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クライセン艦隊とルディラン艦隊 第1巻  作者: 妄子《もうす》
13.セッフィールド島沖海戦

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その3

「閣下、セッフィールド島沖に敵艦隊を発見!」

 慌てて男が報告してきた。


 彼の名はサムサで、報告している相手はベレス侯爵。


 侯爵はスヴィア王国第4艦隊の司令官だった。


 この艦隊は無論、サラサ艦隊と相対する相手だ。


 スヴィア王国の別働隊であるが、戦いの意味合いから考えると、今回の戦いの主力とも言えた。


 その理由は、先に戦いを始めた軍に比べると少ないが、作戦の重要性では断然上だからである。


「……」

 侯爵は報告を聞いてはいたが、怪訝そうな表情を浮かべていただけで、無言だった。


「作戦予定とは違いますな」

 隣にいた参謀長のロザムは司令官の気持ちを代弁するかのように、話し掛けていた。


「……」

 司令官はその言葉にも無言で、ただ頷くだけだった。


 特に、指示がなかったので、艦隊はそのまま直進していた。


 そして、侯爵の目にも敵艦隊が視認できた。


「艦隊、一時停止」

 侯爵は徐に指示を出した。


「艦隊、一時停止!」

 サムサの方は、思わぬ指示だった為、侯爵の様子とは裏腹に、慌てて指示し始めた感じだった。


「閣下……」

 ロザムは侯爵に命令の意図を聞こうとしたが、侯爵が苦々しい表情に変わったので止めた。


「敵は何故ここにいるのか?

 ロドリンゴ侯爵は失敗したのか?」

 侯爵の方が、参謀長より先に質問した。


 ロドリンゴ侯爵は、マグロッド近海で戦っているスヴィア王国艦隊を率いている人物だった。


「報告は受けていませんので、分かりかねます」

 ロザムは困惑していた。


「敵は島を離れたという報告は受けたが、偽装だったという事か?」

 侯爵は尚も現状を把握しようと、質問した。


「はっ、現状を見る限り、仰る通りかと」

 ロザムの方も現状が把握できていなかったので、見える範囲での答えしか出来なかった。


「それでは当初の作戦が狂うではないか……」

 侯爵は苦々しいともやれやれと言った感じの複雑な心境だった。


「はい、仰る通りでございます。

 当初の作戦は破綻しました。

 この後は、作戦2に移行するか、撤退するかの二択かと思われます」

 ロザムは艦隊を停止したままでは、いかんとも仕方がないと思い、侯爵に決断を求めてきた。


「うむ……」

 侯爵は即断しなかった。


 まとまった数の敵艦隊が出現した以上、撤退も視野に入る。


 ただ、今回の作戦の要と言える役割を任されている。


 一戦もせずに、撤退していいものかという考えもあった。


「閣下……」

 ロザムは決断しかねている司令官に再び決断を求めようとした。


 この状況はあまりにも危険と感じたからだ。


「敵の数は?」

 侯爵は結果的にロザムの発言を遮る格好になった。


「16隻です」

 サムサは侯爵の下に駆け戻りながらそう報告した。


「うむ……」

 侯爵は報告を受けると、考え込むように腕組みをした。


 第4艦隊は25隻、その後方には陸戦部隊を輸送する艦隊がいた。


「閣下……」

 思いの他、時間が掛かったので、ロザムは再び声を掛けた。


「よし、敵艦隊を蹴散らし、上陸作戦を決行する!」

 侯爵はそう結論を出した。


 数の上で、有利なのでそう決断したのは明白だった。


「砲撃戦、準備!」

 侯爵はこれまでの煮え切れない態度から一変した。


「砲撃戦、準備!」

 サムサは復唱して、伝令係に指示を出した。


 ロザムはそれを安堵したように見詰めていた。


 ベレス艦隊は、サラサ艦隊の出現により撤退するという選択肢はあった。


 だが、攻撃したのは、セッフィールド島が戦略的に重要な位置にあるからだ。


 ここを攻略した場合、橋頭堡として最適であり、侵略の拠点として絶好の位置にある。


 なので、今回、スヴィア王国はここを攻める事にしたのだった。


 サラサの場合、帝国の防衛に関心が無かったので、ここに来たのは単なる偶然だった。


 そう考えると、スヴィア王国にとっては不運であった。


 だが、更に不運なのは、セッフィールド島を示された瞬間に、サラサにはその島の重要性が瞬時に分かった事である。


 そして、こうして警戒していたのだった。


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