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第22話 原作ブレイク

 いつもの如くストーキングをしていたブルームへと襲い掛かった第二の刺客。

 その起源は、300年前まで遡る。


 300年前の大戦争は、吸血鬼含む魔族と人間との生存をかけた全面戦争だった。

 

 数は少ないものの極めて高い能力を持つ吸血鬼は、人間を圧倒していた。

 劣勢に立たされた人類国家は、とある禁術に手を出すことになる。


 ――異世界からの勇者召喚だ。


 「おお、この光は……!」


 300年前に存在した神聖ローデリヒ王国では、今まさにその儀式が行われていた。

 光り輝く魔法陣の中から1人の少年が姿を現す。

 黒髪黒目の若者。彼は遠い世界から召喚された転生者だった。

 

 「クク、これが異世界転生って奴だな……!」

 

 この世界の人間とは異なる魂を持った少年。

 彼のソウルライトの生み出した歪みは、この世界へと大きな影響を与えることになった。

 


 ◇

 


 時はウォールが倒される少し前まで巻き戻る。

 襲撃を受けたブルームは川の中まで吹き飛ばされた。

 



 

 殴られた後頭部が激しく痛む。

 水面に打ち付けられた全身が痛い。

 


「ッ……!」


 川から泳いで脱出して、すぐに『死神の大鎌』を取り出す。

 水につかってだいぶ冷静な思考を取り戻した。

 状況を頭の中で整理する。

 

 俺は突然敵に襲われた。敵の数も姿も能力も確認できていない。

 だいぶ不味い状況だ。

 

 いったんリオたちの戦いのことは忘れて集中しよう。……気になるけど。


 「『死を告げる霧よ』」


 霧を展開し目くらまし。

 これで再度奇襲されることは防げるはず。


 そう思っていたから、俺は上空への警戒を怠っていた。


 「■■!」


 飛来した敵が直上より襲い来る。

 頭をカチ割られる直前、俺は辛うじて地面を転がって回避した。


 「……見えてる?」


 霧の中は俺のみが視覚的なアドバンテージを得ることのできる領域だ。

 奇襲を受けるなんて初めてだ。


 敵は何かしらの方法で霧の中でも視界を確保していると推測できる。

 一撃目の強烈さに視覚の強化……どんなソウルライトだ?


 霧の向こう、ようやく視界に捉えた敵の姿を確認する。

 ――それは一目でわかるほどの異形だった。


 人間では有り得ないほどの図体の大きさだ。

 身長は2.5mはあるだろう。


 「……は?」


 一瞬、思考が停止してしまう。自分の見たものが幻覚ではないかと疑い、瞬きをする。

 

 それは疑いようもなくロボットだった。

 

 人間の1.5倍サイズの人型。

 イメージとしてはパワードスーツが近いだろうか。

 

 全身を銀色の装甲に固められている。眼の部分にはセンサーらしきものが赤く煌めく。

 右手の先端には機関銃らしきもの。左手の先端はブレード。

 足裏には加速および跳躍用のスラスターが装着されている。


 それは疑いようもなくロボットだった。

 

「……え?」


 俺が呆然としている間にもロボットは俺の元へと迫ってきていた。

 加速と同時にブレードを振る。リオの馬鹿力にも匹敵する破壊力だった。

 

 バックステップするも俺の胴体へと命中。浅い傷をつけた。

 

 傷口から血が溢れ出す。

 しかし、今の俺にとってはそれは些細な問題だった。


 「ロボット……?」


 続けて機関銃が火を噴く。

 走って回避を試みるも、全ては避けられない。

 弾丸は俺の体を掠めいくつもの傷を開けた。

 

 「げ……」


 ロボットの眼が赤く光り出した。

 機体の外まで漏れ出た熱が伝わってくる。

 オーバーブースト、ということだろうか。

 

 ブレードが光り輝き姿を変える。

 先ほどの2倍ほどの速さでブレードが迫ってきた。


 「原作ブレイクじゃねえかああああ!」


 叫びながら背後に回り込み、大鎌を振り下ろす。

 装甲がベコと凹んだロボットは、前のめりに倒れ込んだ。


 俺は息を切らしながらロボットを見下ろす。

 

 「なるほど、無機物なら『死神の大鎌』は通用しないか。さすがラスボス、考えたな」


 実際、俺は今までないほどに追い詰められた。

 ロボットの動きの速さは黒牧師と比べても遜色ないもの。

 そして、レーダーによって場所を特定する機能は霧の天敵と言えた。

 

 ――だが、だがしかし。


 「俺はッ、お前みたいに世界観を無視したオリジナル設定を押し付けてくる二次創作が大嫌いなんだよおおおお!」


 追撃。起き上がろうとしていたロボットは、再び地面とキスをする。

 

 ソウライは中世ヨーロッパ風異世界ファンタジーだ。

 そしてその本題は人間の魂、その輝きについて。


 機械風情の出る幕ではない。


 「その姿はなんだ! ぼくのかんがえた最強の主人公か!? お前みたいな奴が原作に出ていたことは一度たりともないんだよ!」

 

 装甲に向かって大鎌を力任せに叩きつける。

 地面に這いつくばるロボットは死に掛けの虫みたいにビクビクと痙攣した。


 ソウルライト、つまり魂の輝きは感情の動きと密接に関係している。

 そのため、感情が昂るほどに力の出力が向上するという現象は珍しくない。


 今の俺に起きているのもそれだ。

 俺の魂を猛烈に燃やしているもの。

 それは怒りだ。

 

 『死神の大鎌』は未だかつてないほどの威力を以ってロボットに叩きつけられている。

 フレンを助ける時ですらこんなに怒っていなかった。


 「人間の魂の輝きを舐めるな! 人の可能性を舐めるな! それは機械如きに踏み潰されていいもんじゃねえんだよおおお!」

 

 大鎌を打ち付けると同時、たしかな手ごたえがあった。

 コアのようなものを破壊されたロボットが停止する。

 俺は荒い息を吐きながら『死神の大鎌』を仕舞った。

 

 なんだか頭がクラクラする。

 そう言えばさっき滅茶苦茶攻撃を食らったんだっけ?

 

 怒りのあまり全部忘れてた。

 正気に戻ったら全身が痛む。

 

 「はあ……はあ……」

 

 あれ、体に力が入らない。

 その場にバッタリと倒れ込む。

 

 ああ、そう言えばブルームとして戦う中でこんなに負傷したことはなかったかもしれない。

 血が流れ続け、意識が遠くなっていく。


 「――ムさん!  ブルームさん!」


 ああ、ついに幻聴まで聞こえてきた。

 推しが俺を呼んでいる。

 こんな素晴らしい幻聴を聞きながら死ねるなら悪くない最期かもな。


 そんな風に考えながら、俺は目を閉じた。

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