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五話 新しい地球


 


 「%¥¥#@%%」


 また、言葉は分からないが優しい口調で何か気遣う様に声をかけてくる。部屋に一つしかない椅子に座る様に動作で絆され彼女に従って椅子に座ると、彼女は私の無くなった片足を包帯の様なもので包んでくれた。体がほとんど機械でできているらしい私の体にはそれほど痛みはないが彼女はずずっと心配そうに私の顔を見ていた。


 彼女は私の足に包帯を巻いた後、私を置いて家の外に早足で駆けて行った。私はその間彼女の家に中を見渡していた。木造の家の中には沢山の本が積まれていて、家族で使う様な大きめの机の上ですら本の山ができるほどに重ねられていた。端には一つのマグカップが置かれている。天井からはランプが一つ吊るされ長らく使っていないのかそれは埃を被り少し揺れれば落ちてきそうなほどで、窓からは陽の光がちょうど私を照らす様に差し込んでいた。窓の外には美しい花畑がひっそりと咲き誇っていた。


 ふと部屋の端を見やるとそこには全身鏡が置かれていた。今の私はどの様な姿なのだろうそう思った私は椅子に乗ったまま椅子の足を体重で動かす様にして鏡の前まで移動した。鏡に映る私の姿はあの大量のクローンと同じパーツの顔をしていた。髪はクローンと同じ白ではなく長い間海に沈んでいたせいかなぜか少し薄灰色の髪色に変化していた。体は身長160㎝ほどで顔立ちは温和そうな少し幼い顔だった。この容姿から彼女には私がまだ子供に見えたのかもしれない。そして今まで気にしていなかったが私の姿は一糸纏わぬ生まれたままの姿をしていたのだ。この体になった時から服を着ていなかったせいか久しくその事を忘れていたのだ、この姿のまま彼女に肩を貸してもらっていたと思うと少し気恥ずかしくなってしまった。


 鏡の前で自らの容姿を確認していると、一つしかに扉を開けて彼女が戻ってきた。恥ずかしさを感じながらも彼女を見ると、彼女は手に黒色のコートの様なものともう片方の手には太めの木の棒の先にお椀状の物が付いた物が握られていた。彼女は私に近づくと黒いコートの様なものを私の上から被せる様に着せた。黒いコートは幸い私にすっぽりとはまりサイズも完全に一致していた。


 服を着せられると今度はもう片方の手に握られていたお椀状の物がついた棒を私の失った片足に包帯で固定するように付けてくれた。義足としては十分すぎるほどだった。


 その後彼女は私に料理を振る舞ってくれた。普段使いされている様には見えないあちらこちらに本が乗った調理台を使い私に手料理を振る舞った。出来栄えこそ良いとは言いがたくただ努力して作った物が何よりも良い料理だろう。幸い私の体はほとんど機械だったが食事をとることもできるらしい。


 その日の夜彼女は私を家に泊めてくれた。服に義足、料理まで振舞ってもらいとてもいたたまれない気持ちだった。私はなんとか義足で歩き彼女の家を後にしようとしたが慣れない義足では歩くこともままならず結局私はまた彼女の世話になってしまった。


 《一ヶ月後》


 私は結局慣れない義足で歩くことに慣れず彼女の家でお世話になっていた。彼女は何かの研究をしている様で、時たまにどこかへ出かけたと思えば本を持って帰り読み終えれば乱雑に積み重ねていく。食事も出かけた帰りに買ってきたのか出来上がった食事を持ち帰ってきていた。彼女が研究をしている間は私は義足になれる練習をし、そして彼女が研究の手を止める就寝時間前に彼女に言葉を教えてもらった。


 言語表の様なものをもらい私は毎日言葉の練習を続けた。そして一ヶ月もすれば彼女がどんな人間か理解できるだけの時間はあった。一言で表すならそう怠惰といったところだろうか。部屋の隅には掃除がされず埃が溜まり、読み終わった本を乱雑に並べ、私に料理を振る舞った時以外自炊する様子も見せない。確かに根は優しいし容姿も美しい、見ず知らずの私を助けてくれるほどに優しかった。ただ彼女は残念美人だったのだ。めんどくさいことはやらないそういう主義だった。助けてもらった恩もあったが少し呆れてしまうほどに。


 《三ヶ月後》


 三ヶ月が経ち私は義足でもある程度自由に歩ける様になりそして、言葉もある程度は理解できる様になった。そして私を助けてくれた恩人の彼女の名前もわかった。彼女の名前は《セルス》といって、金髪の可憐な女性だ。そして彼女が行なっている研究が何を研究しているのかもわかった。それは魔術だった。よくファンタジーなんかで語られる重大な要素である魔法や魔術、私はあまりそういった本を読んだことはなかったが知識として聞いたことがあった。  


 最初は中世ごろに存在した魔女なんかが使っていた星占いの類かと思っていたが、それとは全く別物の物理法則を完全に無視した代物だった。ここが地球であることに変わりはないはずだが私が眠っている間に魔法という物が生まれてしまったらしい。もしかすると現代日本においても魔法は存在していたのかもしれないが、私にとっては初めて見る物だった。


 セルスは私の目の前で中空に水球を浮かべ、それを器用に動かして見せてくれた。不思議とその水球は落ちることはなく、重力から逆らい中に浮き続けた。セルスは私に魔術を少しだけ教えてくれるといった。言葉の勉強をする時間を半分に減らし残りの半分で魔術を教えてくれるらしい。


 物理法則に反する魔法それはとても興味深い物だった。魔術を教えてもらえることを楽しみにしながら私は今日もセルスの代わりに昼食を作っていた。


 この頃には家事をしないセルスの代わりにほとんどの家事を私がこなしていたのだった。

 


 


 

 


 



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