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義妹と旅する車中泊生活  作者: 桜井正宗
長野観光 三日目

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長野観光、最終日

 いつもいつも邪魔しやがって。

 俺は怒りのまま電話に出た。


「なんだよ、親父。今、いいところなんだ邪魔するな」

「なんだか胸騒ぎがしてな。回、まさかとは思うが……歩花を襲っていないだろうな。血の繋がっていない可愛い妹だからといって手を出してはいかんぞ」


「んな!?」


「……その様子だと襲いかけていたようだな。いいか、歩花はまだ高校生なんだ。もう少し待て」


 無駄に勘が鋭いな、親父のヤツ。

 ここは真面目にぶつかっても口論になるだけ。

 俺は自分の気持ちを打ち明けた。


「親父、俺と歩花の気持ちは同じだ。責任は取る」


「分かった……」


「分かってくれるのか、親父」


「やっぱり許さん!! あんなピチピチの巨乳女子高生と一緒とか羨ましい――うわ、母さんなにを!! アイアンクローはやめ……うわ、うわ、うわああああああああああああああ……!!!」



『プツッ……プープー』



 とまあ、急に電話が切れた。

 恐らく母さんが親父に制裁加えたのだろう。ナイスだ、母さん。


 これでアホ電話は来ないだろう。

 俺はスマホの電源を落とした。



「歩花、親父からだった……って寝てるし」



 歩花はもうスヤスヤと眠っていた。

 可愛らしい寝顔を無防備に晒して。

 ああ……天使だ。ここに天使がいる。



 * * *



 変な夢を見た。

 目的もなく街を彷徨(さまよう)う夢。

 今の旅を象徴するような不思議な経験だった。


 最近はそういうことが多い。

 疲れているせいかな。


 夢を見るメカニズムはまだ解明されていないという。なぜ人間は夢を見るのだろうな。頼むから悪夢は止めて欲しいけど……いや、あれは悪夢だったのか?


 あの果てには、歩花がいたような――。



 ……うぅ、寒っ。



 寒気で目覚めた。

 山奥の朝は気温があまり上がらず、冬前のような気温だった。車内は換気扇もついているし、ポップアップルーフのメッシュを解放しているから新鮮な空気が循環している。


 外の冷気も流れてきたのだろうな。

 エアコン不要で一晩を過ごせるとは予想外だった。


 半身を起こすと歩花の姿がなかった。



「……え。歩花? いない。どこへ行った……」



 まさか一人でどこかへ……?

 昨晩上手くいかなかったから怒っちゃったとか。

 いや、とにかく探し出さなきゃ。


 かなり心配になって扉を開けようとしたら、歩花が戻って来た。


「あ、起きてたんだ。おはよう、お兄ちゃん」

「歩花……どこ行ってたんだ。心配したぞ」

「あはは、ごめんね。歩花、おトイレ行っていたんだ。だって、お兄ちゃん寝てたもん」

「な、なんだー…」


 ビックリした。俺に愛想を尽かしたのかと。完全に勘違いだったな。


「歩花がどこか行っちゃったと思った?」

「……そ、そうかもな」

「どこも行かないよ~。ほらほら、車内でゆっくりしよ」


 一瞬冷や汗を掻いたけど安堵した。

 本当にびっくりした。


 気持ちを落ち着かせるため、電気ケトルを使ってお湯を沸かせた。

 スティック包装の緑茶を開封し、粉をカップへ入れた。これは水でもお湯でもよく溶けるようになっていて味もしっかりしている。


 朝は『お茶』とお土産で買った『おやき』にしよう。


 おやきは湯煎で温めた。



「はい、お茶とおやき」

「こんな一瞬で出来ちゃうんだね。電気ケトルって電力どれくらいなの?」

「お湯を沸かすケトル『ワクヨくん』の消費電力は110~120Wらしい。DC12Vで繋げられるから、車のシガーソケットも使える。今回は、ポータブル電源を使ったけどね」


 ちなみに、沸騰するのに20分ちょい掛かった。小型で持ち運びしやすいけど沸くのに時間が掛かるのが難点だな。それでも少ない消費電力でお湯を沸かせるのは魅力だ。



「車中泊向けの道具って便利なの多いよね」

「ああ、家で使っても便利だよ。俺はよく家で使っていたけどね」

「お兄ちゃん、よくいろんなグッズを使っていたよね。歩花も影響されて折り畳みのフォークとかスプーンは常備してる」


「便利だよな。ティッシュで拭いて何度も使えるし」


 おやきをモグモグ食べていく。

 野沢菜たっぷりで美味すぎだろ、これ……!



 朝食を食べ終わると、周辺に車中泊してる車が多くいたことに気づく。あれから、随分増えていたんだな。


 ポップアップルーフを戻したり、片付けを進めているとラインメッセージが入った。



「ん、紺か」



 紺:おはようございます! こちら快適なキャンプを送れました!

 回:おはよ~。テントは静かに寝れたかい?

 紺:はい。虫が少し厄介でしたが蚊に刺された程度です

 回:それなら良かった

 紺:回お兄さんの方は、キャンピングカーの車中泊いかがですか? 

 回:こっちも最高だったよ。快眠さ

 紺:マジっすか! そのうち、あたしもお邪魔してもいいです!?

 回:いいよ。三人までなら寝れると思う

 紺:キャンピングカーってそんなに寝れるんですね!

 回:まあ、スペースに余裕はあるよ。で、今日はどうする?

 紺:そちらへ向かいますよ。なので決めておいてください

 回:了解。行先はこっちで決めておく



 よし、これで紺との連絡は完了。

 あとは安曇野だが……。

 電話でもした方がいいかな。


 あれから、ちょっと気まずいけど……そうも言っていられない。


 俺は安曇野にライン電話した。


 ――しばらくすると。


『お、おはよう。回くん』

「よう、安曇野。おはよう……」

『うん。今日もどこかへ行くの?』


「まだ決まってない。ぼちぼち長野は離れようと思っているんだけどね。歩花の見たがっているイルミネーションは今夜に回るとして……明日には別の県へ回ろうと思ってる。そうしないと夏休みが終わっちゃうからね」


『だよね~…。昨日突然でごめんね。もっと話したいこともあったのに』

「そうだったのか。とりあえず今日はまだ目的地が決まっていないんだ。安曇野、どこか教えてくれない?」


『うん、分かった。どうしても回くんに見て欲しい観光地があるから……』

「それはどこなんだ?」


 そう聞くと、安曇野は深呼吸していた。……どうしたんだ。なんか緊張しているような。まるで告白みたいだぞ。


()(ざき)()。湖で集合しましょう』

「木崎湖? 聞いたことないけど、安曇野がそう言うのなら期待しておく」

『うん、素敵な場所だよ。それと……大切なお話しもあるから』


 そう言って安曇野は電話を切った。

 ……なんか変だったな。


 けど、木崎湖か。

 詳細はググらないではおくけど、片道で四十分らしい。中々距離があるな。とりあえず、紺の到着を待つか。

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