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クライセン艦隊とルディラン艦隊 第1巻  作者: 妄子《もうす》
13.セッフィールド島沖海戦

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その1

挿絵(By みてみん)


 例年だと、スヴィア王国の越境により、都市マグロッドが攻撃される事から始まる。


 マグロッドの城主はリーラック伯爵。


 普段は数千の城兵で国境警備を担っていた。


 そこに、本国の援軍として、軍の総司令官で、皇帝の従兄であるマイラック公爵が2万の軍勢を率いて到着した。


 彼が、この紛争のウサス・バルディオン連合軍の総指揮を執る事になる。


 北東方向に離れた都市ミュラドラの城主はスベリア伯爵。


 彼はこの紛争の後方支援を担う事になっていた。


 その都市に、バルディオン王国からの援軍として、サリドラン候が着陣していた。


 彼の担当である第3軍管区を主力として、他の軍管区から兵を集め、その数は1万。


 都市アマールはウサス帝国南方艦隊の本拠地で、ケイベル侯爵の領地である。


 ここに、44隻の艦隊が集結していた。


 サラサはその都市アマールの南にある離島セッフィールド島に21隻の艦隊を率いて、滞在していた。


 戦場と目される都市マグロッドから一番離れた位置にいた。


 対するスヴィア王国は都市ヴァーカッグを拠点として、ウサス帝国領内へ侵攻を計画していた。


 戦力は現在のところ、不明である。


「お嬢様!」

 甲板で微睡んでいたサラサにバンデリックが走り寄ってきた。


「うげぇ!!」

 バンデリックはサラサの前に立ち止まると、間髪入れずに腹パンを喰らっていた。


 相変わらず、良いパンチだった。


 しかし、バンデリックは、いつまで経っても学習しなかった。


「か、閣下……」

 バンデリックは腹を押さえながら苦痛の表情を浮かべていた。


「何?」

 サラサは満足そうに、文字通り、上から目線で見下していた。


「ウサス海軍とスヴィア海軍の間で戦闘が勃発。

 両国が戦闘状況に入ったとの事です」

 バンデリックは、苦しいながらも姿勢を正して、そう報告した。


「そう……」

 サラサの反応はかなりあっさりとしていた。


 まあ、想定内なのだろう。


 とは言え、例年だと、スヴィア陸軍がマグロッドを攻撃してから始まるのが常だった。


 この時、既に異変が起きていたのは間違えがなかった。


 その異変をサラサは察知していたが、特に反応は示さなかった。


「閣下?」

 バンデリックはサラサの意外な反応に首を傾げた。


「その報告はどこから来たもの?」

 サラサは意外な反応をしているバンデリックに更に意外な質問をしてきた。


「……帝国からもたらされてものです」

 バンデリックはサラサの質問が最初理解が出来なかった為、答えが一瞬遅れた。


「うん、そう……」

とサラサは今度は少し困った表情になってから、

「うちの哨戒網はまだ完成していないのね」

とボソッと言った。


「海戦場所はマグロッド沖で、我が軍の哨戒網の外です」

 バンデリックは、サラサの態度に対して疑問に持ちながらもそう報告した。


「……」

 サラサは黙って考え込んだ。


 頭の中には地図が浮かび、両軍の配置状況を思い浮かべていた。


 確かに、自軍の哨戒網の外だった。


(支援艦をそれなりに連れてきたはいるが、まだまだ数が足りない……)

 サラサは暗澹たる思いに駆られていた。


 現在、ルディラン家には他国の領海深くまで哨戒できるそれ程の力はなかった。


 今回は急遽連れてきたものだった。


 オーマも出来る限り協力はしてくれたものの、現状が精一杯どころか、限界を超えていた。


 だが、同時に、現在の哨戒網に関心が向いた。


「艦隊をいつでも出撃できる体制に」

 サラサは考えながら言ったので、いつもとは違い、ボソッと言った感じになっていた。


「はい……」

 バンデリックはいつもとは違う煮えきれない態度のサラサを見て、曖昧な返事になった。


 ……。


 いつもだったら、叱咤が飛んでくる筈が、何故か沈黙が訪れてしまった。


「閣下、艦隊を出撃させて、ケイベル侯爵にアピールなさるのですか?」

 沈黙に戸惑ったバンデリックは勇み足気味に勇ましくそう聞いてみた。


 まだ、声も掛かっていない状況で出撃する事は、そうとしか思えなかった。


 だが、同時に、いつもと違うのでそうとは限らないとも感じていた。


「そうじゃないわよ。

 入港したまま、やられるのはごめんなだけよ」

 サラサは意外なほど真面目にそう答えた。


「了解しました」

 バンデリックはそう言うと、各所に指示を出す為に敬礼して、その場を離れた。


(お嬢様はいつもとは違うなぁ……)

 バンデリックは少し不安に思いながら歩いていた。


 だが、その不安は歩いているうちにすぐに消えてしまった。


(むしろ、エリオ・クライセンの戦いぶりを目の当たりにして、影響を受けたと言う事かな?)

 バンデリックはそう思った。


 その影響は良い方向に向かっていると感じていた。


 実際、これまでの采配は今までよりきめ細かく、思慮深いものになっていたからだった。


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