その2
エリオはマナトに案内されて、倉庫へとやってきた。
そして、物資で満載の倉庫を見せられた。
エリオはただ唖然としていた。
「あれ?エリオ様、公爵閣下から何もお聞きになっていないのですか?」
唖然としているマナトは戸惑いながら聞いてきた。
「『何を』ですか?」
エリオはただ間抜けにそう聞き返す他なかった。
……。
マナトは更に戸惑い、黙ってしまったので、2人の間に沈黙が訪れてしまった。
「存外、公爵閣下もお人が悪いのですね」
マナトは方はしばらくしてから事を理解したようにそう言った。
だが、エリオの方は当然、理解が及んでいなかった。
「エリオ様が、動いてくれたお陰で、このように物資を調達できました」
マナトは物資に向けて両手を広げながら、更に話を続けた。
「えっ?どういう事?」
エリオはハッとした表情に変わったが、まだ状況が飲み込めていなかった。
「ですから、エリオ様のお陰で……」
とマナトは繰り返そうとしたが、
「あ、いや、そうじゃなくて」
とエリオは言葉を遮った。
そして、エリオは腕組みをして、現状を把握しようと努めた。
(あれ?何で、ここに物質が集積されているの?
そもそも、王都に駐留しているはずのリンク様が何でここにいるんだ?
そう言えば、王都出港の際、艦の絶対数が異様に少なかったような気がする)
エリオはそう思考しながらようやく自分を取り戻せたようだった。
どうやらエリオの知らない内に色々あったらしいという認識が形成されつつあった。
「ええっと、何で、ここに物資を集めたのですか?」
エリオは一つ一つ疑問を解く事とした。
「それはですね、総参謀長閣下のご発案です。
他の商人に邪魔されないように、秘に物資を集める為です。
お陰で、今までの8割の値段で購入できました」
マナトは得意気にそう説明した。
(王都の商会共とは、今までの価格で交渉して、買い占めさせないようにしながら、裏ではクラセックから購入したという所か……)
エリオは皆まで説明されずとも、その裏側を読み取っていた。
(しかし、8割とはまだ割高だな……)
エリオはその次に悪巧みを考えようとしたが、取りあえずは止めた。
2割引は安そうに見えたが、元々高すぎたので、エリオはそう感じていた。
「リンク様がここにいるのは、物資をここに集めたのだから、艦隊の主力をここに置いてしまえと言う事なのですか?」
エリオは次の質問をした。
「流石ですね、エリオ様、ご明察の通りです」
マナトはいつものエリオに戻ってきたなと感じていた。
(まあ、元々このマライカンに艦隊の主力を置いていたから、昔に戻ったという事か……。
そちらの方が、艦隊の出撃しやすいしな)
エリオは一気に改革が進んだ事に驚きつつも納得していた。
と同時に変人10歳児の復活でもあった。
そして、今まで不貞腐れていた自分がとても損した気分になっていた。




