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色染師  作者: 黄永 るり
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色染師・若葉の物語

 幼いころ若葉は自分には魔法が使えると思っていた。

母親がメディアに引っ張りだこになるくらいの人気占い師だっただけに、母の仕事の様子を見るにつけ、母の仕事が絵本で見る魔法使いのように思えて仕方がなかった。

 だけど、ある時魔法は自分には使えないものなのだとわかってしまった。

 色々、心で願ったり、願いを口に出したりしておもちゃのステッキも一生懸命振ってみたが、結局は現実は若葉が望まない方向へ進んでいってしまった。なんとかしようと自分一人で必死になった時もあったが、どうにもならなかった。

 両親は離婚して、若葉と妹は父親に引き取られることになり、むりやり魔法使いの母親から引き離されてしまった。

 けどその後も自分が魔法使いになれば現実が変えられると思って、あきらめずに密かにその方法を探していた。

 そして中学生の時、気づいた。

 母親と同じ占い師になれば、少なくとも魔法使いの端くれになれるのではないかと考えにいたり、母の親友でもあり母とともに同じ星読みの師匠に学んだ人に、星読みを教えてくれるように、自分から依頼しに行った。

 母の親友は、若葉が中学校を卒業したら教えてあげると約束してくれた。

 星読み以外にも魔法使いになる道を探していて、そのために中学を卒業したらバイトか何かをしながら、学びたいことにお金をつぎ込もうと思って当たり前のような高校進学を一切当時の若葉は考えていなかった。

 元々、転校前の小学校では母のことで言われないいじめを体験し、転校先の小学校でいじめられ、小学校から中学校まで保健室登校をしていたせいか、どうも友人づきあいが苦手になってしまった。

 だから当たり前の進学何て考えも及ばなかったのだ。

 だから、三者面談で若葉の考えを聞いた担任の先生も父親も驚いた顔をしていた。

 父親からせめて高校は進学してくれ、進学費用は心配しなくて良いからと必死に懇願されたが、若葉の意思は揺るがなかった。

 高校進学に意味を見出せなかったから。

 だがけどここで思いもよらぬところから父に助け舟が出された。

若葉から三者面談での話を聞いた母の親友が、星読みを教える条件を中学卒業から高校進学へ条件を変更してきたのだ。そうなってしまっては若葉にはどうしようもないので、渋々、進学を決めた。そもそも母の親友から以外に星読みを教わろうとは思っていなかったから、母の親友の意向に素直に従った。

 担任が勧めてくれた合格できそうな高校を受験して進学しようと思っていたが、見当もしていなかった高校から入学の案内がきた。

 鎌倉市内にある私立鎌倉彩明学園高等部。

 鎌倉市内にあって幼稚園から大学まである学園で、ただ中等部から高等部に内部進学できる人数がやたら限られていて、高等部の全生徒は入試課のスタッフと学園関係者が一人ずつ所属中学校経由で受験案内をしにくるという謎のシステムになっている。だから、個人的に入学したいと思っていてもすんなり入れる場合もあるが、基本的にはある才能がないと入学できない高校だった。

 その高校では星読みとは別の魔法のようなことが習えるし使えると聞いて、眉をひそめた父親より先に飛びついた。

 父親は納得してはいなかったが、若葉がここなら進学しても良いと高校進学にさらに前向きになったし、高校じたいも自宅から無理なく通える範囲の学校だったので最終的には受験も入学も許してくれた。

 若葉は初めて父親に感謝した。

 何と言っても若葉の親権者は父だ。父の許可がないと受験も進学もできない。

 推薦入試に合格し、高校に入学できたことで、さらに若葉の期待が高まった。

(魔法使いになれたら私は…)

 たった一つの願いを叶えられるかもしれない。

 その願いはもはや両親のためではないものになってしまっているけど。


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