ハゲと泉の女神様
超短編です。
どうぞ御笑納ください。
「あなたが落としたのは金の養毛剤ですか? それとも銀の養毛剤ですか?」
綺麗な湧き水で有名なこの池に、女神が本当に存在するらしいとは聞いていた。
気まぐれに姿を現わすことがあるとも。
が、実際に目にすると、その輝かんばかりの美しさに言葉を失う。
さすがに女神だなあ、ありがたやありがたや。
それにしてもたまたま養毛剤のビンを蹴り込んだ時に出てくるとは。
何てツイてないんだろう。
いや、諦める必要はないか。
せっかくの邂逅なのだ。
質問には真剣に答えよう。
「普通の養毛剤です」
女神様は慈悲深いらしい。
薄毛の悩みを一発で解消してくれる、すごい養毛剤をくれるかもしれない。
期待を込めて見つめるが、きまり悪げに目を逸らす女神様。
「そ、そうでしたか。今生ではムリだと思いますけど、決して気を落とさないでくださいね。髪だけが人生ではありませんから。それでは」
そそくさと水の中に姿を消してしまった。
あれっ、金と銀の養毛剤をもらえるルールじゃなかったのかな?
励まされただけだぞ?
虚を突かれてしばし呆然としていた時にふと思った。
……考えてみればハゲ増すって縁起でもないな。
「金色銀色じゃなくて、紫の養毛剤は?」
「紫ですか……」
こうして生まれたのが紫電●であった(うそ)。
お読みいただいてありがとうございます。
↓で★評価してくだされば、あなたの髪がフサフサツヤツヤになりますように祈りを捧げておきます。