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クライセン艦隊とルディラン艦隊 第1巻  作者: 妄子《もうす》
10.初航海

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117/143

その7

 サリオ艦隊は作戦海域に、急進すると、エリオの指示通りに、そのまま各艦が所定の位置に散った。


 ドーン!!


 旗艦を海賊の親玉船に近付けると、いきなり砲撃した。


 そして、マストの一本を吹き飛ばしていた。


「いっ?!」

 エリオは予定にはなかった事に驚いた。


「まあ、まずは話を聞いて貰わないとな」

 サリオは愉快そうにそう言った。


 無論、エリオが驚いていたからだった。


 とは言え、この行為はかなりの効果があった。


 略奪に夢中で喧噪感に包まれた空気が一気に静寂に変わったからだ。


 旗艦はいつの間にか、親玉船に横付けされていた。


 そして、他の艦も所定の位置に着いていた。


(近いんですけど……)

 エリオはそう思いながら、目をパチクリされていた。


 旗艦以外はエリオの指示通りの位置だった。


 そして、その旗艦はすぐにでも白兵戦が出来るような格好になっていた。


 1対1で、兵数は変わらないかも知れないが、こちらが圧倒できるという事なのだろう。


 何よりも、こちらの戦い方の方が好きなのだろう。


「閣下、伝聞しましたが、返答がありません」

 マリオットがそう報告してきた。


 エリオはその瞬間、嫌な予感がした。


「よし、野郎共、乗り移れ!!」

 サリオがそう命令した。


 すると、待ってましたとばかりに、鉤爪が先端に結ばれた縄ばしごが次々と投げ込まれた。


 そして、即席の縄ばしごが出来ると、水兵達が嬉々とした表情を浮かべて、親玉船に乗り移っていった。


「駄目ですな」

「ダメですよ」

 オーイットとマリオットが同時にそう言うと、サリオの両肩をそれぞれの手ががっしりと掴んでいた。


「……」

 サリオはトホホホな表情で2人を振り返った。


 だが、2人は首を横に振り、それぞれの手の握力が増すだけだった。


(この人は……)

 エリオは父親の情けない姿を見て呆れていた。


 そして、その一方、乗り込んでいく水兵達を見ていた。


(これでは、どちらが海賊なんだか……。

 でも、まあ、俺達の遠い先祖は元々海賊みたいなものだと聞いているから先祖返りしていると言った所か……)

 エリオはただ呆然と見ているだけではなく、余計な事を考えていた。


「おい、待った、待った」

 エリオはシャルスの右手を慌てて掴んだ。


 シャルスは、初航海の時からエリオの傍らにいた。


 だが、それまで空気のように静かにしていた。


 そのシャルスが、いきなり走り出そうとしていた。


「エリオ様、我々も行った方がいいのでは?」

 シャルスはエリオの方を振り向いて、真顔でそう言った。


「いや、いいんだよ。

 俺達が行っても役に立たないどころか、邪魔になるだけだから」

 エリオは呆れながら、シャルスにそう言った。


 この頃のシャルスは興味があると、後先考えずに、行動してしまう。


 いつもは他愛のない事なので、放っておくが、今度ばかりはそれは出来なかった。


「そうなんですか!」

 シャルスはそう言うと、素直に、水兵達に付いて行こうとするのを止めた。


 エリオはやれやれといった感じで、視線をふと父親の方に向けた。


 親子は目がバッチリと合ってしまった。


 サリオは自分がシャルスと同じ行為に及んでいた事に気が付き、バツの悪そうな表情で、視線を逸らした。


「閣下、敵の親玉から条件を受諾するとの事です」

 色々な事があったが、マリオットは極めて冷静に上がってきた報告を告げた。


 おっほん!!


 間が持たなかったのか、空気に耐えられなかったのか、サリオは咳払いをして、雰囲気を変えようとした。


「な、上手く行ったろ?」

 サリオは何故か力んでいた。


 まあ、子供に失態を見せた後の父親なんて、こんなものだろう。


「はぁ……」

 エリオは何と言っていいか分からずに、気を遣う他なかった。


「砲で脅すより、拘束して脅す方がよっぽど効果的だ」

 サリオは自慢気にそう言った。


 子供相手に言ってはいけないような気がするし、道徳的にも良くないような気がする。


 それに、その前に砲撃した事は何と言い訳をするのだろうか?


 エリオの想定とは違うが、砲撃により、敵の動きを止めたのは確かなのだが……。


「そのようですね」

 エリオはエリオでそんな事を気にせずに、父親に同意した。


 と同時に、勉強になると感心していたので、どうしようもなかった。


 でも、まあ、事実関係からすると、その解釈は正しいとも言える。


 エリオの同意を得た事で、サリオの方は少し得意気になった。


 と同時に、グタグタ感が一気に辻褄が合ったような雰囲気へと変わった。


「よし、全艦、総員、現状維持。

 敵が約束通り、引くかを監視せよ」

 サリオはその得意気な気分のまま、そう命令を下した。


「了解しました」

 マリオットは呆れながらも敬礼して、総司令官の意を伝える為に駆け出した。


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