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クライセン艦隊とルディラン艦隊 第1巻  作者: 妄子《もうす》
1.第3次アラリオン海海戦
9/143

その9

「!!!」

 ただ、意外な事にオーマは、ヤーデンの言葉を聞いてハッとした表情になった。


 何かを感じ取ったようだった。


 そして、また考え込んでしまった。


 ヤーデンとヘンデリックは、不安そうに互いの顔を見合わせた。


「そうなると、これは思った以上に厄介な相手やも知れぬな……」

 オーマは今度は深刻そうな顔になった。


「どういう事です?」

 ヤーデンはさっきから考えもしない方向に話が進んでいくので、当惑しっぱなしだった。


「はっきり言って、今回の戦いは戦略的に何の意味もない。

 それを意識しての行動だとしたら……」

 オーマは腕組みをして考え込んでしまった。


 ある意味、このオーマの解釈は的を射ているのだろう。


 ただ、やはりなんかズレている事は間違いが無いだろう。


 エリオの才能を的確に評価しているが、考えている事は丸で分かっていないと言った所か……。


 いや、そもそもエリオはそこまで考えているのだろうか?


「そうなんでしょうか……」

 ヤーデンはここまで来ると、当惑を通り過ぎて、呆れ始めていた。


 どちらかと言うと、こちらの反応の方がエリオをよく評価していると思われる。


 才能を評価した上で、でも、それを発揮しようとしていないよねと感じているのだろう。


 要するに、オーマに対して、考えすぎていますよねと思っていた。


 だが、エリオの行動が、状況を読みにくくしているのは事実である。


「……」

 オーマは無言のまま考え込んでいた。


 エリオの考えを解明出来る切っ掛けがないからだった。


 ヤーデンの方は、無言のままのオーマを見詰めて、話が進まない事を懸念した。


「では、このままホルディム艦隊が敗退したら、撤退するという事でしょうか?」

 ヤーデンは既にホルディム艦隊の敗退を予想していた。


 楽観的すぎかも知れないが、状況からそう思うのは無理のないことだろう。


 ただし、ヤーデン自身は楽観論という認識はなかった。


 今後の展開に対する心構えを指揮官と事前に摺り合わせておきたいとの考えからの質問に過ぎなかった。


 そして、話を進め、変化に備えたかっただけだったのだ。


「彼としてはそうしたい所だろうが、我々の追撃により、撤退は簡単ではないだろうね」

 オーマはヤーデンの楽観論を注意せずに、その後の展開について淡々と話をした。


 淡々と話したのは得体の知れないものを感じていたからだった。


「そうでしょうな……」

 ヤーデンの方はオーマと意見の一致をみたので安心し始めた。


 何より、思考停止の状態から抜け出せたのは良かったと感じていた。


 とは言え、ヤーデン自身も変な議論をしているとも感じていた。


「今回は、彼にとって主導権が握れない初めての戦いかも知れない。

 彼の力量を推し量るにはいい戦いかも知れないな」

 オーマはある意味他人事のようにそう言った。


「……」

 ヤーデンはそれに対して何を答えていいか分からなく、沈黙した。


 意見の一致をみたものの、得体の知れない何かを感じ取ったのはヤーデンも一緒だったからだ。


 そもそも、理論的に説明するオーマにしては、話があちらこちらに飛びすぎているのだった。


 ドン、ドン……。


「ルドリフ艦隊、発砲!」

 ヘンデリックから状況報告があった。


(さて、戦いが始まったな……)

 オーマはそう思うと、視線をルドリフ艦隊の方へと向けた。


 - 艦隊配置 -


 As SC   リーラン王国側

   EC


     Hr

     ×

     RH ウサス帝国・バルディオン王国側

   Hi

 OR


 As:アスウェル艦隊、SC:サリオ艦隊(旗艦)、Hr:ホルディム艦隊

 EC:エリオ艦隊

 OR:オーマ艦隊、Hi:ハイゼル艦隊(旗艦)、RH:ルドリフ艦隊

 ---


 第3次アラリオン海海戦は本当の意味ではここから始まったのだった。


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