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3 ヒッカム

「入れ」

 部屋の主の声に応じ、エドウィン中佐はドアを開け入った。だが、声の主はいない。

大きな机と、その前に置かれた椅子には誰も座っていない。

「提督?」と声をかけると、手前の応接セットのソファーから、人影がむくりと起き上がった。

「失礼、気分がすぐれませんか?」

「いや。それより急ぎか。」

 部屋の主、アメリカ太平洋艦隊司令長官、チェスター・ニミッツ大将は言った。

 アメリカ太平洋艦隊は、ハワイ、オワフ島、ヒッカム飛行場内にある。

 いかにもアメリカ的な、不愛想で機能的なコンクリート製の建物内に、太平洋艦隊司令艦の公室(オフィス)はあった。

「いえ。ヨーロッパ戦線のレポートです」

「そうか。」

 ニミッツ大将はそれだけ言ったまま、遠くを見つめるような表情をしている。

「何か、考え事を?」

 エドウィン中佐は、戦争が始まってからの付き合いから、ニミッツ大将が考え事をするとき、ソファーに横になる癖を知っていた。

「いや、他愛もないことだ。」

「これからのことですか?」

「まあな。リーフブロッキングは悪くない。ニューギニアからフィリピンへ向かうなら、陸上基地からの航空援護も受けられる。悪いことじゃない。」

 苦り切った顔でニミッツ大将は言った。

 やはりこの人は紳士だな。エドウィン中佐は上司の気分を慮りつつ、言葉を返した。

「陸上基地からの航空支援、確かに悪くない。こちらの航空兵力があちらのそれを完全に圧倒して、敵の陸兵を容易に掃討できば、ですが。」

「そのとおりだ、中佐。」

 一つ溜息をついて、ニミッツ大将は答えた。

「連中、なかなかしぶとい。

 海軍はゼロをモデルチェンジした奴に、数は少ないが新型も繰り出している。

 しかも、連中の陸軍も新手を繰り出している。率直に言って、トニー(飛燕)は大したことはない。

 だが、ジョージ(疾風)は強い。空だけじゃない。陸軍だってそうだ。」

「提督、よろしいでしょうか。」

「何だ、中佐」

「どうして、我々は戦争をしているのに、非合理的な思考にとらわれるのでしょうか。

 戦力は、単一の目的のもと、集中して運用すべきです。我々が、日本より優れた生産力をもっているとしてもその原則は不変です。我々には、強大な輸送力、洋上航空戦力があります。

 確かに、オレンジ計画は、基地航空隊の支援はうけられない。しかし、我らのタスクフォースは、陸上基地からの援護がなくとも戦えます。

一人の将軍の見栄のために、原則に外れた運用をすることはばかげています。」

 その言葉を聞き、ニミッツ大将は苦く笑いながら答えた。

「それは、結局我々が人間だからだ。何もかも合理的に、理性に従ってというわけにはいかんよ。

 考えてもみたまえ。この戦争が始まるまで、いや、始まってから、日本人はこんなに飛行機をうまく扱って戦争をすることを予想していたか?

 しかも、始まってからも、我々に劣らない飛行機を、前線に出し続けることを予想したか?」

 大きく伸びをしながら、ニミッツ大将は言った。

「さあ、仕事だ。これから、忙しくなる。」

*お話しを、入れ替えます。

本筋を通します…。

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