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クライセン艦隊とルディラン艦隊 第1巻  作者: 妄子《もうす》
1.第3次アラリオン海海戦

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24/143

その24

「ルディラン艦隊、現海域を離れていきます。

 総旗艦艦隊の方へ向かう模様」

 シャルスがそう報告してきた。


「どうなさいます?

 追い掛けますか?」

 マイルスターは和やかにそう聞いてきた。


「とりあえずは放っておこう」

 エリオはそう答えた。


 これは些かどころではなく、かなり偉そうな答えだ。


 現状、4倍の敵と戦闘を繰り広げているので、そんな余裕がないことは明らかだった。


 先手を取って、押し込んではいるものの、2隻を撃沈した後は膠着状態に陥っていた。


 砲撃精度、機動力、運動性能など、どれをとってもエリオ艦隊がかなり上回っていた。


 しかし、数的不利というのはかなりのハンデである。


 それらの条件が上回っていたとしても、膠着状態にするのがやっとのようだった。


 ハイゼル候は老練な提督らしく、エリオの攻勢を無理せずに受け流す事に徹していた。


 数の有利を活かして、損害を意に介せずと言った形で戦うという事は、やはりしなかった。


 守備を強化しながら、敵が疲れるのを待つと言った作戦を採っていた。


 嫌な戦い方である。


 ハイゼル艦隊のしつこさに、エリオ艦隊全体が焦れてきていた。


「無理に打ち破ろうとするな!

 敵の強烈な反撃に遭うぞ!」

 エリオは艦隊の気持ちを察するかのように、的確な艦隊の指揮をしていた。


 エリオ艦隊は焦れてきていたが、エリオは全く焦れていなかった。


 むしろ、寡兵で敵を足止めさえ出来れば、良いと思っていたので、出来すぎと思っていた。


 エリオの指示により、エリオ艦隊は強引な攻撃に出ようとしたのを自重した。


 命令がすぐに反映される。


 如何に訓練が行き届いているかがよく分かる事例だった。


 今は、エリオの指示通り、崩れているか崩れていないか分からないような微妙な陣形を立て直し、絶妙な艦列に戻った。


 見た目はあまり変わらないのだが、艦隊の空気が一変したのが読み取れた。


 今度は、ハイゼル艦隊の攻撃が揺らぎ、ゆっくりと後退していた。


 それに釣られて、エリオ艦隊が前に出ようとした。


「敵の誘いに乗るな!

 十字砲火に晒されるぞ!」

 今度もエリオは間髪置かずに、艦隊の軽挙を戒めた。


 その命令により、エリオ艦隊は前に出る前にその場に踏み止まった。


 敵も色々仕掛けてきていた。


 それには明確な意図が読み取れた。


「艦隊、敵艦隊右翼方向に移動。

 そのまま敵艦隊の右翼に砲火を集中せよ」

 エリオはすぐに新しい命令を出した。


 この辺の駆け引きは、エリオ艦隊とハイゼル艦隊の主導権争いと言った感じだった。


 よって、エリオは敵に合わせる事をしなかった。


 寡兵故に、次々と策を繰り出して行く必要があった。


 そうでないと、一気に戦況をひっくり返される。


 しかしながら、ヘイゼル艦隊の方も慌てずに、エリオの攻勢を受け流していた。


 膠着状態が更に長引いた。


「よし、そのまま移動を続けて、回り込め!」

 エリオの指示により、エリオ艦隊は敵右翼の前に止まるのではなく、更に回り込んだ。


 敵右翼はそれに対応したが、厚みがなかった。


 本来ならば、右翼部隊だけではなく、中央の部隊が連携すべき所だった。


 だが、エリオ艦隊を誘い込もうと、下がった為に、対応が遅れた。


 当然、この好機をエリオ艦隊が見逃す筈がなかった。


 - 艦隊配置(エリオ艦隊vsハイゼル艦隊) -


     Hi×EC

   HiHi


 EC:エリオ艦隊、Hi:ハイゼル艦隊(広がり)

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