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クライセン艦隊とルディラン艦隊 第1巻  作者: 妄子《もうす》
1.第3次アラリオン海海戦

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その18

 - 艦隊配置 -

       Hr

 As SC     リーラン王国側

   EC

    RH ウサス帝国・バルディオン王国側

    Hi

   OR


 As:アスウェル艦隊、SC:サリオ艦隊(旗艦)、Hr:ホルディム艦隊

 EC:エリオ艦隊

 OR:オーマ艦隊、Hi:ハイゼル艦隊(旗艦)、RH:ルドリフ艦隊

 ---


「敵が動かんな……」

 ルドリフは訝しげに言った。


 ルドリフが見つめる先のクライセン艦隊の動きは全くなかった。


 ただ、波に揺られているだけだった。


 対して、ルドリフ艦隊は急速に接近していた。


「小僧の策謀でしょうか?」

 エンリックは小僧ことエリオを警戒していた。


「策謀だろうが、この期に及んでこの不利な状況を引っ切り返せるとは思えない。

 むしろ、動かない事でこちらの警戒を誘い、逃げる算段をしているのでは無いか」

 ルドリフは訝しがりながらも自分の考えを述べた。


 楽観的な見方かも知れないが、これまでのエリオとの対戦では先制され、そのまま逃げられていたので、そう言った結論に達したのだろう。


 実際、エリオもサリオに止められていなかったら、逃げていたのは言うまでもなかった。


「確かにそう思えなくはありませんが……」

 エンリックはまだ警戒していた。


「小僧を馬鹿にして言っている訳ではない。

 撤退こそが戦いの中で最も難しい。

 現状、我らの兵力が勝っている。

 また、我が艦隊、父上の艦隊、ルディラン艦隊と3段構えの攻勢に晒される事になるだろう。

 その事自体は小僧が把握できていない訳ではあるまい」

 ルドリフは自説の根拠を切々と述べた。


 あれだけ毛嫌いしているのに、エリオをしっかりと評価していた。


 この辺り、ルドリフはやはり良将と言われる所以なのだろう。


「閣下のおっしゃる通りでございます」

 エンリックはそう言った。


 だが、こういった説明を長々するルドリフを初めて見たので、少し不安になった。


「まあ、何にせよ、今は敵との距離を詰め、攻勢をかけるのは定石だろう」

 ルドリフは自分でも難しく考えすぎたと感じていたので、単純化する事にした。


「おっしゃる通りでございます」

 エンリックは今度はルドリフに素直に同意した。


「敵艦隊、射程圏内に入ります」

 ステマネが報告してきた。


「よし、まずは小僧と本隊との間を分断する。

 砲撃開始!」

 ルドリフはすぐに命令を下した。


 どっどっどーん!!!


 統制が取れた砲撃がエリオ艦隊を襲うと見えた。


「敵前衛艦隊、向かってきます!」

 ステマネが驚きの声で報告した。


「!!?」

「???」

 ルドリフとエンリックはその報告に耳を疑った。


 そして、接近してくる小集団を見て、目を疑った。


 エリオ艦隊はこちらの砲撃をくぐり抜けるように、急接近してきていた。


「敵、本隊の発砲を確認!」

 ステマネが矢継ぎ早に次の報告をしてきた。


 ドン、ドン……。


 ヒューン、ヒューン……。


 ばしゃ、ばしゃ……。


 近くの海面に多く弾が着弾した。


 ルドルフ艦隊は、動揺していた。


 ホルディム艦隊とは違う規律のある砲撃にビビった訳ではなかった。


 この位の砲撃戦はよくある事だった。


 ルドリフ艦隊の動揺を誘ったのは、一直線にこちらに向かってくるエリオ艦隊の動きだった。


 これは予想外だったからだ。


「狼狽えるな!

 寡兵がこちらに向かっているに過ぎない。

 まずは、小僧の艦隊を撃滅する!」

 ルドリフは秩序の回復と、次の命令を下した。


 ルドルフの下した決断はある意味正しかった。


 どっどっどーん!!!


 ルドリフ艦隊はすぐに秩序を取り戻し、エリオ艦隊に狙いを定めて、砲撃を開始した。


 だが、どうも勝手が違っていた。


 エリオ艦隊は動きが速く、的が小さい。


 なので、容易に捉える事ができなかった。


 そこに、嫌がらせのような旗艦艦隊の砲撃。


 それにより、エリオ艦隊の接近を許していた。


「当てようとするな!

 奴らの足を止めるんだ!」

 ルドリフは見かねて命令を変更した。


 どっどっどーん!!!


 ルドリフ艦隊の砲撃はすぐに目標を変更したが、それでも上手く行かなかった。


 撃つ度に修正を行うのだが、エリオ艦隊の足を全く止められなかった。


 そして、エリオ艦隊はそのままルドリフ艦隊の横を通り過ぎていった。


 両艦隊とも速度を落とさずに、すれ違った為、交錯する時間は短かった。


 ドン、ドン……。


 だが、その一瞬の時間で、エリオ艦隊は初めての砲撃をルドリフ艦隊に行った。


 ドッカーン!


「艦尾に直撃弾!」

 ステマネが大声で叫んだ。


 砲弾の一発がルドリフ艦隊の旗艦に命中した。


 ぐらぐら、ぎぃぎぃ……。


 船体が大きく揺さぶられ、ルドリフもエンリックも甲板に叩き付けられそうになるのを踏ん張っていた。


 揺れの方は幸いにも徐々に治まっていた。


「艦尾に損傷、なれど航行に支障なし」

 ステマネが再度叫んだ。


 ルドリフもエンリックも一安心だった。


 だが、同時にやられたといった感じだった。


 そして、これは明らかに挑発だとルドリフは思った。


 この挑発に乗り、反転してエリオ艦隊を追って、叩きのめしたい衝動に駆られたのは、ルドリフだけではなかっただろう。


「あの小僧をこの手で叩きのめしたいが、それは父上に譲ろう……」

 ルドリフは不気味なほど冷静な口調でそう言った。


 エンリックを始め、この艦上にいた皆がルドリフに対して戦慄さえ覚えた。


「今は目の前の敵に集中するぞ!」

 ルドリフは今度はそう叫んだ。


 うぁっー!!


 旗艦だけではなく、他の艦からも歓声が上がった。


 ルドリフ艦隊とサリオ艦隊の本気の砲撃戦が始まろうとしていた。


 - 艦隊配置 -

       Hr

 As SC     リーラン王国側

   

    RH×EC

    Hi    ウサス帝国・バルディオン王国側

   OR


 As:アスウェル艦隊、SC:サリオ艦隊(旗艦)、Hr:ホルディム艦隊

 EC:エリオ艦隊

 OR:オーマ艦隊、Hi:ハイゼル艦隊(旗艦)、RH:ルドリフ艦隊

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