第二話 町に行くか
男についていくことにしたはいいが、やはり裸足なのが辛い。ゴブリンでもスニーカーを履くレベルで森の中は変なものが落ちている。
見たこともないトゲトゲな木の実はどんなところにでも落ちているし、葉が落ちまくっているせいで地面が見えないので、変な虫を踏みまくる。
フローリングに返してくれと足裏が叫んでいるようだ。そもそも、俺は超インドア派なので外を歩くことに慣れていない。もう帰りたいよ。
足の痛みに耐えながらそんなことを考えていると、気づけば森からひらけた場所になっていた。地面はタイルっぽいし、ザ・異世界といった感じのヨーロッパっぽい建物が立ち並んでいた。男に連れられ、町で最も大きく、そして中央にある建物に入った。
ここはいわゆる冒険者ギルド的なところらしい。なんかキラキラした人たちがいっぱいいる。男女問わずだ。
男は受付のようなところに指をさした。動きを見ればわかる。受付をしてこいと言っている。いくら俺でも受け付けくらいはできるだろう、いざ受付の所まで行き、話しかけたところで思い出した。日本語は通じない。やってしまったと思ったが、受付の人は表情一つ変えずに、受付の人にだけ見えているであろう画面を操作している。やはり奴隷登録とかなのだろうか...。少しの不安を感じながら待っていると受付の人から聞きなれた言語が聞こえてきた。日本語を喋っている。内心驚いたが、過度な反応をして話が飛ぶとよくないと思ったので必死に我慢してみた。絶対にもっと驚いた方がいいと思う。
「転移者の方ですか?」受付の人が言う。
「不本意ながら」
「不本意...?」
受付の人の頭にはきっと無数のはてなが浮かんでいる。当たり前だろう。転移者は本来自分で望んでくるものなのだ。不本意で転移してくる奴なんているわけがない。まあここにいるんだけどな。
受付の人と話しているうちに自分の異変に気付いた。天使の不手際であることを受付の人に伝えようとしたが声が出ない。天使にとって都合が悪い内容を喋ることができない。これは天使や神に関する事は伝えられないようになっているということかと一瞬納得したが、受付の人が転移のことを知っているということはこの世界で転移者はかなりメジャーな存在の可能性が高い。となると転移者が天使によって転移された存在ということが知られていないとなると、転移者は完全に不審者じゃないだろうか。急に現れ自分がこの世界にいる理由を話すことができない。その状態は出来損ないのスパイか何かになってしまう。
自分の中であの天使に対する疑いが勝った。確実に隠蔽工作である。だが伝えられないので諦めるしかない。受付の人は早く受付がしたいようだし、早めに話を聞いてあげよう。