能力
智樹は「カード」を受け継いだ。すると、数日もたたないうちに、ある変化がおきた。ぱっとみただけで、その人物のことをちらりと見ると、十分後のことが、わかった。そして、凝視すると人生のおおよその流れ、そして、死に至る瞬間まで予期することが、可能だった。彼はまず、試しに両親を予知してみようと考えた。その結果、母親は八十歳で老衰、父は、六十五歳で肺がんによって、亡くなってしまうらしい。智樹は、思っているより親が早くいなくなってしまうことにショックをうけた。しかし、これは、あくまで予知であり、未来を変えることはいくらでも可能だ。
「父さん、もういい年なんだから、たばこ減らしなよ。癌とかになられたら、心配だよ。」
彼は、できるだけ父の神経を逆なでしないよう細心の注意を払ってそう言った。すると、
「心配ばかりかけてるのは、お前のほうだろ。いつの間にか生意気な口を利くようになったもんだ。」
失敗したと思ったが、
「でも、たばこが体に悪いのは確かだからな。今日は本数を減らすか。」
と話を聞いてくれたのだ。予想外だったが、うれしかった。自分の「カード」の能力一つで未来が多少なりとも変えられるという事実が信じられなかった。