勝負下着の妹が密着してくる
違和感の正体は、それか。
狐塚があの『Snow Park』のご令嬢だとはな。そんな片鱗どこにも――いや、あったな。
彼女は、二輪免許を取ってバイクを買うほど。何か計画はしていたに違いない。
「驚いたな。あのSnow Parkかよ。今日、ちょうど利用したぞ」
「そうなんですか! 奇遇ですね。ご利用ありがとうございます」
ぺこりと頭を下げる狐塚。
なるほど、大手企業の娘となれば金持ち。免許もバイクも買って貰えるわけだ。
「という事は、アウトドアの趣味が?」
「はい、父の影響でキャンプとか大好きなんです。特にバイクであっちこっち回るのが夢だったですよ。本当はホンタのホーネッドに乗りたかったんですが……反対されました」
そりゃそうだな、女子高生がホーネッドに乗る姿とかカッコイイいいけど、父親としては、せめて高速道路には乗らないで欲しいという思いが汲み取れる。多分、県外には出させたくなかったんだろう。しかし、125ccなら法定速度60km/h出せるし、余裕で旅が出来る。
「そりゃお気の毒に。それで狐塚ちゃん、本当に俺たちに着いてくるつもり?」
「はい。あたしは本気ですよ。高速道路を利用されるとしても、下道で頑張って追い付きます」
「凄い覚悟だな。でも、大変だと思うよ」
「大丈夫です。全部は無理だとしても、二、三県くらいなら……」
「そこまで言うなら止めはしないけど……」
精々、隣県かその次が関の山かな。
だとしても、夏休みの思い出にはなるか。後は歩花次第だけど、本人はまだ気絶中。これは困ったな。
「あの、あたしも聞いていいですか?」
「なんだい」
「回お兄さんと歩花ちゃんって兄妹ですよね」
「ああ。間違いなく兄妹だ」
「……じゃあ、お兄さんを襲っても問題ないわけですよね」
俺に覆いかぶさろうとする狐塚。――って、うわッ! なんか知らないけど、俺、女子高生から襲われてるぅ!?
「ちょ、狐塚ちゃん……何をするんだ」
「何って、お兄さんを襲っているんです」
「んな、直接的な! ていうか、狐塚ちゃんってヘンタイさんなの!?」
「そうなんです。友達のお兄さんとか燃えるシチュじゃないですか。歩花ちゃんから、大切なお兄さんを奪う……あぁっ、なんて背徳感」
ヘ、ヘンタイだー!!
「頼むから、そんな歩花が悲しむ真似をしないでくれ」
「恋にそんなの関係ありません。あたしだってお兄さんを狙っているんですよ。乙女心を分かってください」
いや、初めて知ったし。ていうか、狐塚ちゃんって俺に好意があったのか。知らなかったぞ……いつから?
「せめて、もうちょっとお互いを知ってからで……」
「女子高生と一夜を過ごせるチャンスですよ?」
なぜか小声で囁く狐塚ちゃん。
まずい、この子……結構なヘンタイだ。
「いやまぁ……歩花と毎日暮らしてるし」
「うぅ。なかなかガードが堅いですね、お兄さん。普通、逆なんですよ? でも、なんかそう頑なだと余計に燃えるっていうか、お兄さんを攻略したくなってきました」
うわぁ、目が本気だ。しかも、どんどん近づいてくるし……良い匂いもするし、歩花とは別の可愛さがあった。なんだろう、妹っていうか……愛玩動物のような可愛さがある。表情も豊かでコロコロ変わるし、一緒にいて飽きないな。
けれど、これ以上は危険だ。
俺は話題を逸らす作戦に出た。
「あぁ、そうだ! 狐塚ちゃん、部屋が欲しいだろ。空き部屋あるから、そこに案内するよ。一階に和室があるから、そこを使ってくれ」
「む。お兄さん、回避の仕方が上手いですね」
なんとかリビングから連れ出し、和室へ案内した。布団も歩花のお古があって良かった。それを使って貰った。
「すまないが、俺は歩花の面倒を見てくる。お風呂とか使っていいから」
「そうですね。もう時間も遅しですし、そうさせて頂きます」
なんとか隔離に成功。
俺は高鳴る心臓を抑えながら、踵を返した。……狐塚がこんな大胆な子だったとは。歩花といい、今時の女子高生は積極的なのか?
溶岩のような熱を帯びつつ、俺は歩花の様子を見にリビングへ……ん? あれ、なんかゴソゴソしているような音がする。
こっそり覗くと歩花が意識を取り戻していた。けど……なに、やっているんだ?
両手でシャツを持ち、切なそうに匂いを嗅いでいるような……って、俺のシャツだ。歩花のヤツ、起きて直ぐに俺のシャツの匂いを……うわ、なんかいけない場面に出くわした。
けど……嬉しい。
歩花が俺の匂いを……あれ、なんだか禍々しいオーラが滲み出てないか? うわ、なんかヤバイぞ。
『……お兄ちゃんから、紺ちゃんの匂いがする……許せない。殺すしか……ないかも』
あああああああああああ……そっちかあああ!! てっきり、俺の匂いに興奮しているのかと思ったのに……病んでる方でしたか。
動向を見守っていると、歩花は――
『でも……お兄ちゃんの匂い、いい。えへへ』
ふぅ、セーフだな。
汗を拭って安堵していると、俺は肘を壁にぶつけてしまった。ドンという音が響き、歩花がビクッと驚いてこちらの気配に気づく。
「……だれ?」
「……す、すまん。歩花」
「お、お兄ちゃん……見てたの……?」
ぶわっと涙目になる歩花は、口を震わせていた。しかし、手元には俺のシャツ。隠す気なし……だと。それとも動揺しすぎて、それどころじゃないのか。
「歩花こそ、俺のシャツで何をしていた」
「うぅ……」
「まさか、匂いを……」
「ぅぅぅ……」
「そんな事しなくても、いくらでも嗅がせてやるって」
俺は、歩花に近づき――お姫様抱っこした。
「お、お兄ちゃん!?」
「そろそろ寝よう。狐塚ちゃんは、一階の和室に誘導しておいた。もう寝ているだろうし、俺達も寝よう」
「う、うん。一緒に?」
「うん、一緒に。今日は車中泊の練習も兼ねて、同じベッドで寝る」
そうだ、練習しておかないとな。少しずつ慣れておかないと毎日がドキドキしすぎて心臓が破裂してしまうからな。
「お兄ちゃんと寝れるとか、今日は熟睡できそう」
「そりゃ良かった。――それにしても、歩花は軽いな。体重、何キロだっけ」
「お、教えるわけないじゃん! あ、でもバストサイズはFカップだよっ」
F!? そりゃデカイわけだ。
爆乳じゃないか……いや、事実そうなんだけど。美乳で巨乳とか、最強ステータスすぎるな。こんな女の子の兄が羨ましいね。――って、冷静になってみれば俺か。
自室に入り、ベッドへ歩花を寝かせ……そのまま潜る。あとは瞼を閉じ、夢の世界に身を委ねる。それだけかと思っていたけど、歩花が布団の中でゴソゴソと動いていた。
「どうした」
「服が邪魔だから脱いだの。今、下着~♪」
「ま、まじ……」
「うん。だって、いつも下着で寝てるもん。たまに裸の時もあるよ」
「なッ」
「ちなみに、今はすっごくえっちな勝負下着をつけてるよ♡」
そ、そうだったのか。じゃあ、これから車中泊する時も……? うわ、想像したら興奮して寝れなくなってきた。歩花はその状態で俺に密着してきた。
部屋の明かりを消して布団の中とはいえ……肌の感触がっ!
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