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クライセン艦隊とルディラン艦隊 第1巻  作者: 妄子《もうす》
1.第3次アラリオン海海戦

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23/143

その23

「ハイゼル候より伝令。

 ルディラン艦隊はルドリフ艦隊の援護に向かってくれとの事です」

 ヘンデリックがそう報告してきた。


「まあ、常識的にはそうなりますね」

 ヤーデンはそう反応した。


 エリオ艦隊にハイゼル艦隊が苦戦しているとは言え、ここでルディラン艦隊まで参戦したら、戦力バランスが著しく悪くなる。


 先手を取られたとは言え、ハイゼル艦隊の総数はエリオ艦隊のそれを大きく上回るので、問題はないだろう。


「了解したと、ハイゼル候に伝えてくれ」

 オーマはヘンデリックにそう言った。


 ルディラン艦隊はヘイゼル艦隊と入れ替わるように、ヘイゼル艦隊の前に出た。


 そして、そのまま進路をルドリフ艦隊が戦っている海域に向けた。


「それにしても、緒戦の優勢が完全に覆されたといった感じですな」

 ヤーデンは参ったと言った感じで言った。


 数の上ではウサス・バルディオン連合艦隊が有利である。

 

 だが、兵力配置により劣勢に陥りつつあった。


 ルドリフ艦隊は孤立し、包囲されていた。


 ハイゼル艦隊は寡兵に手こずっていた。


 ルディラン艦隊は遊兵になっている。


 何とも不味い戦い方になってしまった。


「……」

 オーマはヤーデンと同じ考えではあったが、それを敢えて口に出す気にはならなかった。


「閣下が全体を指揮なされていたら、こんな状況にはなりませんでしたな」

 ヤーデンはオーマの反応がなかったのでつい口走ってしまった。


 言った後にしまったという顔をした。


「……」

 オーマは聞き流した。


「いや、はや、これは余計な事を言いました」

 ヤーデンはオーマの反応がないので、余計しまったという感じだった。


「まあ、私だったら、戦わずに撤退していただろう……」

 オーマはぼそっとそう言った。


 ヤーデンの失言に対しては特に何も言わなかった。


「左様ですか……」

 ヤーデンもそれ以上は何も言わなかった。


 ……。


 2人の間に妙な沈黙が訪れた。


 それがこの海戦の戦略的に意味がない事を如実に表しているようだった。


 奇しくも、当代一の名将がエリオと同じ考えを持っていた。


 そして、それが適わず、お互い、戦いに引きずり込まれていた。


(主導権がない戦いは辛いものだな……)

とオーマはヤーデンとのやり取りでそう思っていたが、

(しかし、それを無理矢理取り戻す手腕は驚くべきものがあるな)

と口には出さないが、エリオを高く評価していた。


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