その11
ばしゃばしゃばっしゃーん!!!
ぐらぐら、ぎぃぎぃ……。
「至近弾、……12」
マリデンは伯爵にそう報告した。
被害こそなかったものの、その威力は十分なものだった。
統制が取れている分、相手に与える脅威は十分でもあった。
初弾を受けた結果、曲がりなりにもルドリフ艦隊へと向かっていたホルディム艦隊は混乱が生じていた。
艦隊の陣形が乱れ、前後の艦同士がぶつかりそうになっていた。
要するに、大混乱に一気に突き落とされてしまった。
その為、足を止められた格好になってしまった。
「ひ、怯むな、反撃しろ!
数の力で圧倒せよ!」
ホルディム伯は裏返った声で怒鳴り上げた。
さっきまで余裕だった分が反転して、おっかなびっくりしている感じになった。
弱い者いじめが好きな人間は、結構反撃に弱いものである。
ドン、ドン……。
ただ、ホルディム伯に言われるまでもなく、各艦は反撃の為、砲撃を続けていた。
しかし、ルドリフ艦隊に比べると、砲撃に威力がないように感じられる。
統制がいまいち取れてなく、散発的なものだからだった。
指揮官の力量差だった。
混乱を収める術を与えずに、伯が砲撃を続けさせた為、混乱はどんどん広がっていくような感じだった。
そんな中、混乱を収拾した5隻の艦が再びルドリフ艦隊へ向けて突撃し始めていた。