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クライセン艦隊とルディラン艦隊 第1巻  作者: 妄子《もうす》
12.ルディラン家の事情

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その1

12.ルディラン家の事情


 過去の話が長くなってしまったが、話を講和会議後に戻す。


 そして、サラサの話である。


 サラサは現在16歳、ルディラン侯爵家の跡継ぎである。


 そして、バルディオン王国海軍の副司令官であり、階級は准将。


 ルディラン侯爵家の本拠地であるワタトラの名目上の市長であり、ワタトラ伯爵の爵位を有している。


 バルディオン王国では、ほとんど例がない女性将官である。


 バルディオン王国では、女性将官どころか、女性兵士もほとんど存在しない。


 まあ、この事に関しては、他国でも同じような傾向が見られる。


 リーラン王国の方が、特殊である。


 更に、美少女であるが、銀髪に赤銅色の瞳を有している事からその容貌からも嫌われる原因となっている。


 また、ルディラン家は他の5侯爵家と違って、元々力を持った一族ではなかった。


 バルディオン王国にまともな海軍戦力がなかった。


 それを打開する為に、ルディラン家を国中でバックアップして、今の海軍戦力に育てた経緯があった。


 また、陸軍に並ぶ戦力として、海軍として成立させた。


 この事により、ルディラン家は、5侯爵家の筆頭であるシルフィラン侯爵家と同格の扱いとなっている。


 つまり、自らの力で今の地位を得た他の侯爵家からすると、あまり気持ちの良い話ではなかった。


 そんな状況下で、惣領であるオーマは上手く立ち回っており、実力も示している。


 そして、国王からの信任も厚い。


 国王自体にはそれ程の権威を感じている者は多くはない。


 だが、国王の権威を否定する事は国の結束を著しく損なう為に、それはタブー視されていた。


 なので、信任の厚いオーマもまた、あからさまに非難する者はいなかった。


 以上の事を踏まえると、風当たりを強くされる原因は結構あり、まだまだその実力が認められていないサラサが否応なしにそれに晒される。


 こうして見ると、ホルディム伯に頭を抑えられているが、家の格は上であるエリオなんかと比べると、サラサの方が明らかに苦労していた。


 しかしながら、不貞腐れていたエリオとは違い、サラサはどこ吹く風と言った感じで対応していた。


 幼い頃からこうなったという訳ではなかった。


 幼い頃に母と死別したサラサは、オーマの影響が絶大である。


 まあ、ぶっちゃけてしまえば、ファザコンという事なのである。


 そのオーマがサラサの才能を高く評価しており、周りの一族の者達も同じだった。


 そうなると、外部の人間の評価など、恐るるに足らずというか、どうでもいい事になっていた。


 サラサ自身、実力を一歩一歩着実に付けてきた自負があり、それを正当に評価してくれる存在は有り難かった。


 こうして、サラサは、万事、順調にとは言えないかも知れないが、すくすくと育っていった。


 サラサがすくすくと育ってお陰で、ルディラン家も安泰と言いたいところだが、そうも言えなかった。


 ルディラン侯爵家の惣領はオーマであり、嫡子はサラサである。


 これは何度も書いている事だが、それ以外に親族がいなかった。


 これは、家の存続そのものが危うくなる事態であり、艦隊を率いる為の人材が不足しているのも問題である。


 まあ、艦隊の方は、艦の絶対数が多くはないが、取りあえずは間に合っている状態である。


 これは、幸いというか、不幸というか、何と言っていいか分からない状況である。


 元々、1個艦隊を編成できるかどうかの所から、歴代惣領の努力で、3代目のオーマの時にようやく2個艦隊まで編制できるところまで来た。


 その意味では、順調に力を付けてはいる。


 だが、周辺国を見ると、まだまだ戦力不足なのであることは否めなかった。


 と言う事なので、エリオはかなり恵まれた環境に身を置いている事になる。


 そんな恵まれた環境にいたエリオを初めて見た時、サラサの心中は穏やかなままではいられなかったのは無理もなかっただろう。


 たぶん、他人に対して、これ程までの苛立ちを覚えたのは、初めてだった。


 そして、その好ましいとは思えない人物に、その後、その実力をこれ見よがしに見せ付けられていた。


 あ、まあ、これは多少、いや、随分とサラサの被害妄想が入っている考えかも知れない。


 それはともかくとして、これにより、更にエリオに対する印象が悪くなったのは言うまでもなかった。


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