推しと過ごせる幸福な時間を反芻しているうちに、俺は眠りについていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ