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義妹と旅する車中泊生活  作者: 桜井正宗
長野観光 二日目

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大王わさび農場

 先頭を走るエックストレイル。

 その背後に俺のキャンピングカー『インディ272』――真後ろには紺の乗るハンタークロスカブ。


 見事に車の流れに乗り、目的地を目指していた。



「お兄ちゃん、ナビのセット一応しておいたよ~」

「おう、ありがとう歩花」



 ナビによれば、車で片道二十五分前後らしい。距離にしてニ十キロ先のようだ。思ったよりは近いな。



「今日は気持ちのいい天気でよかったね。青空だよ」

「あぁ、台風が過ぎ去ってくれて良かった。直撃だったら楽しめなかったしな」

「うん。外は暑いけど快適な旅になりそうだね」


 後ろの紺が少し心配だ。

 けど、今日も空調服をばっちり着こなしているし、涼しい顔をしている。ルームミラーに紺の表情がばっちり映っているからな。あの分だとそこまで暑くはないようだ。


 車はどんどん先へ進む。


 まずは松本城付近を目指す。

 国道19号を経由。

 あとはずっと直進を続けていくようだ。


 田沢という交差点を左へ。

 安曇野インター東の交差点を右折していく。そのまま県道310号に入り、走行を続けていると地図に『大王わさび農場』が現れた。


 あと少しだ。


 休憩なしの走りっぱなしだったけど、前を走る安曇野も、俺も平気だけど紺は大丈夫かな。今は結構山奥の方だし、標高も高いからそれほど暑くはないだろうけど。


 ついに広い駐車場に到着。

 観光バスとかバイクとか多く滞在しているな。どうやら観光名所のようだ。


 お山も近くて迫力満点。


「ねえねえ、お兄ちゃん。ここ景色すごくいいよ! 別世界みたい」

「いよいよ異世界に転生してしまったな」


 それほどの圧巻な風景だった。


 車を駐車場へ停めた。

 まずは出る準備をして、最低限の荷物を持っていく。


「歩花、準備はいいか」

「いいよ~。いつでも出られるから」


 今日の歩花は花柄のワンピース。清楚だけどなかなか大人っぽくていい。日焼け・熱中症対策の日傘もばっちり。歩花は肌が弱いから仕方ないのだ。



 キャンピングカーのカギを閉め、エックストレイルから降りてくる安曇野と合流。その後、駐輪場から走ってくる紺とも合流を果たした。



「よし、みんな集合だな。特に紺はよく走った。頑張ったな」


「ありがとうございます、回お兄さん。いやぁ、思ったより涼しかったですし、楽しかったですよ。景色が最高すぎです!! アルプスの峰々とか雲とか目の前にあるかのような絶景ですもん。こんなの興奮しかないです」


 紺は思ったより元気でテンションが高かった。というか、紺は謎のチューブから“ごくごく”と水らしき液体を飲んでいた。またガジェットかな。



「紺、なんだそれ」

「これ、登山とかでよく使う『ハイドレーション』ですよ! 回お兄さん、知らないです?」


「はじめて知ったよ。それで水が飲めるのか」



「はい、約90センチのチューブがボトルに繋がっているんです。この飲み口でちゅーちゅーってすると手を使わず水が飲めるんで楽なんですよ~。バイク乗りには割と神器ですよ!」



 さすが紺だ。なんでも便利なものを備えているなぁ。



「さて、回くん。ここが『大王わさび農場』だよ!」



 と、安曇野は手を広げてドヤ顔。

 う~ん、とはいえ正面からは特に観光地には見えない。公園っぽい感じはするけど。



「ここってお金は取られるの?」

「んや、ここは入場無料(・・・・)だよ、回くん。その名の通り、わさび農場が見られる。飲食店が三店舗あって、お土産も買えるよ~。あとおススメは『わさびソフトクリーム』なんだ」



 安曇野がそう説明すると歩花が驚いた。



「え、わさびソフトクリームがあるんですか? か、辛そう……」

「歩花ちゃん、わさびは苦手?」

「はい、あの鼻がツ~ンとするのが苦手です」

「あはは。でも、ソフトクリームは美味しいから安心して!」

「そうなんですか? う~ん、食べられるかなぁ」


 不安気な歩花に対し、紺は興味津々に「へえ、わさびソフトクリーム。買ってみよ」とつぶやく。俺も興味はあった。


 いったい、どんな味がするんだ?


 気になりながらも、入口を目指してを歩いていく。広い通路だな。きちんと舗装されているし、かなり整備が行き届いている。


 記念館が見えてきて、その横に【大王わさび農場】という看板がデカデカとあった。



 ここが正面か。

 この先にわさび田があるらしい。楽しみだなぁとワクワクしていると歩花が「お兄ちゃん、記念撮影しよ!」と提案。紺も「歩花ちゃんに賛成です! 集合写真とかどうですか!?」と声を上げた。



「安曇野、写真撮って貰っていいか」

「いいよ。せっかく皆で来た記念だもんね」

「ああ、思い出に」



 まずは俺、歩花、紺の写真をパシャッとスマホで一枚。その後、俺と安曇野が交代して撮影した。この先もバンバン撮っていくかな。



 写真撮影を終え、さっそく中へ入っていく。徒歩一分も掛からず、直ぐに緑が広がった。おぉ、川の中にわさび畑がある。これが“わさび農場”か!



「わぁ、広い! なんか独特なニオイもする。ねえねえ、お兄ちゃん。わさび畑があんなに奥まで……どこまで続いているのかなぁ」

「海のように広くて分からないな」


 エメラルドグリーンの緑一色。

 川の中に“わさび”があった。


 驚きの風景に、初見の俺も歩花も――そして、紺も息も足も止めた。こりゃ凄いな。あまりに広く、これ一日で回り切れるのかと思えるほど距離もあった。


 これが入場無料……なんてお得な観光スポットなんだ。


 緑の風景を楽しみながら、先を進むと飲食店やお土産屋を発見。そこには観光客も多くいた。



「安曇野、ここらを少し見ていくか」

「オーケー。私も久しぶりだし、皆と一緒だから楽しいわぁ」

「俺もだよ。わさびを(あなど)っていたよ。てか、わさびってこんな風に作るんだな。知らなかったよ」

「昔からこういう感じだったらしいよ。歴史を感じるよね」

「だな。この観光地に来なかったら一生知ることのなかった知識だよ。連れて来てくれてありがとう、安曇野」


「感謝にはまだ早いよ~。まだまだ回る箇所あるしさ」

「そうだな。案内よろしく」

「うん、任せてよ」



 少し周囲を見て回った後、先を進んで行った。

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