表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/8

選択の時

智樹の指先は、宙に浮かぶ透明な画面の前で止まったまま、微かに震えていた。


心臓の鼓動がやけにうるさく感じる。

あらゆる選択肢が、一瞬で未来を変える。

そんな重さを、彼はこれまでに感じたことがなかった。


「……本当に、これで……“世界”が変わるのか?」


そう呟くと、未来から来たという若い“祖母”は、静かに頷いた。


「ええ。

そして、どちらを選んでも、あなたの人生は平穏ではいられない。

ただし……“真実”を知ることなく死ぬことだけは避けられるわ」


その瞬間——


パリンッ!


透明な画面に小さなヒビが入った。


NACAの職員の一人が何かの装置を起動させたのだ。

空間にねじれが走り、警告音が鳴る。


「不正干渉を確認。異常な時空転移反応を検出——これ以上の会話を許可しない!」


「まずい、向井智樹の《選択》が遮断される!」


女性の声が鋭くなる。


「選ぶのよ、智樹!今しかない!」


——その瞬間、智樹の中で何かが決壊した。


「俺は……」


彼は右手を伸ばし、画面の下側、**『真実を知り、未来の崩壊を止めるために戦う』**をタップした。


——ピッ。


選択が確定された瞬間、教室の空気が変わった。

床がきしみ、壁のポスターがバサバサと剥がれ落ちていく。

重力すらゆがんでいるように感じる。


《確認完了。プレイヤー:向井智樹、レベル0/分類:システム外カード保持者。記録開始。》


不気味な電子音声が、空中から響いた。


「記録……?システム外……?」


智樹が呆然としていると、若き祖母が短く説明した。


「あなたが選んだ選択肢は、《ゲームの開始》を意味するの。

“カードシステム”はね、私たち人間が作ったものじゃない。

外部から、人類を“管理するため”に埋め込まれた……」


「……外部?」


「そう。真の黒幕は、この世界の外側にある存在たちよ。

『能力』は、人間の可能性を広げる道具じゃない。

分断し、従わせ、そして最終的に“淘汰”するためのものだったの」


智樹の背筋が冷たくなる。


あの「日本カースト法」すら、ただの“手段”だったというのか。


「だからこそ、あなたが『選んだ』ことには意味がある」


女性は、彼のカードを取り出し、そっと触れた。


すると、智樹のカードが白く発光し、変化を始めた。


カード表面には、こう刻まれていた:


【Class:Unknown】

【Code:μ(ミュー)】

【権限:オーバーライド/他カードの一時停止・干渉・破壊】


教室内のNACA職員が一斉にざわめいた。


「……コードミュー!?そんな分類、政府のデータベースには……!」


「存在しない。だから“システム外”なんだよ」


不敵に笑ったのは準だった。


智樹が驚いて彼を見やると、準は軽くウィンクした。


「俺も、少しだけ察してた。……というより、ずっと前から準備してた。

お前と同じ日、同じ“祖母”から、違うカードを受け取ったからな」


「……は?」


「お前の“祖母”は、未来を見た。そして、俺の祖母も、未来を“書き換える”力を持ってた。」


その瞬間、準の手元にも、カードが現れる。

それは黒く、そして脈打つように脈動していた。


【Class:Rewriteリライト

【Code:Ω(オメガ)】

【権限:事象改変/局所歴史操作】


「どうやら、俺たちは——最初から、同じゲームのプレイヤーだったらしい」


その瞬間、天井が爆音と共に砕け、巨大な機械生命体のようなものが、学校に降下してきた。


機械の瞳が、赤く光る。


《システム外プレイヤー確認。排除プロトコル、発動》


智樹と準、そして謎の女性は、その異形と対峙する。


智樹は、つぶやいた。


「だったら……この“ゲーム”に、勝ってやる。

誰もが自由に生きられる未来を、俺が……」


《Next Chapter:起動》


──そして、“世界”は大きく動き出した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ